営業にも必要なマーケティングスキルとは?営業からキャリアチェンジはできる?

営業職は直接顧客と向き合い、その活動が自社の利益に直結するポジションです。営業職として活躍するには、コミュニケーションスキルだけではなくマーケティングスキルを持つことで、より説得力のある商談が実現できるでしょう。ここでは、営業職とマーケティング職の違いや、営業でも必要なマーケティングスキル、営業職からマーケティング職へのキャリアチェンジについて解説します。

営業職とは?

営業職とは自社の製品やサービスを顧客に販売する職種です。営業のKPIとしては、商談数、新規契約数、売上高などが設定されます。営業職の仕事内容は、市場のリサーチ、顧客へのアポイント、商談、見積もり作成、受注対応、契約後のアフターフォローなど多岐に渡ります。会社の顔として顧客と向き合うため、自社の製品やサービスを契約・購入してもらうための気持ちの良いコミュニケーションが求められます。それには、コミュニケーション能力だけではなく、顧客の課題を引き出すヒアリング力や的確に顧客の課題を解決に導く提案力が必要です。
また、営業といっても新規顧客を開拓する『新規営業』、既存顧客の対応をする『ルート営業』、テレビやラジオ、インターネットなどのメディア広告宣伝に対しての問い合わせに応じる『反響営業』など、さまざまな手法があります。近年では、見込み客に対して電話やメールなどで営業を行う『インサイドセールス』も効率的な営業活動として注目を集めています。

マーケティング職とは?

マーケティング職とは、社会や顧客のニーズを汲み取り、自社の製品やサービスの販売を促す仕組みをつくる職種です。マーケティングには、新商品を生みだすための市場調査、企画立案、プロモーション計画など幅広い活動が含まれます。

マーケティングの種類には、テレビや新聞、ラジオなどのマスメディアを利用して告知を行う『マスマーケティング』や、WebサイトやWebサービスを利用して自社製品の認知や購入を促す『Webマーケティング』、ソーシャル・メディア・ネットワーク(SNS)を利用して、見込み顧客との接点を持つ『SNSマーケティング』などがあります。他にも、見込み顧客の顕在化している課題に対して、その解決方法を提示することで自社製品やサービスの購買意欲を促進する『コンテンツマーケティング』、ターゲットに影響力のある著名人などに自社製品やサービスを紹介してもらう『インフルエンサーマーケティング』など、細かく分類されます。

それぞれの領域で高い専門性が求められるため、会社によっては各マーケティング施策ごとに専門のマーケターを置く場合もあります。マーケティング職では、データ分析をして仮説を立てる論理的な思考力と、その仮説を部署で連携して実行するためのコミュニケーション力の両立が求められます。

営業職とマーケティング職の違い

では、営業職はどのような能力があると良いのでしょうか。ここでは営業職に必要な4つのスキルと、その内容について説明します。

ヒアリング力

顧客のニーズや課題を的確に引き出すヒアリング力は、営業にとって最も重要なスキルの1つです。顧客からのヒアリングで得た情報は顧客のニーズに沿った提案をするための材料になります。つまり、十分なヒアリングが受注率アップを導くのです。ヒアリングのコツは、文字通り『聞き役に徹する』ことです。営業は自社製品やサービスの紹介を上手にプレゼンするトーク力が注目されがちですが、​​相手の言葉にしっかりと耳を傾け、何を必要としているかを見極める傾聴力こそが成功の鍵になります。

コミュニケーション力

誠実なコミュニケーションは、相手の信頼を獲得し、受注や契約後の良好な関係構築につながります。見込み顧客に対してすべての要望を飲み込む必要はありません。むしろ相手の要望に対し、『できる』『できない』をはっきりと伝え、できない場合は代替案を提示するなど、相手の目線に立った嘘のない対応によって信頼度が高まります。

行動力

営業職には、顧客や情報に自らアプローチしていく能動的な姿勢が求められます。積極的に顧客と接点を持つ行動力に加え、自社の商品知識や業界のトレンドを自発的にキャッチし、学びを深める行動力も営業職としてのスキルアップに欠かせません。迅速かつ適切な行動力を身に付けるためには目標設定がポイントになります。目標達成までのアクションを洗い出し、必要な行動を明確にすると、次にやるべきことに対する迷いがなくなるでしょう。

ポジティブ力

新規アポイントメントがとれなかったり、時間をかけた商談が頓挫したりと、営業職に失敗や挫折はつきものです。そんなときは必要以上に落ち込まず『次は相手の話を注意深く聞くようにしよう』『言い回しを変えてみよう』など、気持ちを切り替えるポジティブ力が営業職には不可欠です。ストレスやプレッシャーを抱え込まず、前向きな思考を意識しましょう。

営業でも必要なマーケティングスキル

営業職とマーケティング職は、仕事内容や目的が異なります。とはいえ、マーケティングの知識や経験は営業する上でも有効なスキルです。ここでは、営業でも必要とされるマーケティングスキルについて説明します。

分析力

営業で最も重視するマーケティングスキルに分析力が挙げられます。顧客の見込み度合いや、受注確度の判断に役立つスキルです。営業は顧客の課題を把握し、適切な提案をしなければなりません。さらに、顧客自身が気づいていない課題を抱えている場合があるため、潜在的な課題を引き出し、サービスがどのように課題解決に寄与するかを分析した上で顧客に提案することで、受注や購入の可能性が高まります。
分析をする際は以下で紹介するフレームワークを利用すると良いでしょう。ここでは一般的なマーケティングで使われる4つの分析方法を紹介します。

3C分析

3C分析とは、事業が成功するかどうかのマーケティング戦略を考えるときに用いるフレームワークです。マッキンゼー・アンド・カンパニーの元日本支社代表であり、経営コンサルタントの大前研一氏が考案しました。3Cとは、『Customer(市場・顧客)』『Competitor(競合)』『Company(自社)』の頭文字で、これら3つのCを掘り下げて、​​自社の強みと弱みを分析します。

3C分析

3C分析とは、事業が成功するかどうかのマーケティング戦略を考えるときに用いるフレームワークです。マッキンゼー・アンド・カンパニーの元日本支社代表であり、経営コンサルタントの大前研一氏が考案しました。3Cとは、『Customer(市場・顧客)』『Competitor(競合)』『Company(自社)』の頭文字で、これら3つのCを掘り下げて、​​自社の強みと弱みを分析します。

3C分析

3C分析とは、事業が成功するかどうかのマーケティング戦略を考えるときに用いるフレームワークです。マッキンゼー・アンド・カンパニーの元日本支社代表であり、経営コンサルタントの大前研一氏が考案しました。3Cとは、『Customer(市場・顧客)』『Competitor(競合)』『Company(自社)』の頭文字で、これら3つのCを掘り下げて、​​自社の強みと弱みを分析します。具体的には、『Customer(市場・顧客)』は市場規模や成長性やターゲット像、『Competitor(競合)』は競合企業のシェアや顧客数、価格帯、『Company(自社)』では自社の特徴などを分析します。3C分析で顧客のニーズに対して競合よりも優位な部分を見つけ出し、自社の商品の強みを生かした上で市場に投入することで、効率的なマーケティングが可能になり、事業が成功に近づきます。

4P分析

4P分析とは、『どのような自社製品やサービスを』『どのような価格で』『どのような場所で』『どのようにアプローチして』販売するかのマーケティング戦略を立案するためのフレームワークです。アメリカのマーケティング学者エドモンド・ジェローム・マッカーシー氏が1960年に『ベーシック・マーケティング(Basic Marketing)』という著書の中で提唱しました。4Pは『Product(製品・サービス)』『Price(価格)』『Place(流通)』『Promotion(販促活動)』それぞれの頭文字を表しています。具体的には、『Product(製品)』は製品やサービスのコンセプト、『Price(価格)』は顧客層をふまえた価格設定、『Place(流通)』は顧客に合わせた販売経路、『Promotion(販促活動)』ではターゲットに最適化した販売促進方法などを検討します。4つのPではそれぞれの要素の整合性を考慮し顧客が満足する商品やサービスを目指します。富裕層向けの商品なのに、販売経路が価格を抑えた商品が数多く並ぶディスカウントストアに設定されている場合、4Pの整合性がとれていないため、利益を上げることは難しいでしょう。製品・サービスのコンセプトに合わせ、価格帯、流通、販促活動も一貫した理念を持つマーケティング戦略を立てられるかどうかが、製品やサービスの売り上げに大きく影響します。

PEST分析

PEST分析とは、企業が統制できない外部環境(マクロ環境)を分析するフレームワークで、アメリカの経営学者でマーケティングの第一人者でもある、フィリップ・コトラー氏が提唱したものです。PESTは、『Politics(政治)』、『Economy(経済)』、『Society(社会)』、『Technology(技術)』それぞれの頭文字を表しています。具体的には、『Politics(政治)』は法律・政策、国内外の政治動向、『Economy(経済)』は、景気・消費動向、雇用情勢、物価変動、『Society(社会)』は人口動態、流行・ライフスタイルの変化、世論、教育制度、『Technology(技術)』はクラウド化、ビックデータやAI、ITインフラなど開発技術を分析します。事業の成功を得るためには、社会のトレンドや変化を把握し、自社の組織や製品を時代に合わせて変化させていく努力が必要です。そのために外部環境を理解して、自社への影響を鑑みるためにPEST分析が役立ちます。PEST分析によって、自社が参入しやすい市場や参入手段、予見できる問題への対策を考えられるのです。

SWOT分析

SWOT分析は、自社を取り巻く外部環境と、自社の資産やブランド力などの内部環境をプラス面とマイナス面に分類し、現状を分析するためのフレームワークです。カナダの経営学者のヘンリー・ミンツバーグ氏が提唱した理論をもとに、ハーバードビジネススクールの教授のケネス R. アンドルーズ氏が完成させたと言われてます。SWOTは、『Strengths(強み)』、『Weaknesses(弱み)』、『Opportunities(機会)』、『Threats(脅威)』それぞれの頭文字を表しています。SWOT分析する際は、以下の図のようなマトリクスを準備し、内部環境と外部環境、それぞれのプラス面とマイナス面に要素を入れ込んでいきます。

マトリクスが埋まったら要素同士を掛け合わせたり脅威を予測したりすることで、強みを最大化する施策を考えます。SWOT分析で市場におけるチャンスや自社の課題が整理できるため、客観的かつ精巧なマーケティング戦略を立てられます。

企画提案力

分析した顧客の課題や状況から、自社の製品やサービスがどのように課題解決に有効かを、顧客に提案する企画力も営業に必要なマーケティングスキルの1つです。企画提案力には、簡潔にまとまった資料作成スキルや、説得力のあるプレゼンテーションスキルが含まれます。的確な分析ができていても、顧客が納得する提案ができなければ、受注は実現できません。いかに自社のサービスが顧客の課題解決に有効か分かりやすく伝えることが、より効率の良い営業活動につながります。

情報収集力

ヒアリングを通して顧客の情報を把握したり、市場の流れやニーズを汲み取ったり、リアルタイムで情報を収集したりするスキルは、営業職にもマーケティング職にも共通するスキルです。情報収集力には、商談中に顧客から情報を引き出すヒアリング力と、知識の引き出しを増やすための良質なインプット力の2つのスキルが必要です。新聞やインターネット、業界に詳しい人物の話など、信頼ができると判断した有益な情報のインプットは、顧客への精度の高い提案に反映されます。しかし、情報収集はあくまで手段です。社会に溢れるあらゆる情報の中から、自分が必要な情報を取捨選択し、何のために情報収集をするのか目的を持ちましょう。

営業からマーケティング職にキャリアチェンジできる?

営業職からマーケティング職へのキャリアチェンジは、共通するスキルがあるため可能と言えます。営業職の中でも営業企画やカスタマーサクセスは、マーケティング職に近い業務が多く、かつ営業経験を活かせる職種です。
営業企画は、市場動向や社会のトレンドなどさまざまなデータを収集・分析して、営業戦略を企画する仕事で、営業職に比べてより綿密な分析力が求められます。カスタマーサクセスは、​​​​顧客のビジネスの成功のために、自社の製品やサービスを最大限に活用できるよう顧客を支援するポジションです。顧客の課題を引き出すヒアリング力や、自社の製品やサービスを使って課題解決に導く提案力が営業職以上に求められます。また、カスタマーサクセスの仕事は、​​製品開発チームやマーケティング部門などを他部門と連携するため、コミュニケーション能力も必要です。営業で培った分析力やヒアリング力、コミュニケーション能力は、営業企画やカスタマーサクセスにキャリアチェンジした際の即戦力となり得ます。

まとめ

営業職とマーケティング職は目的や役割が異なります。部署間の連携を深めることで、自社の利益向上につながるでしょう。また、営業職とマーケティング職には共通するスキルもあるためキャリアチェンジは不可能ではありません。これまでの経験や、自身の希望に合わせて、今後のキャリアプランを考えてみましょう。

<関連記事>