インサイドセールスで効果的なKPIの設定とは?重要性や目的達成のためのポイントを紹介します

インサイドセールスの仕事は、マーケティング部とフィールドセールスを繋ぐ役割を持ち、目標達成に向けた適切なKPIを設定することが非常に重要です。本稿ではインサイドセールスを成功に導くためのKPI項目や重要性、設定のポイントなどについて解説します。

インサイドセールスとは?

インサイドセールスとは、見込み顧客に対してメールや電話、Web会議ツールなどを使って非対面で行う営業活動のことで、『内勤営業』や『リモートセールス』とも呼ばれています。近年は新しい営業手法としてインサイドセールスへの注目度が高まっており、新型コロナウイルス感染症の影響も後押しとなって導入した企業も多いでしょう。

インサイドセールスの仕事内容は、主に商談化する前の営業活動です。リモートのためスピード感を持って、効率的に多くの見込み顧客と接触し、関係を構築します。そして、インサイドセールスの最終目標である、見込み顧客の育成をします。一方、顧客と密に連絡を取り合う具体的な商談には不向きであるため、見込み顧客とのやりとりが商談化したら、その後の対応はフィールドセールスへ引き継ぎます。インサイドセールスが顧客のニーズをどこまで引き出せるかが、その後の商談成約に繋がる確率に大きく関わります。

一般的に、営業活動は大きく3つのフェーズに分けられ、それぞれ役割が異なります。
①マーケティング:見込み顧客を創出し、新たな接点を作る
②インサイドセールス:見込み顧客を育成し、案件化する
③フィールドセールス:商談を進め、受注する

インサイドセールスの役割は、マーケティングで獲得した見込み顧客を育てることです。営業活動を3つのフェーズに分担することで各業務の進行がスムーズになるとともに、フェーズごとに最適な顧客対応をすることで、案件単価や成約率の向上が期待できます。

インサイドセールスの主な業務は下記の3つです。
・見込み顧客の育成
『リード』と呼ばれる見込み顧客に対し、電話やメールで定期的にコンタクトをとり、商談の機会をうかがいます。近年では『リードナーチャリング』と呼ばれる見込み顧客の育成に関するノウハウも広く知られるようになってきました。

・リサイクルリードとの関係構築
初回の商談がうまくいかなかった場合でも、継続的に営業をかけることで後々商談獲得に至る可能性があります。そのような、一度失注しても受注の可能性がある見込み顧客を『リサイクルリード』と呼び、インサイドセールス部門はリサイクルリードに対して、関係を持ち続け顧客との関係を構築し、顧客にとって最適なタイミングでアプローチを行います。

・新規営業
インサイドセールスは顧客との関係構築が重要とされているため、インバウンド営業がメインと思われがちですが、戦略的にアウトバンド営業を行うケースもあります。これはBDR(Business Development Representative:新規開拓型アウトバンド)と呼ばれる役割で、営業リストから代表電話へアプローチしたり、重要人物に手紙を送ったりすることもあります。

BDRと似た役割としてSDR(Sales Development Representative:反響型インバウンド)というものもあります。SDRとBDRは、企業規模によってアプローチ方法を変えるのが大きな特徴です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

SDRとは『Sales Development Representive』を略したもので『反響型』とも呼ばれています。SDRは、SNSやブログなどの自社コンテンツを活用するインバウンドマーケティングによって獲得した見込み顧客の案件化を目指す役割です。インバウンドマーケティングで獲得した見込み顧客は、自社のコンテンツを見た上で資料請求や問い合わせをしてきているため、既に商品やサービスへの知識があると思われます。そのため、SDRでは自社に興味がある見込み顧客の熱が冷めないタイミングで、コンタクトを取ることが求められます。
SDRは、意思決定プロセスや商談サイクルが短いため、多数の見込み顧客にアプローチしたい時に有効です。単価が低いため、案件の継続率が低いという課題があります。そのため、多くの顧客を獲得したいケースに活用するのが適切で、顧客が中小企業の場合に大きな効果を発揮します。

BDRとは、『Business Development Representative』の略で、『新規開拓型』とも呼ばれています。始めからインサイドセールスと営業チームが協力してターゲット設定を行います。事業規模や相性を考慮し、幾つかの区分に分けてアプローチするのが特徴です。
BDRはSDRと異なり、マーケティングで見込み顧客の情報を収集するのは難しいため、まずマーケティングからスタートします。そのため、SDRのように短期間で成約まで繋げることは難しく、商談が長期化しやすくなります。1件にかける時間が長くなるため、顧客との信頼関係を築きやすく、単価や顧客の継続率、拡大提案率が上がりやすいのがメリットです。BDRは顧客としっかり関係を構築し、大きな案件を提案していく活動なので、大企業に対して効果を発揮しやすいです。

このようにインサイドセールスは企業規模によりアプローチ方法が異なります。
インサイドセールスを導入するメリットは、営業活動の効率化、営業範囲の拡大、コスト削減などが挙げられます。インサイドセールスは省コストでより多くのチャンスを創出できる点と言えるでしょう。
デメリットとしては、適切に運用できる組織体制づくりが求められる、非対面のため信頼されるのが難しいなど、組織や人員に力が求められる点が挙げられます。適切にインサイドセールスを運用するには、人員や時間を割いてでも、万全な組織体制を整える必要があるでしょう。

インサイドセールスがKPIを設定する目的

KPIとは
KPIとは『Key Performance Indicator』の略で、日本語では『重要業績評価指標』や『重要達成度指標』と呼ばれています。言葉から分かるように、目標達成のための各プロセスにおいて、達成度合いの計測と評価をするための指標です。最終目標の途中に設定された中間目標を数値で表したものと考えるとわかりやすいでしょう。インサイドセールスにおいても、評価指標としてKPIが用いられます。

インサイドセールスにおけるKPIの重要性
インサイドセールスを評価する上で、KPIの設定は非常に重要です。KPIが適切に設定されていないと、自社のインサイドセールスの効果測定を適切に行えず、非効率な運用を続けることになります。結果的に、費用対効果の低い施策を行うことになり、改善が期待できずにインサイドセールス部門のコストが営業活動の負担になるでしょう。このような事態を避けるために、適切なKPIを設定し、現状を可視化することが重要です。

インサイドセールスで設定される代表的なKPI指標
カ前述したをSDRとBDRのそれぞれに対して、インサイドセールスで設定する代表的なKPIを挙げます。業種や業態、目標、営業方針によって設定すべきKPIは異なりますが、下記を参考にして、自社に適したKPIを見つけてみてください。

■SDRのKPI項目
①フォローアップ数
フォローアップ数とは、電話やメールなどで見込み顧客に対して接触した回数のことです。見込み顧客1社に対して、電話、メール合わせて合計3〜5回程度のフォローが一般的とされています。
特にSDRの立ち上げ期には、チームや個人のパフォーマンスがどの程度なのか、実施を把握するためにも行動量が必要です。フォローアップ数を行動指標におくと良いでしょう。

②着電数、着電率
着電数とは、フォローアップの結果、見込み顧客へ電話が繋がった数のことを指します。
この場合、電話だけが有効な手段という訳ではありません。業種、業界によってメールやSMSの方が繋がりやすいなどの傾向があります。見込み顧客が所属する業界の特性に合わせて、着電率の高いツールや時間帯を模索します。

③有効会話数
有効会話とは、見込み顧客へコンタクトを取った結果、顧客の課題感や興味についてヒアリングできた状態を指します。着電したものの、手が離せないなどの理由で具体的な話ができなかった場合は有効会話ではないと判断します。有効会話ができるかどうかは、架電したタイミングの顧客の状態にもよるため、有効会話率をKPIとして追うのはあまり意味がないという意見もあります。有効会話数を厳しく追う必要はありませんが、あまりに少ない場合は架電する時間やアプローチする内容を変更してみましょう。

④商談化数、商談化率
商談化数とは、商談(アポイント)を獲得した数のことです。企業によってアポ獲得数やアポ件数など、呼称が変わりますが、全て同義として捉えてください。十分に育成された見込み顧客へ実際に商品やサービスの購入を促すためには、インサイドセールスのアプローチによって、営業部門との商談を取り付ける必要があります。そのため、マーケティング部門から渡された見込み顧客をどの程度の割合で商談化して、営業部門へ渡せたのか、という観点はインサイドセールスにとって重要な評価指標になります。

⑤有効商談数、有効商談率
SDRの最も重要なKPIの一つと言えるのが有効商談数です。これはフィールドセールスが実際に商談した結果、受注に繋がる見込みがあると認定できた商談のことです。SDRが商談化数を追うあまり、たくさんの無効商談をフィールドセールスへパスしてしまうと、受注に繋がらない商談が増え、営業生産性を下げる原因となります。有効商談の条件をフィールドセールスと話し合いながら協業していくことが大切です。

■BDRのKPI項目
①ターゲットリストの作成
ターゲットとは、BDRでアプローチをかける人物のことを指します。多くの場合、BDRのターゲットとなるのは高額な受注金額を見込める大手企業の役職者となります。自社の商談価値を発揮できそうな企業を見極め、その中でもアプローチに適した特定の人物をリストアップします。ターゲットリストの数は多ければ良いというわけではなく、1件ずつの確度が高まるように精査したリストを作成することが重要です。過去に受注した顧客の分析、類似サービスの事例などからアプローチすべき業界や企業、部署、役職の特定を行い、リストの精度を高めることが求められます。

②フォローアップ数
フォローアップ数とは、電話やメール、DM、手紙などで見込み顧客にアプローチした回数のことです。フォローアップ数はあくまで行動指標と捉え、マネジメントに役立つ参考値として扱います。BDRの場合、ターゲットに繋がる個人アドレスや電話番号がわからないことも多く、その場合は手紙やDMが適切に送られているかなどを確認します。

③ターゲット接続数、接続率
ターゲット接続数とは、ターゲットと連絡が取れた件数のことで、着電数やDM返信数、メール返信数などを指します。BDRの場合、初回連絡で商談が進むことが少ないため、案内するコンテンツを工夫して、フォローアップに対するターゲット接続率を高める必要があります。アプローチする業種やターゲットによって異なりますが、対象者が大手企業の社長や役員の場合、そもそも接続できる可能性は低いため注意する必要があります。
まずは役員限定の勉強会やイベントを開催することから始めるなど、マーケティング部と協力しながら、大手企業の役職者が関心を寄せるテーマの取り組みを検討してみましょう。

④有効リード獲得率
有効リード数とは、顧客が連絡を受け取り、かつ今後の営業活動について承諾が得られた段階で用いるKPIのことで、パーミッション獲得率とも言われます。注意したいのは、有効リード数は単純な連絡先の獲得や接続ではないことです。見込み顧客と接続できても、全く興味がない相手に対して合意がないまま営業活動を行うのは押し売りと思われてしまうかもしれません。

⑤商談化数、商談化率
商談化数、商談化率は、BDRの最も重要なKPIの一つです。自社と相性の良い業界の役職者など、精査したターゲットリストから商談を創出できれば、SDRよりも受注確度の高い有効商談になるケースが多いでしょう。ただしターゲットリストの作成から始める必要があるため、商談化までの期間はSDRより長くなります。商談化までに1〜2年かかることも珍しくないため、BDRの立ち上げ期は達成が難しい目標であることは理解しておく必要があります。

インサイドセールス組織のフェーズに合わせたKPIの選定

インサイドセールス組織の中で設定するKPIは常に一定ではなく、初期、中期、後期の3つのフェーズを経て変化します。ここでは、それぞれのフェーズに設定すべきKPIを紹介します。

初期:商談獲得率
インサイドセールスの立ち上げ期には、商談獲得数が最も重要なKPIとなります。立ち上げ初期は効果測定や分析のために必要なデータが不十分なため、まずは商談の量を増やすことに専念すべきでしょう。本来であれば、確度の高い見込み顧客に絞り込んでコンタクトを取ることが理想ですが、初期の段階では確度の低い見込み顧客も含めて営業部門に渡し、フィードバックを得ることでデータを蓄積することも一つの手です。

中期:ホットリードの分析
インサイドセールスを立ち上げ後、業務フローが安定して一定数の商談を獲得できるようになったら、ホットリードの分析に注力します。これまでは確度の低い見込み顧客にも営業をかけてきましたが、中期以降は確度の高い見込み顧客に絞り込んで営業をかけていきます。ホットリードを分析するための情報は、業種、業態、企業規模や属性、検討理由といった情報が一般的です。

後期:成約数
インサイドセールスの立ち上げから十分な時間が経ち、商談化率も70〜80%程度に成熟した段階で重視すべきKPIは成約数です。インサイドセールス部門が成熟すると、成約数を増加させるために打ち出せる施策も豊富になります。また、成約数にこだわることは、担当者の更なるスキルアップに繋がるでしょう。

インサイドセールスの効果を最大化するKPI策定のポイント

ここからはKPIを策定する際のポイントを紹介していきます。失敗を回避するポイントと合わせて抑えましょう。

①数値と意図をセットで共有する
KPIをチームメンバーに共有する際は、数値のみを伝えるべきではありません。KPIを単なる『数字』として扱うのではなく、なぜこの数字を追う必要があるのか『意図』と共に伝えることが大切です。数値だけの目標よりも、論理的なストーリーがある目標の方が、その目標を達成する意義をメンバーが直感的に理解しやすくなります。なぜその数値を達成する必要があるのかを伝える努力を怠らず、チーム全体で共通認識を持てる工夫を施すことが、KPIを形骸化させないポイントです。

②SMARTの法則を意識する
KPIを設定する際によく使用される『SMARTモデル』を意識することも大切です。
Specific=明確である
Measureble=測定可能
Achievable=達成可能なものにする
Related=関連性がある
Time-bound=適時なものである
この5つの要素に当てはまるKPIを設定することで、組織への効果を最大化できるとされています。

③単純明快なKPIにする
多くの要素が含まれた目標は実行しにくく、達成率を下げてしまう恐れがあります。評価基準も複雑化しやすく、生産性の低下を引き起こします。抽象的な目標設定も同様です。スタートからゴールまでが一貫しているシンプルなKPIの設計を心がけ、誰でも理解できる枠組みの構築を意識しましょう。

④ITツールを活用する
効果的なKPIを設定するためには、現状を正しく把握、分析することが不可欠です。CRMやSFAは、新規受注、既存顧客への営業活動など、あらゆるデータを管理できるため、営業活動の見える化に繋がります。売上にまつわる様々なデータを一元管理するCRMやSFAを用いることで、KPIの分析が容易になり、管理負荷も格段に減少するため、KPIの設定、運用を無理なく継続できるでしょう。

KPI設定後の振り返りと改善方法

KPIは設定して終わりではなく、スムーズに進行しているか進捗を確認し、問題が発生した場合には適宜、対応していく必要があります。ここからは、KPIを運用した後の振り返りポイントや、改善方法を紹介します。

顧客と深い関係性を構築する
顧客とのコンタクトは取れているのに、なかなか商談に繋がらない場合や、商談に進んでも受注に繋がらない場合、見込み顧客との関係構築がうまくいっていない可能性があるでしょう。
まだ検討段階で顧客の購買意欲が高くないフェーズであれば、事例集やホワイトペーパーを送ったり、メルマガで定期的な情報提供をするなど、購買意欲や認知を高めるための継続した取り組みが必要です。顧客が既にサービスの比較、検討段階にあるにも関わらず商談化できないということであれば、トークスキルの低さや提案内容のミスマッチなどが考えられます。実績のあるメンバーなどからトークスキルやトークステップを分析し見直してみましょう。
インサイドセールスチーム全体の商談化数が伸び悩んでいる場合は、まず顧客へのヒアリングの仕方から見直しをしていき、顧客のニーズをきちんと把握できているかを検証します。
特に、検討段階の顧客はまだ自社の課題をうまく言語化できていないことも多いため、こちらから課題を尋ねても、はっきりとした回答が得られないこともあるでしょう。インサイドセールスが顧客と一緒に課題を導き出し、ニーズを顕在化させて商談に繋げ、顧客からの信頼を醸成する必要があります。。

ノウハウを共有できる仕組み作り
日々の業務で社員が培ったノウハウを十分に発揮するためには、社内でノウハウを共有できる仕組みづくりが重要です。自身の経験やスキルを分かち合える場を設けることで、業務効率の向上や、組織全体のスキルの平準化に繋がります。

インサイドセールスの育成環境を整える
インサイドセールスはまだ新しい職種のため、経験者が少ないのが現状です。そのためインサイドセールスの育成環境を整えることが重要になります。新たにチームに参加した従業員が活躍しやすい環境を整えることは、インサイドセールスが安定的に成果を上げ続けるために必要不可欠です。CRMやMAツールを導入することでデータやノウハウを蓄積できるようにしたり、社員同士のコミュニケーションが活発になるなどチームを成長させることに繋がるでしょう。

インサイドセールスと営業部門の連携強化を図る
インサイドセールスと営業部門の連携強化を図ることで、より効果的に見込み顧客へのアプローチが可能になります。また、情報伝達ミスによる顧客の信頼低下も防止できるでしょう。インサイドセールスと営業部門が情報を連携できていないと、既に失注した見込み顧客にインサイドセールスが再びコンタクトをとってしまったり、成長した見込み顧客に営業をかけられないまま放置されてしまったりする可能性があります。このような事態を防ぐには、両部門の連携を強化し、風通しの良い環境を整えることが大切です。

ターゲットと自社商材の整合性をとる
顧客との関係性を十分に構築できていて、接続数も確保できているのに売上に繋がらない場合は、ターゲットと商材の整合性が取れていない可能性があります。多くの見込み顧客にアプローチし、自社への信頼が高まっていると実感できる見込み顧客が増えてきているにもかかわらず、売上が伸び悩んでいる場合は、ターゲットの設定を見直してみましょう。ターゲットを見直すことで、状況が大きく改善する場合があります。
商材の訴求の仕方が適切でない場合や、商材そのものがターゲットのニーズにフィットしていない可能性も考えられます。その場合はターゲットの見直しではなく、商材の価格や内容、トークスキルを見直す必要があるでしょう。さまざまな観点から複合的に原因を探り、見直していく必要があります。

まとめ

インサイドセールス部門にとって適切なKPIの設定は非常に重要です。今回紹介したKPIの他にも様々なKPIが存在し、自社の目的や状況に合致したKPIを設定することが求められます。他社のKPIや運営方法の真似をするだけではなく、まずは自社の状況や課題を洗い出し、自社ならではのKPIの設定と運営ができるよう分析していきましょう。