MRRって何?SaaSビジネスのKPI、重要指標について解説!

本記事では、SaaS(Software as a Service)の重要指標の一つであるMRR(Monthly Recurring Revenue)や、その他のSaaSに関連する指標について解説します。IT技術の発展により、SaaSの進化が目まぐるしくなってきました。この記事を読んでいる方の中には、SaaSやMRRという用語を知らない方もいると思います。今後、より発展するであろうSaaSや、その関連用語について詳しく紹介しますので、是非最後まで読んで知見を深めてください。

MRRって何?

「SaaSは知ってるけど、MRRって何?」という方もいると思います。MRRとは、Monthly Recurring Revenueの略であり、日本語では「月次経常収益」と呼び、月毎に決まって入る利益を表します。その月にだけ発生する利益とは異なるため、注意が必要です。SaaSではSlackやNetflixなどの、サブスクリプション(定期購読)型サービスが多く見られます。そのため、毎月決まって入ってくる利益は企業の存続にとって重要な指標となります。

MRRの計算式は「契約(者)数×サービスの値段」になります。MRRを毎月分析することで、なぜ解約数が増えてMRRが減少したのか・サービスの値段設定は適切か、などが分かるようになります。サブスクリプション型サービスを展開する上で、MRRを分析することは継続的な売り上げを維持するためにも必要不可欠です。

MRRを細分化すると、主に以下の4つに分類できます。
1.新規契約 MRR(新規顧客から得られるMRR)
2.アップグレード MRR(1ヶ月前からサービスをランクアップした顧客から得られるMRR)
3.ダウングレード MRR(1ヶ月前からサービスをランクダウンした損失分のMRR)
4.解約 MRR(その月に解約した顧客から発生した損失分のMRR)

計算方法を同様に細分化すると、
「MRR=前月MRR+新規アップグレードMRR+アップグレードMRRーダウングレードMRRー解約MRR」となります。

ARRとは違うの?

また、SaaSに関連する用語で、ARRという用語も存在します。ARRとは、「Annual Recurring Revenue」の略 であり、日本語では「年次経常収益」を指します。「Annua」は「年間の」という意味であるため、月次を表すMRRとは異なり、ARRは年間の決まった利益を表します。

ARRの計算方法は「月次経常収益×12」となります。MRRに比べてよりマクロな視点で分析することで、売り上げに関する長期的な問題点や課題を見つけることができます。また、1年間同じランクのサービスを使ってくれている顧客に対して、ランクが上のサービスを提案するなど、継続的な利益を生んでいる顧客の単価を上げることにも繋がるデータとなります。逆に、1年間に利用しているサービスのランクを下げてしまった顧客に対して、再度ランクアップしたサービスの利用を促進することも可能となります。つまりARRもMRR同様、SaaSビジネスにおいて重要な指標となることに変わりはありません。

MRRの活用方法

SaaSビジネスを展開する上で、MRRに着目してサービスの良し悪しを分析することはとても重要です。ここからは、MRRの具体的な活用方法を紹介します。

まず、MRRは毎月繰り返し得ることができる売り上げを意味するため、MRRを分析・活用することによって、月毎のサービスの傾向や進捗を理解できます。このようにMRRを有効活用することによって、事業の安定性や成長率を分析できるのです。

MRRのパターンによって得られるメリットは変化するため、それぞれについて紹介します。

新規契約MRRを活用することによって、どのような策を講じた月に、新規顧客を獲得できているかのを明確にできます。反対に、新規契約が少ない月には何か間違った策を打ってしまっているのではないかと仮説を立てることも可能となります。

アップグレードMRRを活用することによって、どのような顧客にどのようなサービスを利用してもらえばランクアップするのかを分析できます。

ダウングレードMRRを活用することによって、アップグレードMRRと同じく、どのような顧客がサービスをランクダウンする傾向にあるのか、どのようなサービスの質であれば、サービスをランクダウンされる恐れがあるのか、などを分析できます。

最後に、解約MRRを活用することによって、どのような顧客がサービスを解約するのか、どのようなサービスであればサービスが解約されにくくなるのか、を分析できます。

このようにMRRを活用すれば、企業はサービスの方向性を定めることができるようになります。

MRRを増やすためには

ここからは、具体的にどのような策を講じればMRRを増やすことができるかを、紹介したMRR別に解説していきます。

新規契約MRRについては、文字通り新規顧客の獲得が必要になります。そのため、サービスを購入するポテンシャルのある顧客を増やす、マーケティングの施策などを考える必要があります。具体的には、広告を打ってサービスの認知度を上げることなどが挙げられます。

アップグレードMRRを増やすためには、顧客単価を上げることが必要です。顧客に、現在利用しているサービスより1ランク上のサービスの利用を促すことを「アップセル」と呼びます。より高額のサービスを利用してもらうためには、サービスをある程度の期間利用してもらい、ファンになってもらっていることが前提となります。サービスを利用し始めて間もないころに高次のサービスを提案されると営業感が強くなってしまい、顧客の不信感に繋がりかねません。そのため、サービスを継続利用していて、満足している顧客に対して提案するのが効果的です。

ダウングレードMRRの数値を改善するためには、サービスのランクを下げてしまった顧客に、サービスが顧客にとって意味ある効果的なサービスだと示すことです。つまり、サービスの質を上げることが求められます。顧客がサービスの質に満足していれば、サービスのランクを下げることは減ります。

また、顧客がサービスのランクを下げる原因として、サービスを上手く使いこなせていない可能性があります。その場合は、顧客がサービスを使いこなせるようにサポートする必要があります。そもそも使い方が分からないままサービスを利用していると、顧客の満足度は下がる一方です。そのため、顧客をアクティブなユーザーにするためにも、積極的にアプローチをかけてサポートを怠らないべきです。そうすることで、サービスに満足してファンになり、継続利用に繋がります。

解約MRRを改善するには、当然ですが文字通り顧客の解約を防止するための対策が必要になります。顧客の解約を防止するためには、上述した通り、ダウングレードMRRの改善と同様の対策が必要になります。サービスに満足していれば解約する確率は下がるため、サービスの質を上げ、サービスを継続利用してもらえるようサポートすることが重要です。

他にもSaaSで使用される指標

ここまで、MRRやARRなどを紹介してきましたが、SaaSで使用される指標は、他にもあります。ここからは、実際によく使われる指標について解説します。

まずは、NRRです。NRRとは、「Net Revenue Retention」の略で、日本語では「売り上げ維持率」を意味します。NRRを分析することによって、1年後の同時期の売り上げ規模がどのくらいに成長しているのかを把握できます。基本的には、NRRの数値が100%を超えていれば、その企業の経営が安定している状態です。

NRRの計算方法は以下のようになります。

「NRR=(当月の合計MRR+ アップグレード MRR + 新規契約 MRR – ダウングレード MRR – 解約 MRR) / 当月の合計MRR」

NRRはMRRと混同されやすい指標ですので、注意が必要です。データの分析をする際に、これらを混同してしまうと知りたい結果も変わってくるため、意味を間違えないようにしましょう。NRRが100%を超えて成長するため、企業はサービスの改善や新規顧客の獲得に注力しなければなりません。一般的に、解約率の目安は5%を上回らないようにすることを目指します。

次は、CACです。CACとは「Customer Acquisition Cost」の略であり、日本語では「顧客獲得コスト」のことを指します。顧客獲得コストとは、顧客を1人獲得するのにかかるマーケティングや営業のコストのことを表します。具体的には、広告費や人件費などが挙げられます。CACは「顧客獲得コスト÷顧客数」で求められます。

CACは大きく分けて以下の3つに分類できます。
1. Organic CAC(以下オーガニックCAC)
2. Paid CAC(以下ペイドCAC)
3. Blended CAC(以下ブレンディッドCAC)

まず、1つ目のオーガニックCACは、『自然と増える』顧客獲得コストを表します。自然と増える顧客とは、検索エンジン経由や既存の顧客による口コミでの紹介などによるものです。つまり、オーガニックCACは、広告などの費用をかけずに獲得できるコストを表します。オーガニックCACの計算方法は「自然に増えた顧客に掛かるコスト÷自然に増えたプラットフォームからの新規顧客数」となります。

2つ目のペイドCACとは、オーガニックCACとは異なり、広告などのお金を払って獲得した顧客コストを表します。ペイドCACは、広告のチャネル(集客するための媒体・経路)によって戦略が異なります。例えば、「SNS広告を打つのであればターゲット層は若者に焦点を当てる」「新聞広告であればビジネスパーソンにターゲット層を絞る」などです。ペイドCACを用いて広告費用を見直す際には、チャネルごとに分類して効果測定すべきです。一見して、ペイドCACの数値があまり良くなくても、ある1つの広告が効果的に顧客を獲得できている場合もあるためです。

ペイドCACの計算方法は、「有料広告にかけたコスト÷有料広告から得た新規顧客数」となります。これらの数値を、チャネルごとに計算することが重要です。

3つ目のブレンディッドCACは、名前の通り、オーガニックCACとペイドCACを合わせた数値となります。つまり、ブレンディッドCACの計算方法は「(マーケティングコスト+営業コスト)÷新規顧客獲得数」となります。サービスを展開する上で、「顧客は増えているけど、収益が赤字の場合」など、企業の課題はCACを分析することによって解決できます。その際に、CACを細分化して、オーガニックCACに問題があるのか・ペイドCACに問題があるのかを分析すべきです。

まとめ

ここまで、SaaSに関連する指標について解説してきました。これまでに聞いたことがなかった、あるいは知らなかった用語などがあったのではないでしょうか。インターネットの急速な普及によって、今後も新しい用語や職種が増えてくると予測されます。その度に、新しい常識に対応していき、時代に遅れないように心がけることが重要です。SaaS業界は、これからもほぼ確実に発展すると考えられるので、サブスクリプション型サービスに必要な知識であるMRRやCACを頭に入れて活用してみてください。

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