IT営業は辛い?辛いと言われている理由や次のキャリアステップを解説!

IT営業とは、IT企業でサービスや製品を販売する活動を指します。IT営業の扱う商品は多岐に渡ります。例えば、『ソフトウェア・情報システムの開発や導入』『Webサイト・コンテンツの制作』『Webを利用したマーケティング』『ハードウェア端末の販売』『エンジニアの派遣』などが挙げられます。ITに関する専門知識が求められるため、システムエンジニアやプログラマーからIT営業に転向するケースは少なくありません。

IT営業の求人では、営業未経験者でも応募可能にしていることがありますが、ITの知識が必要不可欠です。サービスや製品の魅力や導入するメリットなどをわかりやすく顧客に伝える必要があり、通常の営業とは異なるスキルや知識が要求されます。

本記事では、近年需要が高まっているIT営業の辛いと言われている理由やキャリアステップについて解説します。

IT営業の需要が高まる背景

近年IT営業の需要が高まっているのは、世の中で提供されるSaaSの増加が影響しています。SaaSとは「Software as a Service」の略称です。クラウドサーバーにあるソフトウェアをネットを経由して利用できるサービスとして注目されています。

SaaSを利用すると、ユーザーはインターネットを経由して自由にサービスを利用できるのが特徴です。デバイスにプログラムをインストールをする必要はなく、アカウントを作ればさまざまなデバイスから自由にサービスを利用できます。環境構築の必要がなく、ソフトウェアの導入費用や管理費用などを抑えられるため、多くのユーザーが利用しています。

SaaSは定額の料金体制が多いサービスであり、継続的な売上を見込める点もメリットです。たとえば、半年や1年の契約プランを用意することで、長期に渡って利用してもらうことを期待できます。機能のアップデートを繰り返して常に最新のサービスを提供し、ユーザーに快適に利用してもらえる点も魅力です。

SaaSは提供側にもユーザー側にも魅力的な点が多いため、近年は市場が拡大しています。新規にSaaS系の企業を立ち上げるケースも増えており、SaaSを営業するためにIT営業が必要とされ、求人が増加しています。

IT営業の種類

IT営業の種類は主に『フィールドセールス』と『インサイドセールス』の2つに分けられます。フィールドセールスはいわゆる外回りと呼ばれ、顧客と商談して契約を得ることを目指します。訪問型営業であり、直接顧客と顔を合わせて商談を進めるため商品やサービスの魅力を伝えやすく、相手の表情や反応を直に見て臨機応変な対応ができます。一方、交通のコストや時間がかかり、営業の効率が悪い点はデメリットと言えます。

インサイドセールスは『BDR』(Business Development Representative)と『SDR』(Sales Development Representative)という2つに分けられます。BDRはアウトバウンド型あるいは新規開拓型と呼ばれます。ターゲット企業へ電話やメール、DMなどを行い顧客開拓を一から目指すのが特徴です。主に対象となるターゲットは大手企業が中心となります。

一方、SDRとはインバウンド型のアプローチです。問い合わせやホワイトペーパーといったオンラインや、展示会やセミナーなどオフラインを活用する方法があります。対象となるのは中小企業が中心です。企業からの問い合わせなどを起点にアプローチするため、導入意欲が高い企業に短時間で導入を実現できるメリットがあります。

IT営業が辛いと言われる理由

IT営業が辛いと言われるにはいくつか理由があります。ここでは、その理由を6つ解説していきます。

高い売上ノルマ

IT営業では売り上げのノルマが課せられるのが一般的です。SaaSなど需要の高い分野は、急成長中のIT企業が多く、高い営業目標が設定されることが多いです。売上のノルマを達成できなければ良い評価を受けられず、ストレスを抱えながら仕事をしなければなりません。また、IT営業は仕事の性質として売上が確定するまでに時間がかかります。特に大型案件の場合は顧客も慎重になるため、初回訪問をしてから契約まで1年以上かかることも珍しくありません。

また、単に顧客とやり取りをするだけではなく実際に開発する技術者との調整も必要です。無茶なスケジュールや予算を組んでしまうと案件が失敗する可能性が高く、契約にこぎつけるまでの時間もかかり、ノルマ達成が難しくなるのです。

IT営業は売り上げがすぐに上がらないにもかかわらず、経営陣からプレッシャーをかけられることは少なくありません。決算の締め日まで日数がない場合、IT営業でノルマを達成するのは絶望的になるでしょう。精神的に追い詰められた状況になりやすく転職を検討する人もたくさんいます。

新規開拓のプレッシャー

IT企業のサービスには、まだ市場に浸透していないものが多く含まれています。業界の流行り廃りのサイクルがとても早いため、需要を見込める新しい製品を展開しないと競争に敗れるためです。新規の顧客を獲得する際はテレアポが頻繁に用いられます。継続して能動的にできる営業手法であり、コストもかかりません。誰でも簡単に実施でき、1日で100社以上とコンタクトを取ることも可能です。未経験からIT営業に採用されて、テレアポで新規開拓を任せられるケースは少なくありません。

しかし、テレアポは成功率が低い営業方法で、話を聞いてもらう段階に至るのにとても苦労します。話しを聞いてもらえたとしても、そこから契約する可能性も低いです。延々と電話を続けることになり、ノルマを達成しないといけないプレッシャーがかかるため、新規開拓のテレアポをきついと感じる人は多く、テレアポがきついためにIT営業の仕事を辞めたというケースは多いです。

製品知識と情報アップデート

IT営業は自社で取り扱う製品について正確に理解する必要があります。自社製品にどのような魅力があるのか、どんな課題を解決するのに役立つのかを、正確に顧客にアピールしなければいけません。そのためには、自社製品に関係する専門知識についてもある程度は理解する必要があります。IT営業の場合はクラウドやセキュリティなどの知識も要求されるでしょう。

また、サービスは常に進化しているため、IT営業の仕事をしていく上で知識のアップデートが必要になります。IT業界の技術は急速に進歩しているため、自社製品の開発では新しい技術を頻繁に導入します。最新の技術動向にもある程度精通していなければ、IT営業は務まらないのです。

IT営業は自社製品の知識から他社の動向、最先端の技術までをインプットする必要があります。見込み客の状況や業界の動向まで知らなければならず常に勉強する必要があるため、仕事がきついと感じる人は多いです。求められる知識のレベルが高く、きちんと知識がなければ契約を得ることは難しいでしょう。

製品の魅力が弱いと売りづらい

IT営業をする際に、自社製品が魅力的なものであれば受注をしやすいです。しかし、実際にはあまり魅力のない製品の営業を任されることは頻繁にあります。他社製品と比較した大きな違いがなく、従来の製品と比べてもそれほど優れた点がない製品を担当することになると、売上ノルマを達成することは難しいでしょう。

どれだけ営業方法を工夫したとしても、製品の魅力のなさを覆い隠すことは難しいでしょう。仮に契約できたとしても、顧客がいつか不満を訴える可能性が高く、継続して契約をしてくれないことも多いです。開発力のない企業や製品が魅力的でない企業でIT営業を担当すると、ノルマを達成するのが困難であり、仕事がとてもきついものになるでしょう。

競合サービスとのシェア争い

IT業界は市場の拡大が続いており、新規参入企業が増えています。既存の企業も含めて多くの競合サービスが存在しているのです。特にIT業界の中でも注目されている市場では、似たようなサービスが溢れています。その中で他社の製品にはない独自の魅力をアピールしないと営業は成功しません。単に自社製品に詳しいだけではなく、他社製品についてもしっかりと分析し、他社製品と比較した自社製品のメリットを正確に把握して見込み客に提案する必要があります。

競合にシェアを奪われると売上のノルマを達成できないだけではなく、売り上げを失う以上の影響を自社に与えるでしょう。IT営業は競合よりも多くの顧客を獲得しなければいけないというプレッシャーがあり、常に競合を意識しながら営業活動をするプレッシャーの大きさが、きついと感じる人は多いです。

顧客と社内の開発組織の板挟みになる

IT営業の仕事は顧客だけではなく社内の開発組織との関わりも重要です。仕事の中で見込み客からさまざまな要望を寄せられ、その要望を開発組織に伝える役割も担うためです。

しかし、開発組織の人材リソースには限りがあったり、技術的に実現が難しい事柄が存在したりするため、顧客からの要望をすべて叶えられるとは限りません。顧客には開発組織の状況が見えない状況ですべての要望を受け入れると、開発組織から不満が噴出するでしょう。

IT営業は顧客の要望を聞き出して、できるだけ実現できるように社内の開発組織と調整することが求められます。実現可能な開発の範囲を正確に把握して、妥協点を見出していかなければいけません。顧客の要望が実現できない場合は顧客を説得する必要があります。

顧客と社内の開発組織の調整は高いコミュニケーション力や、自社製品と開発組織に関する深い理解が求められます。両者の板挟みになって苦しむケースは少なくありません。とても神経を使う仕事であり、きついと感じる人はたくさんいます。

向いている人

IT営業が辛いと言われる理由を紹介しましたが、ここからはIT営業に向いている人の特徴を3つ紹介していきます。

ITや最新技術に興味がある人

ITや最新技術に興味のある人はIT営業の仕事が向いています。IT営業の仕事は一般的な営業の仕事と比較すると専門性が高く、新しい知識を得られるからです。最新技術を活用した製品の営業を任せられることもあるため、トレンドの技術を学んで理解していることも要求されるのです。

そのため、ITや最新技術に興味や関心のある人は、仕事のために技術トレンドを追いかけることに苦痛を感じないでしょう。むしろ楽しんで勉強や情報収集をできるはずです。IT業界は技術進化のスピードが速いため、IT営業の仕事をしていれば常に最先端の技術に触れる機会があるのです。

また、IT営業はエンジニアや専門家と話をする機会がたくさんあります。わからない点や気になる点を気軽に質問できるため、新たな技術を学びやすい環境にあります。セミナーや勉強会、イベントなども開催されているため、やる気があれば知識を高める機会は豊富です。

変化がある営業スタイルを求める人

常に変化がある営業スタイルを好む人にIT営業は向いています。IT営業の仕事は決まりきったスタイルではなく、扱う製品や見込み客に合わせて柔軟に対応することが求められるからです。

IT業界は目まぐるしく変化する業界であり、技術革新が多く、常に新しいものが登場します。これまで扱ったことのない製品やサービスを営業する場面があるため、臨機応変に対応することが重要です。常に創意工夫をしながら最適な営業スタイルを追求したい人にとって、IT営業の仕事は刺激があり楽しめるでしょう。

IT営業の仕事は扱う製品やサービスの専門性が高いため、紹介する際の工夫が必要です。単に自社製品の特徴や料金プランを並べるのではなく、顧客目線で魅力を伝える説明を心がけなければいけません。どのようにして製品の紹介するのかは担当者の裁量に任されるため、自分なりに営業スタイルを工夫できます。単調な営業ではなく、毎回違うスタイルの営業に取り組めるため、変化に富んだ仕事を求める方にIT営業は適しています。

コミュニケーションが得意な方

IT営業では顧客とエンジニアの間で調整する作業がたくさん発生します。そのため、コミュニケーションを取りながら調整をする業務が得意な人に向いています。

顧客から要望を聞き出しても実現できるかどうかは社内のリソースによるため、エンジニアと別途調整しなければいけません。予算やスケジュール的に無理な部分については顧客に妥協してもらわないといけませんが、妥協案に対して顧客が難色を示すこともあります。また、社内調整の際にエンジニア同士で意見が対立するケースもあるでしょう。すべてを丸く納めるためにIT営業がしっかりとコミュニケーションを取り調整する必要があります。

上記のような調整作業は簡単にできることではありません。向き不向きがあるため、調整作業が不向きな人がIT営業の仕事をするときついと感じるでしょう。言い争いになっている人たちの間を取り持って関係性を修復した経験があり、第三者の視点で客観的に妥協点を見つけ出せる人は、IT営業で活躍できます。

IT営業のキャリアパス

ここからはIT営業のキャリアパスや、キャリアチェンジで選択肢にあがる職種を紹介します。

IT営業のプロフェッショナル

IT営業としてのキャリアパスの一つは、IT営業のプロフェッショナルを目指すことです。IT営業は専門性の高さや経験の豊富さが重視されるため、常に不足しているのが現状です。仕事を続けてプロフェッショナルとしてのスキルを磨くと、引く手あまたの存在になれるでしょう。実績を積むことで、より条件の良い企業へ転職もできます。

同じ会社でIT営業を続けるとリーダーの立場を期待され、ずっと現場一筋で営業するのは困難でしょう。それでも、現場を取りまとめるリーダー的な役割をこなしながら、IT営業のプロとして活躍を続けるというキャリアパスが可能な会社もあります。IT営業のプロフェッショナルとして活躍を続けたいならば、そのようなキャリアが存在する企業を探しましょう。

IT営業のマネージャー

IT営業の仕事を続けて実績を積めば、最終的にはマネージャーを目指せます。同じ企業で働き続けることで昇進して役職が上がり、最終的にはマネージャー職になれるのです。マネージャーはIT営業としての一般的なキャリアパスです。マネージャー職になれば収入を上げられ、チームを管理するリーダーとしての立場で働けるようになります。

管理職は自分で営業する機会が減り、チームメンバーに指示を出して全体の営業成績を上げることを目標にします。そのため、プロジェクトの立ち上げから調整、部下の育成など多様な業務を担当します。チームのトップとしての大きな責任と裁量が与えられるため、やりがいを感じやすいポジションです。IT営業のマネージャーを目指すためには、IT営業としての実績を着実に積み重ねていく必要があります。また、マネジメント力など管理職として求められるスキルや知識を高めていくことも重要です。

カスタマーサクセスやマーケター

IT営業からカスタマーサクセスへとキャリアチェンジするケースも存在します。カスタマーサクセスとは、製品やサービスの受注後に顧客対応を担当する職種です。顧客がサービス解約せず契約を継続してくれるように促します。また、顧客単価を上げることも重要な役割で、新たに使える機能などの提案もします。

カスタマーサクセスの仕事は多岐にわたります。例えば、顧客に対してサービスの使い方を研修することも業務の一つです。また、利用者が共有で利用できるコミュニティを運営してファンを増やすといった業務もあります。従来の営業にはなかった新しい営業の形として、カスタマーサクセスは注目を集めています。

IT営業からマーケターを目指すというのも選択肢の一つです。マーケターは市場分析でニーズを把握しながら、商品の企画や開発、広告宣伝、販売促進などを担当します。IT営業の仕事を通して業界の知識やトレンドを学び、顧客とのコミュニケーションを通して市場のニーズを理解してきたならば、その経験をマーケターとして活かせるでしょう。

エンジニアやデザイナー

IT営業の仕事からエンジニアやデザイナーなどの専門職を目指すというキャリアパスもあります。ITエンジニアは不足しているため、未経験でも採用されることは少なくありません。IT営業の経験を通して、IT知識を有しつつエンジニアとも接してきたため、転職で有利になるでしょう。営業目線を持っているため、他のエンジニアとは異なる視点から業務に取り組める点は強みになります。

IT営業からWebデザイナーへ転職するというケースも珍しくありません。Webデザイナーも人手不足が続いており、未経験からの転職を受け入れている求人は多いです。IT営業をしているならば、顧客目線を理解しているため、他のデザイナーとの差別化を図れるでしょう。

まとめ

IT営業はSaaSの流行により需要が高まっており、求人はたくさんあります。仕事においては売上ノルマがあり、製品知識など覚えることが多く、エンジニアと顧客の板挟みになるためきついと感じる人は多いですが、マネージャーやカスタマーサクセス、エンジニアなどを目指せるキャリアの幅があります。IT営業への適正のある人であれば、楽しみながら働き、実績を積み重ねて年収アップできるキャリアパスを目指せるでしょう。

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