カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスの違いは?重要性や効果、カスタマーサクセスとの関係性を解説します!

カスタマーマーケティングとは?

カスタマーマーケティングとは、既存および潜在の顧客ごとに合ったアプローチで顧客ロイヤリティやLTV(顧客生涯価値)の向上などを目指す活動です。特徴は次の3点に集約できます。

個別最適化

カスタマーマーケティングはマスマーケティングと異なり、顧客データに基づいて個人に合わせた最適なアプローチをします。具体的には、顧客属性や購買履歴、ウェブサイトのブラウジングデータなどから個人の嗜好や興味、関心を分析します。それらに基づいて、パーソナライズされた商品の提案やプロモーションを実施します。セグメンテーションを行い、顧客層別の購買傾向や価値観を明らかにすることも重要です。例えば、家族向けの商品を購入している層には子育て特化型のプロモーションをするなどです。

継続的な関係構

カスタマーマーケティングは一過性の販促活動ではなく継続的な関係構築を重視します。クロスセルや定期購入の提案、メールマガジンの送信、SNSを活用した交流など、短期でなく長期のコミュニケーションを心掛けます。顧客との接点を増やすことで、ブランドロイヤルティを高めていくのです。

顧客からのフィードバックを商品開発に生かしたり、クレーム対応のスピードを向上させたりすることも大切です。双方向のコミュニケーションが関係強化につながります。

デジタル技術の活用

近年ではインターネット上のさまざまなデータをマーケティングに取り入れる動きが加速しています。クッキーやSNSでの行動履歴、顔認証の結果や位置情報などの個人データを収集、分析し、デジタル広告などで活用します。Webサイトを訪問したユーザーに合わせて表示する商品を変更するなど、リアルタイムで個人最適化するのです。こうしたデジタル技術によるデータの連携が、効果的なカスタマーマーケティングの実現には欠かせません。同時に、情報があふれている現代においては、過度なプロファイリングや情報漏えいへの注意も必要です。

このように、カスタマーマーケティングとは顧客理解を深め、個別最適なアプローチで継続的な関係を築く手法です。デジタル技術を上手く取り入れつつ、健全な運用が重要となります。

カスタマーマーケティングがなぜ重要なのか

近年の消費者動向を見ると、個人の嗜好が多様化し、商品やサービスの選択肢が飛躍的に増えていることが分かります。背景にはインターネットとスマートフォンの発達があります。商品情報が氾濫する中で、消費者は細分化された需要に基づいた選択をするようになりました。グローバル化も個人の選好の多様化に拍車をかけています。以前はテレビCMなどのマスメディアで訴求すれば、ある程度の新規顧客の獲得が期待できました。しかし近年は、ターゲットを絞り込まない一律の訴求では、消費者の注意を引くことが難しくなっています。消費者は商品選択の自由度が高まった反面、過剰な選択肢に疲弊する『選択疲れ』を感じています。その結果、以前に購入したことのある既知のブランドに回帰する傾向があります。

こうした消費者行動の変化から、既存顧客のリピート比率を高めることが、成功のカギを握るようになりました。新規顧客獲得のためのプロモーションには多額の予算が必要です。テレビCMや新聞、雑誌への広告出稿や試供品の配布、インフルエンサーの起用など、投資対効果が不透明な施策が多いのが実情です。それに対し、既存顧客へのアプローチは、低コストで効果を発揮しやすいという特徴があります。メールマガジンの配信や、SNSを活用した交流、ウェブサイトへのリターゲティング広告など、個人レベルでの最適化が可能です。購買データから個人の需要を分析し、次回の購入意向に合わせた商品を提案することで、高いリピート率を実現できるのです。

また、アンケートやSNSを通じて収集した既存顧客の生の声からは、その顧客ならではの隠れた需要も掘り起こせます。これまで光が当たりにくかった個人の潜在ニーズをマイニングすることで、製品開発の精度も上がります。

以上のように、消費者の需要が多様化する中で、既存顧客との継続的な関係構築が成功の鍵を握るようになっています。この視点こそが、最近注目を集めるカスタマーマーケティングの核心です。カスタマーマーケティングでは、個々の顧客の属性や購買履歴、Webサイトの閲覧データ、特定の商品に関する資料請求の有無などから、個人に合わせた最適なマーケティングを実現します。顧客セグメンテーションを行い、顧客層別の嗜好や購買傾向を分析した上で、そのインサイトに基づいて施策を立案するのです。例えば、子育て世代に特化した商品券を送付したり、韓国ドラマ愛好家に人気作品の関連商品を提案したりするなどです。そして、ビッグデータとAIの活用が個人レベルでの最適化を加速しています。

メールマガジンやSNSを通じた継続的な交流も、カスタマーマーケティングで重要です。単に商品を売るのではなく、個人との信頼関係を築くことが不可欠なためです。顧客との対話を大切にすることで、購買では得られない生の声を収集できます。これによって、ビッグデータでは見えてこない、個人ならではの潜在ニーズを掘り起こすことが可能となるのです。

このように消費者の多様化が進む中で、カスタマーマーケティングの重要性はますます高まっていくと考えられます。個人にスポットを当てたマーケティングこそが、リピート率とLTVを高め、企業の利益を伸ばす戦略的なアプローチになるといえるでしょう。

カスタマーマーケティングの効果

カスタマーマーケティングを成功させるためには、単に顧客データを分析するだけでなく、得られたインサイトをどのように活用していくかが重要です。具体的な3つの活用方法を紹介します。

1つ目は、収集した顧客データを基にしたセグメンテーションです。セグメンテーションは、収集した顧客データを基に、顧客に合ったセグメント(グループ)に分類するプロセスです。購買履歴や属性情報の他、性別や年齢、職業、家族構成などを軸にして複数のグループに分けます。また、Recency(直近購入時期)、Frequency(購入頻度)、Monetary(購入金額)を分析の指標とするRFM分析を用いて価値の高い顧客を特定し、それに基づいてグルーピングも行います。

セグメンテーションの主な目的は、異なる特性を持つ顧客グループを識別し、それに基づいてターゲティングした施策を実施することです。例えば、高価な商品を複数購入している顧客に、さらなる付加価値を提供することを目的としたアップセルを促進するプロモーションが挙げられます。この手法によって、企業は顧客セグメントごとに合わせた施策を展開し、より効果的なマーケティング戦略を構築できます。セグメンテーションは顧客に、より適切でパーソナライズされたアプローチを提供するための基盤となり、リソースの最適な活用と効果的な顧客関係の構築に寄与します。

2つ目は、継続的な関係構築です。

単に商品を売るのではなく、CRMの観点から顧客との継続的な関係を構築することが大切です。メールマガジンの配信や、購買履歴に応じた特典提供、SNSを活用した交流などを行います。例えば、高級時計を購入した顧客には、同ブランドのイベントへの招待状を送るなどの施策が挙げられます。これらの取り組みによって、企業は単なる一回限りの取引ではなく、長期的な顧客関係を築くことができます。また、関係性が深まることでリピート率が向上し、顧客の愛着も高まります。継続的な関係構築は、顧客とのパートナーシップを構築する重要な戦略です。まだ顧客と関わりを持てていない場合、まずは、セミナーを開催してみるなど、顧客となり得る人とのつながりを持つことから始めることをオススメします。

3つ目は、製品開発・改良へのフィードバックです。

収集した顧客データから潜在ニーズを掘り起こし、新商品の企画に活用したり、既存商品の改良点を見出したりすることができます。例えば、ある商品のレビューで改善要望が多かった機能をアップデートする、などの活用法があります。このように、顧客データを単に分析するだけでなく、セグメンテーション、関係構築、製品改善の3つの側面で活用していくことが重要です。データ駆動なマーケティングを実践するためには、収集したデータを具体的な施策につなげることを意識する必要があります。カスタマーマーケティングの効果を最大化するには、単にデータを集めるのではなく、集めたデータをどう生かすかという視点が欠かせません。データ分析力とともに、戦略的なマーケティング設計力が求められるのです。

カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスの関係

近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、企業が提供する製品やサービスのcommoditization(商品化)が進んでいます。似たような機能を持つ製品が溢れ、差別化が難しくなっています。そのため、単に優れた製品を提供するだけでは、顧客ロイヤルティや満足度を高めることができなくなっています。製品そのものよりも、製品を通した顧客体験の質こそが、成功の鍵を握るようになっています。ここで重要性を増しているのが、『カスタマーサクセス』です。カスタマーサクセスとは、文字通り顧客が製品を成功裏に活用できるよう支援する活動を意味します。

具体的には以下の活動を指します。
1.導入前のコンサルティング
2.活用時のサポート
3.効果測定と改善提案

一連のプロセスを通して高い顧客満足度を目指します。カスタマーサクセスが求められる背景には、単なる製品の提供では満足にはつながらない、という認識があります。製品が持つ潜在能力を最大限引き出すには、導入前から成功に至るまでの継続的な関与が欠かせません。そのため、従来のような後方支援型のアプローチでは不十分であり、能動的に顧客と接点を持ち、成功への旅路を支援することが求められています。

一方でカスタマーマーケティングは、個々の顧客データに基づき、製品提供以外の側面から関係構築に注力する手法です。両者は以下のように相互補完的な関係にあります。
・マーケティングデータを顧客へのサクセス施策設計に活用
・サクセス活動から得た生の声をマーケティング戦略立案にフィードバック
・サクセス支援による顧客満足がロイヤルティとリピート購入につながる

要するにカスタマーマーケティングが関係構築を担うのに対し、カスタマーサクセスは製品活用の実現を支援するという役割分担があると言えます。DX時代においては、この両輪を回すことで、単なる商品提供者を超えたマーケティングパートナーとしての地位を確立することができるのです。それが満足度と生涯価値を高める戦略的なアプローチといえます。

DX時代は、カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスを一体的にマネジメントする能力が、顧客獲得と維持に欠かせない能力となるでしょう。それらには、オンボーディング(新入社員を企業にとって有用な人材に育成する施策やプロセス)も含まれます。製品提供からカスタマーサクセス支援までシームレスな顧客体験を提供できる企業が、現代の社会における勝者となるはずです。

まとめ

ここまで、カスタマーマーケティングとカスタマーサクセスの違いについて説明してきました。

前述した通り、DXが進展する中で、企業にとってカスタマーマーケティングとカスタマーサクセスの重要性が高まっています。

カスタマーマーケティングは、個別の顧客データに基づいて最適な商品・サービスを提供し続けることで、顧客ロイヤルティとlifetime value(LTV)を高める手法です。一方、カスタマーサクセスは、製品提供後も成功に至るまで親身に支援することで、初期の納得感と継続的な満足感を醸成する手法です。両者に共通するのは、単なる商品の売買を超えて、顧客との関係性や体験価値向上に注力する点にあります。DX時代において顧客を獲得し続けるには、この2つのアプローチを戦略的に組み合わせることが欠かせません。カスタマーマーケティングで蓄積した個人データを、カスタマーサクセス施策に活用する一方で、サクセス活動から得た顧客感度をマーケティング戦略にフィードバックする、といった連携が重要です。

今後はカスタマーマーケティングとカスタマーサクセスを統合的にマネジメントする体制づくりが急務となります。データと現場力で顧客価値を最大化する企業こそが、激しい競争を勝ち抜けるでしょう。

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