カスタマーサービスってどういう仕事?カスタマーサクセスとカスタマーサポートとの違いは?

今回は、カスタマーサービスとはどのような仕事なのかについて解説していきます。そもそもカスタマーサービスという言葉自体を耳にしたことがない方も、カスタマーサービスが具体的にどのような職種なのか理解されていない方も多いと思います。『カスタマーサクセスやカスタマーサポートは聞いたことがある!』という方もいると思いますので、この記事では、カスタマーサービスとそれら2つの職種の違いや、カスタマーサービスの具体的な業務内容について説明していきます。是非最後までご覧になって、カスタマーサービスについての知見を深めてください。

カスタマーサービスを理解する上で重要な「CX」

カスタマーサービスの業務を行う上でCXはとても重要です。CXとはCustomer Experienceの略称であり、『顧客の体験や経験』を意味します。主にマーケティング用語として使われ、顧客がサービスを利用して得られる体験について考える指標になります。あくまでも顧客の満足度は関係なく、顧客がサービスを購入して何を体験したかについて着目します。体験の価値を高めるためには、サービス提供者が顧客に対して行うサポートが重要です。

CXを担当する各職種について

CXを担当する職種は主に2つで、TCEとCEに分けられます。TCEはTechnical Consulting Engineer、CEはConsulting Engineerの略称です。これらの職種は、主にサービスを購入した顧客に対して働きかけます。

まずは、TCEについて紹介します。TCEは、名前の通りテクニカルなことに対応する職種です。具体的には、顧客自身が解決することが困難な、技術的な問題です。テクノロジーに関する深い知見・技術力を基に問題を解決します。技術力が求められる職種なため、プログラミングなど、さまざまな技術を習得したスペシャリストに向いています。技術職として高い専門性を身につけたい方にとっておすすめの職種です。

次にCEについて紹介します。CEでは、顧客のネットワーク設計、ネットワーク構築、運用支援など一貫した技術サービスの提供を行います。顧客の『実現させたい・作りたい』ネットワークサービスを具現化させ、自動化・仮想化など幅広い技術分野の顧客要望に対応しなければなりません。TCEと比較して、『テクニカル』という文字が消えただけですが、こちらも技術的な知識がいらないわけではありません。プロジェクトを通しての人脈形成や幅広い技術知識を身につけたい方にとっておすすめの職種です。

カスタマーサービス

ここからは、カスタマーサービスとは何かについて解説していきます。前提として、カスタマーサービスの定義は、企業によって異なる場合があります。

カスタマーサービスとは、サービスの購入前、購入段階、購入後に顧客のサポートを行うことを指しています。『カスタマーサポートと何が違うの?』と感じられた方も多いかもしれませんが、実際にカスタマーサポートとの明確な線引きはなく、曖昧な状態となっています。しかし、カスタマーサポートと比較して、幅広い対応範囲を指し、上位概念の意味を持つ場合が多くあります。カスタマーサービスはカスタマーサポートと異なり、ただ顧客が困っていることに対応するのではなく、サービス理解を深めたり、サービス利用を促進したりと、能動的に顧客に働きかける場面があります。またサービス購入前にも対応することから、サービス利用前の顧客の問い合わせに対応することもあります。

カスタマーサービスでは、顧客のCXを高めるために、適切な時期に適切なユーザーに対して最高の体験を提供することが求められます。つまり、カスタマーサービスでは顧客データを基に顧客のパーソナライズなどを行うデータ分析能力が必要です。カスタマーサービスは顧客のことを常に考え、顧客に最高の体験をもたらすために、サービスに付加価値を加えるという役割があります。いかに自社のサービスが優れたものであったとしても、カスタマーサービスが疎かになってしまっては、より良いCXの創出やファンの獲得には繋がりません。

カスタマーサクセス

カスタマーサクセスとは名前の通り、カスタマー(顧客)がサクセス(成功)するために、顧客に働きかける職種です。顧客が自社のサービスを利用して、顧客自身の売り上げを伸ばせるようにサポートします。カスタマーサービスと同じく、顧客に能動的に関わることもある職種ですが、カスタマーサービスの業務内容に加えて営業要素が入り、顧客の成功まで長期的に伴走して利益を最大化します。

近年営業は『サービスを売って終わり』ではなくなりつつあります。サブスクリプション(定期購読)型サービスなどの台頭により、顧客がサービスを利用して気に入らなかった場合、すぐにサービスを解約できるようになったからです。そのため、営業は『サービスを売ってからが始まり』と考え、カスタマーサクセスがいかに顧客をつかんで離さないかを重要視するようになりました。

前提として自社のサービスが顧客にとって有益でなければなりませんが、カスタマーサクセスの顧客に対する対応がよければ、顧客は継続してサービスを利用する可能性が高まります。サブスクリプション型サービスの台頭により、顧客をいかに自社サービスのファンにするかが問われているのです。顧客のためを思い常に考え続けられる方や、顧客とコミュニケーションを取ることが好きという方に向いている職種です。

カスタマーサポート

カスタマーサポートとは、顧客からの問い合わせに対応する業務で、顧客が困っていることに対してピンポイントで問題解決します。カスタマーサービスやカスタマーサクセスのように能動的に顧客にコンタクトを取るというよりは受動的にコミュニケーションを取ります。そのため、サービスを利用した後の顧客に対応することがメインとなります。

カスタマーサポートは、お客様窓口やサポートセンターなどと呼ばれることもあり、自社のサービスを購入し利用した顧客が抱く疑問点や不満の解決に努め、サービスを提供している企業への信頼に大きく関わります。電話やメールなどで寄せられる問い合わせに対して、迅速に対応し問題解決する際、対応の重複を防ぐなど顧客の管理も重要となります。また、『よくあるお問い合わせ内容』など、回答テンプレートを作成することもカスタマーサポートの役割です。テンプレートを作成することによって、顧客からの電話やメールの数が減ることが見込まれるため、業務の効率化には欠かせません。

カスタマーサービスの仕事内容

ここまで、カスタマーサービスとは何か、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを解説してきました。ここからは、カスタマーサービスの具体的な仕事内容について紹介していきます。前述した通り、カスタマーサービスの定義は企業によって異なる場合があるため、カスタマーサクセスやカスタマーサポートの仕事内容と重複する部分があります。

顧客の問題を解決する部門へ取り次ぐ

まず、カスタマーサービスの具体的な仕事内容として、顧客が解決したい問題を適切な部門へと取り次ぐことが挙げられます。カスタマーサポートと部署が併設されている場合などは、カスタマーサポートにつなぐ場合もあります。会社によっては顧客対応専用の部署を設けている場合もあるので、あくまでもカスタマーサービスは幅広い要件に対応するイメージです。

サービス購入前から購入後の問い合わせ対応

顧客がサービス購入前から購入後に至るまでの問い合わせ対応もカスタマーサービスの仕事です。段階別に業務内容が異なるので、それぞれ分けてみていきます。

購入前の段階で、カスタマーサービスはサービスの詳細や使用方法を顧客に説明します。顧客はサービスを購入するまで、そのサービスについて全く知らない状態なので、カスタマーサービスに問い合わせる機会は必然的に増えます。その際に、カスタマーサービスがそのサービスの内容を上手く説明できないと、顧客は『この人何も知らないんだな』と感じ、購入を躊躇ってしまう可能性があります。また、サービスの無料トライアルなどがある場合は、その際にサポートをする必要もあります。顧客が適切にサービスを利用して、『役に立ちそう』と感じてもらわなければいけません。そのためにも、カスタマーサービスは自社の製品に精通し、顧客にサービス内容を正しく説明する力が求められます。

購入時は、顧客から注文方法について問われることもあります。サービスについてよく知っているだけではなく、顧客の立場となり、どうやって購入手順を踏む必要があるのかも理解しておく必要があります。また、注文の受付も必要です。顧客が購入する際、どう注文を受け付けるのか分からなければ、スムーズな対応はできません。スムーズに顧客の対応ができないと、『次から購入しないでおこう』と思われてしまうかもしれないので、注意が必要です。さらに、注文が完了してから、サービスを導入する上でのサポートも、カスタマーサービスの仕事内容の一つです。顧客にサービスを売って終わりではなく、カスタマーサービスは顧客がスムーズにサービス利用のスタートダッシュを切れるようサポートしなければなりません。顧客のサービス利用後に問題が生じてカスタマーサービスに問い合わせた際に良い対応ができると、顧客の満足度は上がります。顧客からのクレーム対応は、カスタマーサービスにとって非常に辛い業務ですが、クレームをしてきた人をファンに変えられれば、会社の収益向上に貢献できるでしょう。

購入後の対応がカスタマーサービスの仕事で大きな割合を占めます。まずは、サービスの使い方に関する質問対応です。新しい機器やサービスの使い方に頭を悩ませる人も多いでしょう。サービス利用者が快適にサービスを利用できるようにするのがカスタマーサービスです。また、上述した通り、クレーム対応もカスタマーサービスの仕事です。カスタマーサービスの業務を遂行する上で、クレーム対応が一番ストレスがかかる上に大変な仕事なのではないでしょうか。しかしクレーム対応こそ、冷静かつ迅速な対応が求められます。決してカスタマーサービスが感情的になって言い返してしまってはいけません。自分の感情を押し殺してでも下手に出て、顧客の言葉に耳を傾ける必要があります。そうしなければ、相手は自社の顧客とはならずに、継続的な利益を生み出すのが難しくなります。クレームを言う人をファンに変えることは難しいですが、難解なゲームだと思って、取り組むようにしましょう。

クレームでなくとも、サービスの不具合に対する解決策の回答や提案もカスタマーサービスには必要です。その際に、必ずしも解決が難しい場合は、関連商品や代替案を提案するなど、柔軟な対応が求められます。修理や交換の受付・サービス内容や支払い内容の変更依頼の受付なども、カスタマーサービスが行います。

カスタマーサービスは幅広い知識を問われる仕事です。その分カスタマーサービスを経験することによって得られるメリットもあります。

導入時のオンボーディング

サービスを導入するにあたって、オンボーディング対応はカスタマーサービスやカスタマーサクセスにとって重要な仕事です。オンボーディングは英語で『on boarding』と表記され、採用で頻繁に用いられる用語です。新卒・中途問わず採用した人材が早期に退職しては会社として困るため、早く現場や組織に慣れるようサポートすることをオンボーディングといいます。カスタマーサービスの仕事内容におけるオンボーディングとは、顧客がサービスを購入してから導入時にサポートなしでサービスを利用できる状態にすることまでを指します。サービスを購入してから導入に至るまで、実際にどのように利用するのか、何から始めるべきなのか、迷うことが多々あります。そのような場合に、オンボーディング対応をスムーズに進めることは、顧客の継続的なサービス利用に繋がります。

顧客はサービスを利用する上で複数の段階を踏んでいます。順番に『サービス導入期』、『サービス運用期』、『サービス活用期』、『サービス定着期』です。最初の導入期で躓くと、顧客が適切にサービスを利用できずに、『価値のないサービス』だと思われかねないということです。そのため、顧客が快適なサービス利用のスタートダッシュを切れるようサポートすることはとても重要なのです。

活用度向上のためのヒアリングや情報提供

上述した通り、カスタマーサービスはカスタマーサポートと異なり、顧客に対して能動的にコンタクトする場合があります。サービスの活用度向上のために、ヒアリングや情報提供をすることもカスタマーサービスの重要な役割です。顧客が自社のサービスをあまり利用していない場合、あまりサービスの価値を理解していない場合が多いため、自社の継続的な利益を考えると危険な状態です。そのような場合は、何が原因で顧客の利用状況が芳しくないのか、ヒアリングを通して明らかにしなければなりません。そして、ヒアリング内容を基に、サービスの活用度向上のため有益な情報提供をします。サービスを継続して利用してもらうためには、カスタマーサービスが顧客が未だに気付いていないサービスの魅力に気づいてもらう必要があります。顧客に継続的な利益を生んでもらうためにも、目に見える価値やメリットを提示するようにしましょう。

問い合わせ対応

もちろん、カスタマーサービスの仕事内容には、カスタマーサポートのような受動的な機能を担うことも含まれます。それが、顧客からの問い合わせ対応です。問い合わせ対応では、顧客から問い合わせがあるまでは、能動的に顧客に働きかける必要はありません。顧客が問い合わせたくなる内容は似通ってくることが多いため、事前にスムーズな対応ができるようにしておくと手間が省けます。

一つのことを続けることができない(飽き性)、新しいことに次々と挑戦したいなどの人たちには、問い合わせ対応は向いていないかもしれません。問い合わせ対応は基本的に非対面で行われるため、『人と直接コミュニケーションを取りたい』という方にもあまりおすすめはできません。しかし、人と直接コミュニケーションを取ることが苦手、単純作業が苦にならないという方にとってはおすすめです。

ここまで、カスタマーサービスの仕事内容を5つ紹介してきました。自身にとって興味深い仕事はあったでしょうか。現在カスタマーサービスの需要は上がっています。幅広いスキルが求められ、自身の市場価値が高まる職種でもあるので、興味が沸いたらチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回の記事では、カスタマーサービスという仕事について紹介してきました。重ねてにはなりますが、カスタマーサービスという職種は、企業によって定義が違う場合もありますので、『カスタマーサービス』という職種名だけで一概に判断しないよう注意してください。しっかりとご自身に合った企業の仕事内容なのかどうかを理解しておくことが重要です。特にカスタマーサクセスは、近年の営業方法(SaaSやサブスクリプション型サービスにおいて)として非常に注目されており、市場価値を高めたい方にとってはピッタリの職種です。この記事を読んで、カスタマーサービスに興味を持って挑戦してみる人がいれば幸いです。

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