フィールドセールスにとってのKPIとは?成果を上げる設定方法やポイントを紹介!

SaaS企業を中心に営業活動の分業化が急速に進んでいます。主にマーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4部門が中心となってデータを基にした営業活動の効率化を進めています。マーケティングが有効な見込み顧客を発掘し、インサイドセールスが電話やメールでアポイントを取り、フィールドセールスが顧客のニーズを引き出し成約につなげ、カスタマーサクセスがフォローをすることで、一連の営業活動を分担しています。

本稿では、フィールドセールスのKPIや、設定や運用の方法について解説します。フィールドセールスが売上などの目標を達成するためには、適切なKPIを設定することが重要です。正しくKPIを設定することで目標数値が明確になり、達成に向けてフィールドセールスの担当者が取るべき行動が明確になります。KPIやKGIへの理解を深めることで、どのようなKPIを設定するとよいかを知りましょう。

KPIとは

KPIとは、Key Performance Indicatorの略称で、目標達成までの進捗状況を定量で評価するために使われます。

フィールドセールスのKPIでは、案件数や受注率、平均受注価格といった指標が使われます。KPIを設定することで、個人だけでなく組織全体が目標に向かって進んでいるかどうかを可視化できるため、問題点を把握して改善につなげやすくなります。また、目標数値が明確になり、ボトルネックの特定がしやすくなる点もKPIを設定するメリットとして挙げられます。目標達成までのプロセスの進捗状況を可視化できるため、商談の進捗確認やボトルネックの特定が容易になります。また、管理職が部下へのアドバイスを的確にできるようになるため、マネジメントをしやすくなるというメリットもあります。

KPIは、最終ゴールとなるKGIを達成するために必要な中間目標やプロセス指標とも呼ばれます。またKGIとは、売上金額や利益額など最終的な目標達成指標のことでKey Goal Indicatiorの頭文字を略しています。KGIを設定することで、最終売上目標を設定した上で目標売上を達成するための業務を数値で細分化できます。

KGIとKPIはセットで考える必要があります。KPIの役割は目標までの達成度合いを明確にすることです。KGIやKPIを数値で可視化して定量的に測定できるようにすれば、個人だけでなくチームの誰が見ても進捗を確認できます。KGIとKPIの設定は営業組織全体で目指すゴールの共通認識を持つことにも役立つでしょう。

KPIと似た指標に、事業の成功要因を指標化するKFS(Key Factor for Success)があります。KFSは、CSF(Critical Success Factor)やKFS(Key Success Factor)とも呼ばれますが、いずれも『重要成功要因』という意味です。KFSでは進捗状況を可視化するために『要因』を設定します。例えば、『目標売上を達成するにはどのような要因が必要か』を考えた時、目標を目指すプロセスとして相手先への訪問やプレゼンなどの要因を設定します。要因に設定したKFSを指標化・目標化したものがKPIです。KPIは、営業プロセスで設定した要因を数値化します。相手先への訪問であれば訪問数となり、プレゼンであればプレゼン回数として要因の数値化をすることになります。

フィールドセールスにとってKPIを設定するメリットとは?

フィールドセールスは商談の良し悪しが営業担当者のノウハウに依存し、属人化が課題となりがちです。KPIを設定することで、そのようなノウハウを数値として見える化することができます。また、営業担当者が掲げる目標としてよくある抽象的な言葉も、『何をどのくらいやるのか』を具体的な数値にすることで目標達成への解像度を上げられます。
ここからは、フィールドセールスがKPIを設定するメリットを見ていきます。

KGI達成までのプロセスを数値で可視化できる
KGIを達成するためには、具体的なプロセスや行動をKPIとして設定する必要があります。数値で可視化されたプロセスは関係者が共通認識を持つことを実現します。
例えばKPIで設定した商談数が100件の場合、100件の商談機会を獲得するために必要なアポイントの獲得数も設定できます。数値化されることで、目標達成までにあと何件アポイントが必要なのかがリアルタイムでわかります。KGIまでのプロセスを明確にすることで、どのような行動を取れば最終的な目標が達成できるのかを理解しやすくなるでしょう。

営業プロセスを可視化することで、営業の育成に役立つ
KPIの設定によってフィールドセールスの進捗状況を容易に把握でき、数値で可視化された営業プロセスはマネジメントや教育にも役立ちます。
KPIを通じて各メンバーのパフォーマンスや目標達成状況を一目で把握できるため、目標達成のボトルネックが明確になります。ボトルネックを改善するために、フィールドセールスへの指導や育成のアドバイスが具体的になるため、的確なサポートができるでしょう。

数値化された指標でPDCAを回しやすくなる
KPIの設定で目標数値が明確になるためPDCAが回しやすくなります。PDCAは、改善点が明確にならなければ効果的にサイクルを回すことができません。指標を数値化することで改善すべきポイントが明確になり、PDCAを回しやすくなるでしょう。

進捗状況の把握が容易となる
KPIは営業プロセスの進捗状況の把握を容易にします。数値化された指標によって達成度の判断がしやすくなるため、問題の早期発見などによる軌道修正ができるようになります。
KPIの設定をすることでマーケティングやインサイドセールスとも営業プロセスの現状を数値で共有できるようになり、営業部門間の連携にも役立ちます。

フィールドセールスの設定すべきKPIとは

フィールドセールスのKPIは案件数や受注率、平均受注価格などの指標が挙げられます。案件数を増やして平均受注金額を上げることがKGI達成のポイントとなるので、どういったKPIを改善すると最も効率よくKGIを達成できるのかを検討して営業活動をすることが重要です。

受注率
受注率は、全案件のうち受注に至った案件の割合を示すKPIです。受注率の高い製品に絞って営業活動をすることで全体の受注率の向上が見込めます。ただし、受注率が高くても単価の低い製品であれば売上が不足する可能性があるため注意が必要です。
受注率は、フィールドセールスの担当者間での比較や、販売している製品間の比較をすることで改善点の発見につなげる使い方をおすすめします。

平均受注価格
平均受注価格は、案件当たりの受注価格の平均を示すKPIです。平均受注価格を上げるには、グレードの高い製品やオプションの提案をするのが効果的です。既に案件が進行中の顧客に提案をするため、実効性が高く、短期間で効果が期待できる改善策といえます。

案件化数
案件化数は、リードの中で実際に案件になった数を示すKPIです。案件化数を改善するなら、既存顧客からの新規案件の獲得と、新規顧客からの案件の獲得を通して案件を積み上げます。既存顧客には、フィールドセールスが商品の紹介などをして新規案件の獲得をします。新規顧客からの案件獲得は、インサイドセールスやマーケティング部門の担当者に相談し、見込みのあるリードの情報を共有してもらうとよいでしょう。MQLになる直前のリードの情報や、過去の納品リスト、セミナー申込者リストなど有望なリード情報に対してアプローチをすることで新規案件の獲得につながります。

KPI設定〜運用までの流れ

KPI設定は目標までの達成度合いを計測、確認するための指標です。設定には順序があり、始めはKGI、次にKFSを設定し、その後に具体的なKPIや活動KPIの設定、関係者との合意形成、実務、効果測定と検証、そして改善を繰り返すことで、持続的な成果を上げることができるのです。

①KGIを設定する
KGIを設定せずにKPIを設定すると、事業目標を達成するための指標として適切でないものをKPIとして設定した場合、フィールドセールスは商談回数を積み上げるなどの目先の目標に注力してしまいます。その結果として、最終的なゴールである受注獲得だけでなく、平均受注価格、受注率といったKPIとして意識するべき指標への取り組みがおろそかになる可能性があります。
KGIは、ビジネスの目標と戦略をフィールドセールスの行動と結びつけるため、的確に設定しなければいけません。KGIを設定する際は、事業全体のKGIを基準に『何を目標に活動すべきか』を話し合い、期限を決めて設定しましょう。
KGIの多くは売上を目標にします。売上は次のように分解できます。
売上=販売数量(契約数)×平均価格
販売数量(契約数):新規契約数、既存顧客の解約率が関連
平均単価:商品やサービスのグレードアップ、オプションの追加などが関連

これら売上を分解した要素を基にチームで重要な項目を洗い出してKGIを設定します。KGIを設定する際は、『SMART』の法則を意識しましょう。SMARTの法則は、下記の5つの言葉の頭文字で構成されています。
・Specific(具体的に)
・Measurable(測定可能な)
・Achievable(達成可能な)
・Relevant(関連性のある)
・Time-bound(期限が明確な)
SMARTは、マネジメントにおける目標設定を効率的に実施するためのフレームワークです。SMARTを使ってKGIを設定することで目標の精度を高められます。

②KFSを見つける
KFS(Key Factor for Success)はビジネスを成功させるための要因となります。事業戦略を立てる際に、KFSを見つけることは重要なポイントとなります。
KFSとして設定する要因は順を追って見つけます。
1. フィールドセールスの業務『商談〜クロージング』をさらに分解する
2. KGIにつながるプロセスを数値化する
3. 条件に沿ってKFSを設定する

プロセスの数値化は、成果を上げている営業のどのような行動が成果につながっているかを分析することが大切です。成果を上げている営業にヒアリングをするなどで要因を把握しましょう。KFSに設定されることが多い要因の例を挙げます。
・契約数や契約率
・訪問件数
・提案回数
・面談件数
・顧客単価
・解約件数や割合
・クレーム数

上記にあげた要因から『コントロールしやすい』かつ『目標におよぼすインパクトの大きい』ものをKFSに設定しましょう。KFSは外部環境の変化に応じて移り変わります。そのため、KFSを特定した後に振り返りをして変化に迅速に対応できるように改善を継続することが大切です。

③KPIを設定する
既に設定したKGIとKFSを参考にしてKPIを設定することで、最終目的であるKGIに沿った中間目標のKPIを設定できます。さらに他社との優位性を築けるKPIの設定も可能になるでしょう。
KPIの設定は、数値化したKFSを基に必要最低限の項目を選定し、その上で期限を設定します。KPIの数が多いと混乱する可能性があり管理しきれないかもしれません。その場合は、KGIと同様にSMARTを使って目標を取捨選択します。
KFS分析の結果、KGIに与える影響が大きいことがわかった指標もKPIとして設定することで、フィールドセールスが目標達成に向けて取るべき行動が明確になるというメリットがあります。

④効果測定と検証
設定したKPIに対して実際の数値を測定し、達成度を評価します。最初は週次から始めて、短く期間を区切って測定します。達成できなかった場合は、『指標に問題があるのか』『計測の運用に問題があるのか』といった項目を確認した上で改善に取り組みましょう。
効果測定はフィールドセールスだけでなく営業部門全体で共有するとさらに効果的でしょう。営業部門全体で共有できれば問題点と改善策の検討を迅速に判断でき、インサイドセールスやマーケティングの改善がフィールドセールスのKPI改善につながることもあります。
効果測定し、改善したKPIや活動KPIを意識して、フィールドセールスは営業活動をします。定期的に振り返りと改善をして、フィールドセールスのパフォーマンスを向上させていきましょう。

KPI設定で注意すべきポイントとは

営業組織でKPI設定をする際は注意すべきポイントがあります。

KPIの項目を絞り込む
KPIの項目が多すぎると項目の優先度がわかりにくくなり、管理が難しくなるおそれがあるため、重要な項目に絞るのがポイントです。
KPIの項目数は必要最低限にとどめてシンプルに設計しましょう。シンプルなKPI設計によって取り組むべき指標が明確になり、モチベーションを高めやすくなります。

KGIと連動したKPIであること
KPIはKGIと連動していなければ意味がありません。適切なKPIを設定しなければ手段が目的となってしまう場合があります。例えば、訪問件数を増やすために見込みの低い顧客へのアプローチを増やしてしまうなどです。この場合、KGIを受注額にするとKPIである訪問件数は増えますが、KGIにつながっているとは言えません。確度の高い顧客への訪問頻度やキーパーソンとの面談数など、成果につながるKPIを検討しましょう。

SMARTの法則を満たしたKPIを定める
成果につながるKPIを設定するためには、SMARTの法則を満たした項目を選ぶのがポイントです。営業や目標に関連性があり、誰が見ても理解できる内容かつ数値化して測定できる項目でなければなりません。

実現可能な目標である
KPIは実現可能な目標を設定しましょう。高すぎる目標は達成が現実的ではなくモチベーションを下げてしまいます。細分化した小さな目標を設定し、成功体験を積みあげることでモチベーションを維持することも可能です。まずは実現可能な目標を立ててみましょう。

フィールドセールスの意見と組織が納得するKPIである
営業組織がKPIに納得していないと足並みが揃いません。納得のいく指標でなければフィールドセールスは率先して協力してくれないでしょう。

測定・記録方法が明確かつ簡潔である
KPIにおける効果測定のルールが曖昧だと正確なデータを収集できません。担当者や部署によって記録方法や基準が違うこともあります。また、記録に手間がかかりすぎると入力しなくなる点にも注意が必要です。測定や記録方法には明確さや簡潔さが求められます。

全体を最適化する視点を持ち各部門と連携できるものである
KPIは、組織全体を最適化する視点と部門間で連携できる要素が必要です。設定したKPIをインサイドセールスやマーケティングと連携できれば、組織全体に最適な指標となるでしょう。ただの最適化では本末転倒になることも考えられます。

客観的な視点でKPIが正しいか確認する
効果的なKPIを設定するためには、KPIの妥当性や抜け漏れをチェックする段階で、客観的な視点を取り入れるとよいでしょう。KPI設定に直接関わっていないメンバーにチェックしてもらったり外部に依頼したりするなど、異なる視点による検討が必要です。

また、KPIを設定する際は利益を考えることも大切で、そのための費用についてもKPI設定が必要です。売上をKGIに設定したKPIは、『コストを無限にかければ達成可能なもの』になりがちで利益が生まれません。事業のフェーズによって使い分けが必要となりますが、費用に関わるKPIも立てましょう。

まとめ

独自に積み上げてきたノウハウや勘、やる気に頼ってきたフィールドセールスは課題が多いとされてきました。そのような課題を数値により共有できる指標がKPIです。今回はKPIの設定やKGI、KSFの関係性なども解説しました。

KPIを正しく設定、活用することで目標数値が明確になり、KGI達成までのプロセスが整理され、他部署との連携もしやすくなるでしょう。最適な項目は取り扱っている商材などで異なるため、自社に合ったKPIを検討しましょう。営業活動で思うような成果が出ない場合には、結果につながるKPIを設定し直し、目標達成に向けて取り組める体制を整えることも重要です。今回解説したKPI設定と運用の手順を参考にし、是非取り組んでみてください。