インサイドセールスの市場価値は高い?将来性って実際どう?

市場価値は仕事において自分の能力や評価を測る重要な指標です。ここで言う市場とは「転職市場」を指し、市場価値は転職市場の需給バランスによって決まります。

転職市場の中で希少性の高い能力や経験を持ち合わせていれば、それだけ企業から求められるため、市場価値が高いと言えます。自分の市場価値は、変動する市場のニーズを把握し、自分と同世代の人材と比較してどのような能力や経験があるのかを知ることで、ある程度測れます。市場価値が高ければ希望どおりの転職しやすく、それだけ高い年収も期待できるでしょう。

本記事では、近年注目を受けている職種のひとつであるインサイドセールスの仕事内容や市場価値、今後の将来性について解説します。

インサイドセールスとは

インサイドセールスは営業職のひとつで、リード(見込み顧客)に対して電話やメール、Web会議ツールなどを活用して営業する職種です。基本的に顧客先に訪問することなく非対面で営業活動を行うため、内勤営業と呼ばれることもあります。

インサイドセールスの仕事内容は、主に以下の5つの段階から成ります。

リード(見込み顧客)の獲得

リードとは『取引のない見込み顧客』を指し、リード顧客の獲得には『アウトバウンド』と『インバウンド』の2つの営業手法があります。前者は、テレアポや訪問営業、CRMツールを用いたメール配信などによって、インサイドセールスから顧客に対して働きかける営業手法です。一方で後者は、自社サイトへの問い合わせや資料ダウンロード、オンラインセミナーへの誘導など、顧客からの問い合わせによってアポイントを獲得する営業手法を指します。

インサイドセールスは、上記の営業手段によって獲得したリード顧客に対してアプローチすることで、リードの獲得を目指します。企業によっては、マーケティングチームがインバウンド施策により顧客リストを獲得する場合もあるため、部署を跨いだ連携が必要になります。

リードナーチャリング

リードナーチャリングとは、『取引のない見込み顧客の育成』を意味します。具体的には、獲得したリードに対して、電話やメールなどで継続的かつ効果的なアプローチをすることで、段階的に購買意欲を上げていく営業手法です。

見込み顧客によって自社の商品やサービスを契約する意欲は異なります。そのため、顧客を取り巻く環境や状況などに応じて、セミナーやイベント、資料提供などの適切かつ効果的なアプローチをすることで、段階的に顧客の購買意欲を醸成していきましょう。

アポイントの設定

問い合わせてきた新規顧客やリードナーチャリングによってニーズが顕在化してきた顧客に対して、提案のためのアポイントを設定します。

ニーズがない顧客に対して何度もアポイント依頼をすると、顧客から対応を懸念されることがあります。そのため、購買意欲が高まってきた適切なタイミングを見計らってアプローチすることが重要です。ニーズが顕在化していない顧客に関しては、引き続きリードナーチャリングを継続するとよいでしょう。

自社商品やサービスの提案、クロージング

アポイントが設定できたら、見込み顧客に対して自社の商品やサービスの提案からクロージングまでをします。インサイドセールスがそのまま商談を担当する場合も多いですが、企業によってはフィールドセールスに受け渡す場合もあります。

商談では、顧客の状況を『BANT』に沿ってヒアリングするとよいでしょう。BANTとは、『Budget』(予算)、『Authority』(決済権)、『Need』(ニーズ)、『Timeline』(注文時期)を意味し、これらの情報を詳細にヒアリングできれば、クロージングまでのロードマップが立てやすくなります。インサイドセールスはリード獲得からアポイント設定までに留まらず、商談を通して顧客の背中を押し、契約締結まで導くことが求められます。

他の営業職との違い

インサイドセールスは営業職のひとつですが、他の営業職とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは『フィールドセールス』と『カスタマーサクセス』の違いについて解説します。

フィールドセールスとの違い

インサイドセールスとフィールドセールスは、営業スタイルに大きな違いがあります。前述のとおり、インサイドセールスは非対面で営業を行う職種です。一方、フィールドセールスは顧客を訪問して営業活動をするため、対面営業がほとんどです。

フィールドセールスの場合、顧客と直接対話ができるため相手の反応が見えやすく、商談が進めやすいというメリットがあります。しかし、顧客を直接訪問する必要があるため、交通費や移動時間などの営業コストがかかってしまう点がデメリットです。一方、インサイドセールスの場合は顧客とは非対面で対話するため、フィールドセールスほど顧客との関係性を築きにくい可能性があります。しかし、基本的に社内で営業活動が完結するため、交通費や移動時間などのコストがかからない点がメリットと言えます。

カスタマーサクセスとの違い

インサイドセールスとカスタマーサクセスは、どちらも非対面営業という共通点がありますが、携わる営業プロセスと役割に大きな違いがあります。

カスタマーサクセスの場合、既に取引のある顧客を相手に良好な関係を維持し、離脱防止や新規契約の獲得などが主な仕事内容です。そのため、見込み顧客の獲得や新規顧客とのアポイントを設定することはほとんどありません。一方インサイドセールスは、契約がない顧客に対してアプローチをし、アポイントの獲得や契約獲得を目指す職種です。契約が獲得できたら、その後はカスタマーサクセスに引き継ぐケースがほとんどのため、関わる営業プロセスと役割に相違点があると言えます。

インサイドセールスはなぜ需要が高い?

インサイドセールスは、近年需要が高まっている職種のひとつです。ここでは、インサイドセールスの需要が高い背景やその理由について解説します。

サブスクリプションモデルの増加

サブスクリプションモデルとは、月や年単位などの決まった期間に対して料金を払うことで利用が可能なサービスを指します。買い切り型である従来のビジネスモデルとは異なり、商品やサービスの導入費用がかからず、顧客にとって導入リスクが低いことが特徴です。

商品やサービスを販売する企業にとって低価格で商材を提案できるため、従来の営業よりも契約が獲得しやすくなるでしょう。その分、顧客にとっては利用する障壁が低いと言えるため、提案できる顧客が増えて顧客対応が非常に多くなることが想定されます。

上記のようなサブスクリプションモデルの特性を踏まえると、インサイドセールスの営業手法が最も適していると言えるでしょう。

The Model 型の営業組織の注目

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、リモートワークの導入や働き方の見直しが加速し、『 The Model 』型の営業組織が注目を集めるようになりました。The Model とは分業された営業活動を指し、リードの獲得から受注、契約後のサポートまで、営業活動の一連業務をプロセス毎に切り分けて専任の部門を設けます。

これまでの営業活動は、顧客獲得から契約後のフォローまで全ての業務を1人の営業が担当することが一般的でした。しかし、営業プロセスの可視化が困難で適切に顧客管理ができないことや、業務が属人化し作業効率が悪いなど、課題が多くありました。

The Model の営業組織であれば、各プロセス毎に担当部門が存在し、狭く深く顧客にアプローチできるため、従来に比べて効率的かつ効果的な営業活動が可能になります。リード獲得から受注までを担当するインサイドセールスは、このような営業スタイルの変化により注目を受けていると言えます。

インサイドセールスの市場価値が高い理由

ここでは、インサイドセールスの市場価値が高い理由を3つ解説します。

営業スタイルの変化

新型コロナウイルス感染拡大によって、取引先に訪問して対面営業することが困難になりました。そのため、直接対面せずとも顧客と良好な関係を築き、自社の商品やサービスを売るインサイドセールスが注目を受けています。

さらに前述のように、より効率的かつ効果的な営業活動を求めて、各営業プロセスを分業化する営業スタイルが主流になりつつあります。インサイドセールスは交通費や移動時間などのコストがかからず、見込み顧客の獲得から育成、受注までに特化した職種であるため、市場で重宝されるポジションと言えるでしょう。

非対面の営業力が求められている

従来の営業は顧客と対面でコミュニケーションが取れるため、相手の表情や状況の判断がしやすく、会話のテンポも掴みやすいといった特徴がありました。しかし、非対面の営業はオンライン画面越しの会話で非対面ならではの難しさがあるため、インサイドセールスで培ったスキルや経験は大きな強みとなるでしょう。

求人倍率が伸びている

インサイドセールスは近年特に需要が伸びており、約3年間で求人倍率が12倍に増加していることが分かっています(出典:dodaの求人数)。コロナ禍の営業スタイルの変化が大きく影響しており、新時代の営業職として今後も積極的に求人募集がされるポジションとなるでしょう。

関連記事:インサイドセールスはいいことばかりではない?辛い、大変と言われるインサイドセールスの仕事内容について解説

インサイドセールスの今後はどうなる?

少子高齢社会や人口減少による人材不足が重要な社会課題と謳われる中、インサイドセールスは効率的な営業活動で人員の削減が可能です。そのため、インサイドセールスの需要は今後もさらに伸びていくと考えられます。

さらに、コロナ禍のリモートワーク導入や働き方改革によって、働き方の多様性が求められる時代となりました。インサイドセールスは、顧客と直接会うことなく電話やメールなどで営業活動が完結するため、多様な働き方を実現できます。インサイドセールスはまさに時代の変化にマッチした職種であるため、インサイドセールスの導入が企業にとって、人材不足などの課題の打ち手にもなるでしょう。

インサイドセールスの年収

インサイドセールスの年収は、企業やポジションによって異なりますが、300〜700万円程度と言われています。前職で営業経験があり高い成果を出していれば、企業から高く評価され平均よりも高い年収を提示してもらえる可能性もあります。さらに、企業によってはインセンティブ制度を導入している場合もあり、成績が良ければその分高年収が期待できるでしょう。

インサイドセールスは、年収が高い職種とは言えませんが、仕事の中で営業経験だけでなく管理能力や企画力などが身に付くため、スキルアップできれば高年収の求人に転職することが可能です。また、マネジメント職を経験すれば、年収1000万円を超える可能性も十分に考えられます。

インサイドセールスに転職するには?

インサイドセールスに転職するにはどのような能力が求められるのでしょうか。ここでは転職するために必要な能力や経験について解説します。

コミュニケーション能力

インサイドセールスには、高いコミュニケーション能力が求められます。非対面で電話やメール、Web会議ツールなどを活用した営業活動を行うため、対面でのコミュニケーションがほとんど発生せず、声や文字からの情報だけで相手のニーズを引き出し、こちらから必要な情報を伝える力が必要です。

さらに、インサイドセールスは1人では営業活動が完結しないため、マーケティングやカスタマーサクセスなどの他部署との連携が多い職種でもあります。その際、顧客のニーズや課題をしっかりヒアリングし、適切かつ正確に社内で情報共有をする必要があるため、相手に分かりやすく伝える力も求められる職種です。

情報管理能力

インサイドセールスでは、リード顧客の選定から獲得、リードナーチャリングまで多数の顧客情報を扱う仕事です。集まった情報を整理して優先度付けし、タイミングを見計らってアプローチして商談設定や受注に繋げる必要があります。

せっかく集めた見込み顧客情報が管理できておらず、アプローチのタイミングを見誤れば、アポイントの獲得は難しいでしょう。そのため、インサイドセールスとして成果を出すには、情報管理能力が必要です。

顧客データ管理にはSFAやCRMツールを活用する企業が多いです。よって、PCやツールの活用スキルも求められる能力のひとつと言えます。

関係構築力

インサイドセールスにとって、関係構築力はアポイント獲得や受注に大きく影響を与える能力と言えます。

まだ取引のない顧客と継続的なコミュニケーションを図りながら、顧客の状況やニーズを把握する必要があります。場合によっては、商品やサービスと関係のない話であっても、相手の声に耳を傾けて丁寧にヒアリングすることが重要です。さらに、適切なタイミングで電話やメール、セミナー案内などをして顧客との信頼関係を構築する必要があります。アプローチ頻度が少なすぎると受注の機会を逃す可能性がありますが、逆に頻度が多すぎても相手から敬遠されかねません。

顧客にとって心地の良い会話スピードや話し方、コミュニケーション頻度を意識しながら良好な関係を築くことが、インサイドセールスには重要な能力と言えます。

まとめ

インサイドセールスは、時代の変化に合った注目度の高い職種です。従来の営業手法に比べてより効率的かつ効果的な営業が実現できるため、今後も需要が高まっていくことが予想されます。非対面営業ならではのスキルが求められるものの、接客業などの営業未経験者であっても挑戦しやすい職種です。さらに、営業経験者であれば比較的転職がしやすい職種と言えるでしょう。

<関連記事>