ルート営業に向いている人はどんな人?仕事内容や向き不向き、辛い点は?

ルート営業とは、『既存顧客』を中心に営業をする職種を指します。既に取引のある顧客に対して、長期的なフォローやヒアリング、新商品や新サービスの提案をすることが主な仕事内容です。
新規営業は、まだ取引のない『新規顧客』にテレアポや飛び込み営業などを中心とした新規顧客開拓をします。一方、ルート営業は『既存顧客』に向けた営業のため、顧客の状況やニーズを把握し良好な関係を築くことで、継続的に自社の商品やサービスを利用してもらえるように働きかけます。
では、ルート営業にはどのような人が向いているのでしょうか。本記事では、ルート営業の具体的な仕事内容や特徴、『楽な点』や『辛い点』について解説します。

ルート営業の仕事内容

ルート営業の具体的な仕事内容は、主に以下の項目が挙げられます。

アフターフォロー

アフターフォローとは、既存顧客に商品やサービスに不具合や問題点がないかどうかを定期的に確認し、サポートすることです。
せっかく新規顧客を獲得したとしても、早期離脱やリピートに繋げられなければ、安定した収益を得られません。そのため、アフターフォローを通じて既存顧客との取引を維持することが、ルート営業の重要な役割の一つと言えます。
アフターフォローには、取引商材に何かしらのトラブルや問題が発生した際の、顧客への迅速かつ丁寧な対応が求められます。さらに、使用方法の説明や疑問点の解消などにも対応し、顧客が気軽に相談できる存在であり続けることが重要です。アフターフォローを継続することで、顧客満足度の向上や商材、企業に対する信頼を高め、離脱防止やリピート増加が期待できます。

既存商品のグレードアップやオプションの提案

商品やサービスに新モデルや新バージョンがリリースされた際は、既存の顧客に契約の更新や追加を促します。他にも、既存の商品に対するオプションを提案する場合もあります。
顧客にとっては、全く別の新商品や新サービスを取り入れるよりも、既存商品のバージョンアップやオプション追加をする方が受け入れやすいです。そのため、1回の契約で終了することなく、契約の更新や追加の契約を獲得し続けることが大切です。
既存商品の離脱防止やリピート増加を促すアフターフォローに留まらず、既存商品のグレードアップや追加オプションの提案をすることが企業の収益拡大に繋がるでしょう。そのため、既存商品に対する積極的な提案も重要な仕事の一つです。

現状の課題や要望のヒアリング

既存顧客の現状の課題や要望などをヒアリングすることも、ルート営業の重要な仕事です。
顧客がどんなことに困っているのかを把握できれば、解決するための自社の商品やサービスの提案が可能です。他愛もない会話の中で、今まで需要がなかった商品が思い掛けず契約に繋がることも十分に考えられます。
そのため、ルート営業の担当者は、現在取引している商品やサービスとは関係のない話や、雑談のような話にもしっかりと耳を傾けて、顧客の抱えている課題や要望を汲み取り、何でも話せるような相談相手になることが大切です。ヒアリングした内容をもとに、課題を解決するために適切な商品やサービスを見定めて、顧客とのコミュニケーションを重ねながら提案をすることで、新しい契約に繋げることができるでしょう。

新商品や新サービスの提案

ルート営業の仕事には、既存顧客に対する新商品や新サービスの提案も含まれます。
ルート営業は新規顧客開拓をせず、既存顧客の契約更新やオプション追加などで企業の売上に貢献する仕事です。そのため、企業によっては自社で新しい商品やサービスがリリースされた際に、既存顧客に対する提案や契約が求められます。
既存顧客は、新規顧客よりも商談のアポイントがしやすいため、新商品や新サービスの提案の機会を多く設けられます。すでに取引している商品やサービスへの満足度が高い場合、企業や品質への信頼度もある程度高いので契約も獲得しやすいでしょう。既存顧客の多くが新たな契約に繋がれば、企業にとって大きな売上が見込めるため、新商品や新サービスの提案もルート営業の重要な仕事です。

ルート営業に向いている人の特徴5選

では、ルート営業にはどのような人が向いているのでしょうか。ここでは、向いている人の特徴を5つ紹介します。

コミュニケーション能力が高い人

ルート営業は、既存の顧客と良好な関係を維持することが求められます。そのため、顧客とのコミュニケーションを通じて、顧客が本音を話すための信頼関係を築くことが重要です。
さらに、ルート営業は既存顧客との取引の継続だけでなく、新しい商品やサービスの提案が求められます。既存顧客と丁寧なコミュニケーションを取り顧客のニーズや課題を把握できるため、取引商品やサービスの離脱防止だけでなく、追加契約や新たな契約の獲得などが期待できるでしょう。

管理能力が高い人

ルート営業は、1人で複数の既存顧客を担当することがほとんどです。そのため、担当する全ての顧客の状況を把握し、各タスクやスケジュールを管理する『管理能力』が求められます。
顧客から引き受けた依頼の対応が漏れていたり、顧客との約束事やスケジュール管理を怠ったりすると、大切な顧客の信頼を失ってしまうでしょう。また、それが原因で取引がなくなってしまう可能性も十分に考えられます。
そのため、顧客に対して丁寧で正確な管理ができる人は、ルート営業に向いていると言えます。

聞き上手な人

テレアポや飛び込み営業などを主な仕事とする新規営業とは異なり、既存顧客との会話を通じてニーズや課題を把握することが、ルート営業の特徴です。そのため、『話し上手な人』よりも『聞き上手な人』の方がルート営業には向いています。
時には、仕事と関係のない雑談のような話であっても、しっかり相手の話に耳を傾けることが大切です。顧客に向き合い傾聴することで、顧客が気づいていない課題や潜在ニーズを見つけ出せたり、それにより新たな契約の話に繋がったりもするでしょう。

顧客に寄り添った仕事がしたい人

新規営業の場合、取引のない顧客とアポイントから契約を締結するまでを担当するため、契約締結後も継続的に顧客と深く関わり続けることは難しいです。一方、ルート営業の場合は既存顧客と長期的に付き合うため、顧客に向き合い続けることが求められます。
そのため、同じ顧客と長期的に深い関わりを持ち続け、顧客に寄り添った営業がしたいと考えている人は、ルート営業に向いているでしょう。

誰とでも仲良くなれる人

ルート営業は、担当する顧客が決まっているため自分で相手を選べません。新規営業であれば、相手や状況に合わせた柔軟な対応力や対人影響力が必要になりますが、ルート営業は同じ顧客と長く付き合っていく必要があるため、特定の人と良好な人間関係を築くスキルが求められます。
そのため、どんな人とも良好な関係を築くことができ、相手を選ばず平等に接することできる人は、ルート営業に向いていると言えます。

ルート営業に向いていない人の特徴5選

一方、ルート営業に不向きな人はどのような人でしょうか。ここでは、ルート営業に向いていない人の特徴を5つ紹介します。

計画を立てて行動するのが苦手な人

前述のとおり、ルート営業は複数の既存顧客を同時に担当するため、管理能力や正確性が求められます。既存顧客との取引の中でミスが続いてしまうと、顧客からの信頼を失ってしまい、最悪の場合は契約取り消しになることも考えられます。
そのため、大雑把な性格の人やスケジュール管理が苦手な人は、ルート営業にはあまり向いていません。自分の強みを活かすことができる別の職種を検討してみるとよいでしょう。

自分で顧客を増やしたい人

まだ取引がない顧客を自ら開拓する新規営業とは異なり、ルート営業は既に取引のある顧客を担当することがほとんどです。そのため、自分の力で顧客を獲得して成果に繋げたいと考えている人は、ルート営業には向いていません。
同じ営業職でも、新規営業とルート営業はスタイルが大きく異なるため、それぞれの特徴や仕事のやりがいを理解した上で、自分の性格や志向性に合う職種を選ぶとよいでしょう。

変化が好きで飽き性な人

ルート営業は、担当している既存顧客に対して日々営業活動をすることになります。そのため、毎日の仕事内容がほとんど同じで、ルーティーンワークになりやすい職種です。
決まった仕事を日々着実にこなすのではなく、新しい取り組みや変化を好む人にとっては、ルート営業の仕事はストレスを感じるかもしれません。自分が飽き性だと感じてる人は、ルート営業以外の職種を検討することをお勧めします。一方、変化の少ない安定した環境に身を置きたい人は、ルート営業に向いていると言えるでしょう。

デスクワークをしたい人

ルート営業の仕事は、コロナ禍においても取引先のオフィスに出向いたり、食事会やゴルフなどで接待をする機会も少なくありません。顧客と顔を合わせることが多い仕事のため、常に身だしなみを整えておくことも大切です。
そのため、頻繁に外出したり、顧客と顔を合わせたりすることが苦手な人は、ルート営業には向きません。それよりも、インサイドセールスやカスタマーサクセスなど、デスクワークをメインとする営業スタイルが適しているでしょう。

人と長く付き合うことが苦手な人

長期的な付き合いが苦手な人や他人への関心があまり強くない人は、ルート営業には向きません。ルート営業は、日々顧客の声をヒアリングしながら、丁寧なフォローや適切な提案をすることが求められるため、人と長く上手に付き合えなければ成果を出すことは困難です。
他人への関心が強く人の話を聞くことが好きな人は、ルート営業に向いていると言えるでしょう。

ルート営業って楽?辛い?

ルート営業に対して、プラス面からマイナス面まで様々なイメージがあります。ここでは、ルート営業の『楽だと思われている点』『辛いと思われている点』をそれぞれ紹介します。

楽だと思われている点

新規顧客開拓をしなくてよい

ルート営業は既に取引のある顧客を相手にするため、わざわざ取引のない顧客とのアポイントを取る必要がありません。
新規営業では、法人や個人に対してテレアポや飛び込み営業をすることで契約獲得をすることがありますが、ストレスを感じ辛いと思う人も少なくありません。ルート営業は、そのような新規顧客開拓をしなくてよいところが楽だというイメージを持たれがちです。

契約が取りやすい

新規営業の場合、今まで付き合いのなかった相手に対していきなり架電や飛び込み訪問をするため、顧客からあまり良いイメージを持たれず、門前払いされてしまうことがあります。一方、ルート営業であれば既存顧客を相手に提案するため、比較的スムーズに提案を進められます。
また、これまでの顧客との会話やヒアリング内容から、商品やサービスへの興味度合いを事前に予測したり、適切な提案方法を仮説立てしたりできるため、新規営業よりも高い契約率を得られるでしょう。

ノルマが低い場合やない場合がある

ルート営業の場合、新規営業に比べてノルマが低かったり、企業によってはノルマが設定されていなかったりするところもあります。既存顧客に契約を継続してもらうことで売上を得る仕事であるため、現状維持ができればある程度の目標を達成できます。
新規営業では、高いノルマが課されてプレッシャーを感じたり、ストレスを抱え込んでしまったりする人も少なくありません。既存顧客を相手にするルート営業であれば、新規営業ほどノルマに追われることはほとんどないため、楽だと思われている理由の1つに挙げられます。

辛いと思われている点

給与アップやキャリアアップがしにくい

ルート営業は、ノルマが低かったりノルマ自体が設定されていなかったりする企業もあるため、給与アップやキャリアアップのきっかけを掴みづらい職種です。また、既存顧客との関係維持がミッションであるため、ルーティンワークになりがちで自分のスキルアップを感じにくい点も、辛いと思われる要因の1つです。
一方、新規営業であれば、高い成果を出すことができれば、その分のインセンティブの獲得や年収アップを狙えます。頑張り次第で目に見える報酬を得られる点が、魅力的に映る人もいるでしょう。給与アップや自己成長に重きを置いている人は、ルート営業よりも新規営業が向いているかもしれません。

相性が良くない顧客とも付き合う必要がある

ルート営業は、既に取引のある顧客を相手にするため、自ら顧客を選べません。担当する全ての顧客と相性が合うとは言い難いため、顧客によっては会話の波長が合わないことや、傲慢な態度にストレスを感じることがあるでしょう。
新規営業であれば、優良とは言い難い顧客や自分に合わない顧客は、取引の優先度を下げることもできますが、ルート営業でそれは難しいでしょう。ルート営業には、どのような顧客であっても継続的にコミュニケーションを取りながら関係を維持することが求められるため、ストレスや辛さの要因になることがあります。

ルーティンワークや事務処理業務が多い

ルート営業は、新規顧客開拓はほとんどせず決まった顧客に対して営業をするため、日々の変化が少ない仕事でもあります。毎日同じ仕事を繰り返していると、マンネリ化して仕事に対するモチベーションが下がったり、人によってはストレスを感じたりすることもあるでしょう。
さらに、既存顧客に対して取引継続や売上拡大を目指す必要があるため、それに伴う単価向上や改善提案のための資料作成、受発注処理や見積書作成などをルート営業が担当することもあります。顧客とコミュニケーションを取ることだけが仕事ではないため、辛さやもどかしさを感じてしまう人もいます。

ルート営業のキャリアパス

ルート営業には、どのようなキャリアパスがあるのでしょうか。ここでは、ルート営業のキャリアパスを5つのパターンに分けて解説します。

営業のスペシャリストになる

ルート営業としてスペシャリストを目指す選択肢があります。スペシャリストとは、特定の分野に関する高い専門性を持つ人材のことを指します。
スペシャリストを目指す場合、まずは特定の領域の知識を深めることが重要です。さらに、その領域の市場動向やトレンドなどの最新情報を把握しておくことが求められます。
自分が担当する領域への興味が強く、学び続けることが楽しいと思える人は、今後スペシャリストのキャリアを考えてみても良いかもしれません。

営業のマネジメント・管理職になる

ルート営業の経験やスキルを活かし、マネジメントをすることも可能です。マネジメントとは、『マネージャー』や『管理職』と呼ばれるポジションを指し、組織のパフォーマンス向上が主なミッションです。
マネージャーは、チームメンバーの進捗管理や目標設定、それに対するフィードバックを通じて、チーム全体の目標の達成を目指します。さらに、個々人のスキルアップに向けた育成やモチベーション管理など、売上や数値目標以外のマネジメントスキルも求められます。
マネージャーになるためには、まずは自分が営業として多くの知見や経験を得ておく必要があります。さらに、組織全体を把握して客観的に分析する観察力や課題発見力、組織全体を動かすための推進力や決断力を高めておくことも重要です。

総務、企画など他部署への異動

営業職で培ったスキルを活かして、『総務』や『企画職』にキャリアチェンジすることも可能です。
総務は、企業を経営する上で必要な仕事を幅広く担当し、社内イベントや株主総会の運営、郵便物や備品の管理、社内規定の作成、オフィス環境整備などの仕事が例に挙げられます。同時並行で複数の物事に対応しなければならない場面が多いため、事務処理能力やPCスキル、スケジュール管理能力が必要です。さらに、社外の顧客ともやり取りが発生するため、コミュニケーション能力や調整力が求められる職種です。
企画職には、商品企画や販売促進、広報・PR、営業企画などが例に挙げられます。企画職は、担当領域に関する課題解決を目指し、市場や競合の調査データなどからアイデアを企画立案し実行する役割を担っています。そのため、物事の本質を捉える分析力や情報収集能力、それを元にアイデアを形にする発想力や提案力が求められます。

他業種・他業界の営業

ルート営業の経験を活かし、他業種や他業界の営業職に転職する選択肢もあります。

コロナ禍において、働き方の変化やSaaS(※)の増加により、『インサイドセールス』や『カスタマーサクセス』など、サブスクリプションサービスの提供に適した営業職の需要が高まっています。それにより、対面や訪問を基本とするルート営業や新規営業からキャリアチェンジする人が増加傾向にあります。
(※SaaSとはSoftware as a Serviceの略であり、クラウドサービスとして提供されるソフトウェアのことを指します)
業種や業界が異なったとしても、営業に必要なスキルは基本的に変わらないため、ルート営業で培ったコミュニケーション能力や提案力は、転職先でも必ず活きるでしょう。ただし、業界や市場動向、顧客ニーズなどを新たに学ぶ必要があるため、注意しましょう。

フリーランスになる、起業をする

ルート営業から独立してフリーランスや起業をする場合、契約先企業の営業活動を代行する『営業代行』や、企業を代理して製品を販売する『販売代理店』を目指す選択肢が挙げられます。他にも、営業に関するコンサルタントやアドバイザーとして企業の支援をしたり、講師として人材育成をする道もあります。
ただし、ルート営業の経験が浅い状態で独立してしまうと、自分の仕事ぶりや仕事の功績をアピールできないため、顧客から評価してもらえず、取引を獲得することは難しいでしょう。そのため、まずは企業に所属して営業経験を積み、スキルやノウハウを身につけてから独立することをお勧めします。

まとめ

ルート営業は決まった顧客を相手にするため、楽だと思われることもありますが、一方でルート営業ならではの辛さや大変さがあることが分かりました。営業職だけでも様々なスタイルがあるため、自分の性格や志向性を理解した上で、自分に最も適した職種やキャリアを選択すると良いでしょう。

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