The MODEL型営業におけるフィールドセールスとは?これからの営業職についてもひも解きます!

営業やマーケティングの仕事をしている方には、The MODELという言葉をご存知の方も多いのではないでしょうか。近年、営業部門はCRM(顧客関係管理)、MA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)といったITツールの普及、そしてコロナ禍による営業活動のオンライン化など、さまざまな変化が起こっています。そうした変化を背景に、多くの営業部門は従来の営業体制を見直し、より効率的かつ生産性の高い営業活動をするために、The MODELを導入しています。本稿ではThe MODEL型の営業組織におけるフィールドセールスの仕事についてひも解いていきます。

The MODEL型の営業組織とは

The MODELとはSalesforce社で活用されてきたBtoB営業プロセスモデルで、日本では翔泳社から2019年に発売された『THE MODEL(ザ・モデル)』(著・福田康隆)で認知が広がりました。まずはThe MODELの概要や従来の営業プロセスとの違いなど、基本的な内容を解説します。

The MODELとは、営業プロセスを4部門に細分化して分業する営業プロセスモデルです。各プロセスを見ていきます。

・マーケティング
マーケティングは、The MODELの最初に位置する部門で、営業活動の起点となります。主な役割はリードジェネレーション(見込み顧客の獲得)です。Web広告やSNS、メールマガジン、展示会やイベントなどで多くの人と接点を持ち、その中から自社のリードを獲得します。

・インサイドセールス
マーケティングの次はインサイドセールスです。インサイドセールスは電話やメールなどを活用して非対面で営業活動を進める部門です。受注確度の高いリードをフィールドセールスに引き継ぎ商談へと移行し、受注確度の低いリードに対してはメルマガやメールの送信などを通して接触することでリードを顧客に育てます。

・フィールドセールス
フィールドセールスは、顧客と直接対峙することでニーズを深く理解し、それに応じた商品やサービスを提案します。詳しくは次項にて紹介します。

・カスタマーサクセス
カスタマーサクセスは主にフィールドセールスの後段階である契約後の業務を担当します。
役割は顧客の課題を解決して満足度を向上させることです。解約率やアップセル・クロスセルの金額、ログインユーザー数など、成果指標は企業によって異なるでしょう。各部門の情報を可視化して連携することで、営業効率の最適化や生産性の向上を目的とします。

なぜ従来の営業プロセスから、新たな営業プロセスモデルのThe MODELへ移行する企業が増えているのでしょうか。その要因として、市場の変化が挙げられます。現在多くの市場では、サブスクリプション型のサービスを提供するSaaSビジネスが増えています。SaaSビジネスでは、いかに顧客に継続して利用してもらうかが重要になるため、顧客との継続的な関係維持が求められます。従来の営業プロセスでは全ての顧客をフォローしきれないため、The MODELのような分業体制を取ることで攻めと守りの両方の側面を強化する仕組みが構築されました。また、デジタル化が進み、営業活動に活用できるツールが増えていることも、The MODELの普及が進む要因の一つとなっています。

従来の営業プロセスでは、営業担当者がMicrosoft ExcelやGoogle スプレットシートなどで属人的に管理していました。今はMAツールやSFA、CRMなどのツール同士を連携させることでお互いの業務内容を可視化できるため、分業してもスムーズに情報連携ができます。

フィールドセールスとは

ここからはThe MODELにおけるフィールドセールスについて解説します。

フィールドセールスとは、マーケティングやインサイドセールスが獲得してきた顧客に対して、契約、受注をするための職種で、顧客と直接対話して営業活動をする役割を指します。主な業務を下記に挙げていきます。
・見込み顧客のリサーチと分析
・提案書作成と計画の立案
・顧客へのヒアリングから提案
・クロージングと商談後のフォローアップ
・受注計上業務
・カスタマーサクセスへの引き継ぎ

以前、営業は新規顧客の開拓からニーズのヒアリング、商談、そして受注に至るまで、全行程を1人で担当するのが一般的でしたが、The MODELの営業プロセスを導入することで、営業工程を分業化するようになりました。こういった流れから、以前なら『外勤営業』と呼ばれていたものが『フィールドセールス』という呼び名に変化しました。

フィールドセールスが現代のビジネス環境で重要視される背景には、幾つかの要因があります。

一つ目は顧客とのコミュニケーションの大切さです。インサイドセールスやオンライン営業が急速に普及していますが、対面でのコミュニケーションが持つ価値は失われていません。特に日本では、対面での信頼関係の構築が商習慣として根強く残っており、ビジネスの成功に欠かせない要素です。フィールドセールスは、顧客と直接会うことで相手のニーズを深く理解し、信頼を築くことができます。デジタル化が進む中でも、人と人との直接的なつながりの価値が再認識されているのです。

二つ目の要因として、顧客ごとにパーソナライズされた提案や課題解決が求められていることが挙げられます。市場の成熟によってプロダクトの差別化が難しくなっています。この結果、顧客が求めるのは同じような支援内容やサービスではなく、個別の課題に対応したパーソナライズされた提案です。特に複雑なニーズを持つ顧客に対しては、フィールドセールスがその真価を発揮します。直接顧客と対話することで、表面的な要求だけでなく潜在的な課題を深く理解し、その場で具体的な解決策を提示できるでしょう。

フィールドセールスが重視する点としてインサイドセールスとの連携が挙げられます。インサイドセールスがリードの興味関心度を高め、育成している間の見込み顧客とのやりとりはMAやCRMなどのデジタルツールに蓄積されます。フィールドセールスはこれらの情報を的確に読み取り商談に生かします。この情報の読み取り力によって、サービスの提案内容が変わり、成約につながるか否かが変わります。つまりインサイドセールスを経由することで、商談実施前にはある程度の懸念点が払拭されることになります。

今と昔のフィールドセールスの違い

これまでの国内の主な営業スタイルは、1人の営業担当者がインサイドセールスとフィールドセールスの役割を全て担っていました。例えば以下のような流れです。
・展示会やセミナーでの名刺交換
・営業リストの作成
・電話やメールによるアプローチ
・アポイント獲得
・商談
・受注、クロージング
・アフターフォロー

上記の一連の営業プロセスを1人で実施することは担当者への負担が大きすぎると問題になっていました。結果、忙しくなればなるほど一つのアクションに対する精度は低くなってしまう上に、1日に何件もアポイント獲得のために飛び込み営業をし、1件もアポイントを取れないなんてこともしばしば起こっていました。そのため、『営業はきつい』『営業はやりたくない』というイメージをお持ちの方も多かったのではないでしょうか。

また、アポイント獲得などの新規獲得に注力しようとすると既存顧客のフォローがおろそかになったり、既存顧客を優先的に対応して新規顧客が増えなかったりするなど、企業の売上に影響が出ることがありました。

一方、The MODEL型の営業組織の場合、アポイント獲得はインサイドセールス、アフターフォローはカスタマーサクセスと営業プロセスを分業化します。そのため、各担当者は自分の業務に専念でき、生産性の向上が期待できるでしょう。

マーケティングが見込み顧客を選定し、インサイドセールスが見込み顧客の中からヒアリングをしながらアポイントを取り、確度の高い見込み顧客をフィールドセールスにトスアップするため、以前の営業のように1人で全てのプロセスを担うことはありません。

また、昔の営業は一度商品を売って終了となる『売り切り』の傾向が強く、契約が締結した後は、フォローなどをせず放置状態になるケースがほとんどでした。一方現在は、長期にわたって継続的にサービスを利用してもらうことによる『生涯顧客価値』を重視し、営業スタイルは変化しています。特に近年急速に増加しているSaaSビジネスは、この生涯顧客価値を重視しています。

このThe MODEL型の営業組織を導入するには、業種や商材、会社規模や人材比率によって、比重を高める業務は変化し、担うべき役割に差が出ます。トライアンドエラーを繰り返し、時間と手間をかけて体制を整えていく必要があるでしょう。

今のフィールドセールスに求められるスキル

フィールドセールスは、営業プロセスの中でも特に大切なクロージングを担当します。では、フィールドセールスとして成果を上げるためにはどんなスキルが求められるのでしょうか。

コミュニケーション力
フィールドセールスは顧客と直接対話するため、コミュニケーション力が特に重要なポジションです。何気ない対話から顧客の警戒心を解き、更に顧客と信頼関係を構築する能力が求められます。また、相手の反応を見ながら顧客の興味関心を惹く商品やサービスを提案することが大切です。
具体的には礼儀やマナー、言葉遣いなどは当然のスキルであり、それに加え傾聴力、話す力、書く力、ボディランゲージなどのコミュニケーションが求められます。

論理的思考力
フィールドセールスの主な仕事は、商談で自社のサービスや商品の魅力を伝え、顧客のビジネスを成功に導くことです。顧客の抱える課題解決に向けて、自社商品がどのように作用するのか、他社商品に比べて優れているのはどのような点なのかを論理立てて説明することが求められます。フィールドセールスの提案に対する顧客の納得度が高いほど成約率も上がると言えるでしょう。

提案力・問題解決力
上記の論理的思考力に加え、顧客に商品やサービスのメリットを分かりやすく伝えるための提案力が必要です。具体的には顧客の課題を正確に把握することや、顧客の視点に立ち具体性を持って分かりやすく提案できることなどが挙げられます。
同時に、顧客の悩み事を分析して効果的な解決策を考え出す問題解決力も求められます。具体的には顧客の現状を整理し、成功へのプロセスを言語化できることや、現状と理想のギャップを埋めるための具体的な解決策を考えられることなどが挙げられます。問題解決力が高い方は、リーダーシップを発揮することができ、キャリアアップにも役立つでしょう。

協調性
フィールドセールスに必要なスキルとして欠かせないのが、社内メンバーとの連携をする力です。特にインサイドセールスとの細かな情報共有は、商談の行く末を大きく左右します。インサイドセールスは顧客のニーズや特徴を誰よりもよく把握しているため、商談の大きな助けになります。そのため、チームワークや協調性の高さもフィールドセールスに求められる重要な能力と言えます。

このように、フィールドセールスとして働くにはさまざまなスキルが求められます。それに加え、業界によって扱う商材やプロダクトが変わるため、その業界の経験や専門知識も求められます。プロダクトを理解して顧客ごとにマッチした可能性やメリットを具体的に提案できるようになるでしょう。自身が扱うプロダクトへの理解は、表面的な情報だけではなく、開発段階も含む将来的な情報や競合他社の情報収集も含まれます。細かなリサーチをしながら理解を深めることも求められるでしょう。

フィールドセールスとして働く魅力とは

フィールドセールスには営業職としてのキャリアを高めるための魅力がたくさんあります。ここからは、年収や働き方、やりがいなどフィールドセールスとして働く魅力を紹介していきます。

高年収が期待できる
フィールドセールスは、営業職の中でも特に高い年収を期待できる職種です。現在、The MODELを採用しているSaaS企業は成長市場に当たり、特に営業活動が企業の収益に直結するため、フィールドセールスに対しては高い報酬を与える傾向にあります。また、成果に応じてインセンティブを与える制度が整っており、自身の頑張り次第で年収を上げることが可能です。
SaaS業界でのフィールドセールスの年収は、経験や企業規模によって変わりますが、平均400万円〜1000万円となっており、中堅レベルでもかなりの高収入が期待できます。大手企業や外資系SaaS企業では特に年収の上限が高く設定されており、経験次第では1500万円以上のポジションを得ることもあります。企業規模やクライアントの規模が大きくなるほどフィールドセールスの役割が重視され、年収も上がります。

自由で柔軟な働き方ができる
従来の営業は1人で多くの業務をこなしながら顧客先に出向いて商談をしていたため、体力的にも精神的にもきついと思われていました。しかし現在のフィールドセールスは、クラウドツールを活用して営業活動を進めるため、テレワークも当たり前になっています。顧客とのやりとりもオンラインミーティングやメールで完結することも多く、出張や移動の負担も少なくなっています。
また、多くのSaaS企業でフレックスタイム制度が採用されており、自身のライフスタイルや生活リズムに合わせてスケジュールを調整できます。

顧客の課題解決に貢献するというやりがいを感じやすい
フィールドセールスは売るだけが仕事ではなく、顧客が抱えるビジネス課題を解決するために商品やサービスを提供し、直接解決のための貢献ができる点が大きなやりがいといえるでしょう。顧客が自社の商品やサービスを利用し、成功していくプロセスを伴走することで、自分の仕事がビジネスの成長に結びついていることを実感できるでしょう。顧客と信頼関係を築き、継続的にサポートして成功を間近で感じられることが大きなモチベーションとなるでしょう。

フィールドセールスのメリット、デメリット

ここからはフィールドセールスのメリット、デメリットを見ていきます。

まずはメリットから紹介します。フィールドセールスには企業や営業担当者にとって多くのメリットがあります。直接顧客と対面することで得られる利点は、ビジネスの成功に大きく貢献するでしょう。

商品の魅力を直接伝えることができる
フィールドセールスは基本的に対面で商談を実施します。対面でのやりとりはリモート営業に比べて信頼関係の構築が容易であり、顧客に対する理解や共感を深めることができるでしょう。定期的な訪問によって接触頻度が高まることで、長期的な信頼関係の構築が促進されます。特に、顧客の表情や仕草など、微妙な感情や反応を読み取れる点が大きな強みです。対面での迅速かつ細やかな対応は、顧客との信頼関係を更に強固なものとし、リモート営業では得られない深いコミュニケーションを実現します。結果として、長期的なビジネスパートナーシップが形成され、継続的な取引や協力関係が生まれやすくなるでしょう。

顧客の状況に合わせた柔軟な提案ができる
顧客を直接訪問することで、現場の状況やニーズをリアルタイムで把握し、その場で即応した提案をすることが可能です。柔軟に対応することで顧客の信頼を得ることにもつながり、提案がより顧客に合ったものになります。

急成長する市場でのスキルを磨くことができる
The MODELの営業プロセスの導入が進んでいるSaaS市場は、企業のデジタル化やクラウドサービスの需要増加に伴い、急速に拡大しています。その中でスキルを磨くことで、営業職の市場価値も高まり、多様なキャリアパスを追求できるでしょう。
次にデメリットを紹介します。フィールドセールスにはさまざまなメリットがありますが、同時に幾つかの課題も存在します。

商談準備にコストや時間がかかる
フィールドセールスは顧客先への訪問にコストと時間がかかります。遠方の顧客を訪問する場合は、交通費や宿泊費などのコストが加わり、企業にとって大きな負担となる可能性があるでしょう。しかし、現在はWeb会議ツールなどが普及してきた影響で、何度も足を運ぶ必要がなくなり、必要最小限の訪問で商談を進められるようになってきています。

アプローチできる件数に限りがある
フィールドセールスは1日当たりに対応できる件数にどうしても限界があります。インサイドセールスと比較すると非効率なスタイルで営業活動をするため、アプローチできる件数が限られます。つまり、アプローチする件数を増やすには人員を増やす、もしくは見込み顧客を厳選して効率的にアプローチすることが求められます。

人対人のコミュニケーションのため認識のズレが起こりやすい
フィールドセールスは、メールや書面とは異なり文面や資料が手元に残らないことがあるため、コミュニケーション不足による認識のズレが起きやすいことはデメリットといえるでしょう。

以上のように、フィールドセールスを成功させるためには注意しなければいけないポイントがあります。

まとめ

本記事では、The MODEL型の営業プロセスにおけるフィールドセールスについてひも解いていきました。一言でフィールドセールスといっても、業界や商品、サービスによって営業方法や必要なスキルはさまざまですが、商品やサービスの受注を獲得するための最後のプロセスを担う重要なポジションということはどの業界でも変わりません。

現在、対面での営業の機会が減少しつつある中、限られたチャンスを確実に獲得するためには、より効率的な営業活動をすることが求められています。そのため、各企業にてThe MODEL型の営業プロセスによる分業制の導入が進んでいます。各プロセスの担当者それぞれが邁進することで、大きな成果を出すことができるでしょう。