フィールドセールスってどんな仕事?役割や仕事内容、インサイドセールスとの違いや連携について解説

近年、SaaS業界では営業職が『インサイドセールス』と『フィールドセールス』に分かれ、それぞれが専門性を生かして業務を遂行しています。本記事では、フィールドセールスの役割や仕事内容、インサイドセールスとの違いや連携方法、求められるスキルについて解説します。

SaaSとは

SaaSとはSoftware as a Serviceの略で、クラウドを通じてソフトウェアを提供するサービスを指します。従来のパッケージソフトとは異なり、ユーザーはインターネット経由で必要な機能を利用できるため、初期導入コストが低く、常に最新のバージョンを使用できるというメリットがあります。

SaaSビジネスはサブスクリプション(継続課金)モデルが基本で、一度売って終わりではなく、長期的に顧客と関係を築き、継続的に価値を提供することが求められます。この特性から営業活動も従来のものとは異なり、インサイドセールスやカスタマーサクセス、マーケティングとの連携が重要になります。

フィールドセールスとは

フィールドセールスとは、対面での商談や訪問営業を通じて顧客に製品やサービスを提案し、契約を獲得する営業スタイルです。特にSaaS業界では、顧客の業務課題を深く理解し、最適なソリューションを提案するコンサルティング営業の要素が強いのが特徴です。

インサイドセールスが商談の機会を創出し、フィールドセールスが実際に顧客との商談を実施して導入を決定してもらうという役割分担が一般的です。

フィールドセールスの仕事内容

フィールドセールスの仕事内容は顧客との関係構築や契約締結、顧客フォローなど多岐にわたります。

商談準備
フィールドセールスの業務は商談前から始まります。インサイドセールスが獲得したリード(見込み顧客)情報を基に、顧客の業界や規模、課題などを分析し、商談の戦略を立てます。特にSaaSを商材とした営業では、顧客ごとに異なる課題に対して具体的な解決策を提示することが重要なため、事前準備が成功の鍵を握ります。この段階では以下のような準備をします。
・インサイドセールスから提供された顧客情報を確認
・顧客の業務課題やニーズを分析
・提案内容やデモンストレーションの準備
自社サービスを競合他社と比較した際の優位性を整理した上で、顧客の状況に応じた提案内容を準備することも重要です。

顧客訪問・商談
顧客のオフィスや指定された場所へ訪問し、対面で商談をします。顧客の課題やニーズを丁寧にヒアリングし、潜在的なニーズも探ります。ヒアリング内容に基づき、顧客に最適な製品・サービスを提案し、プレゼンテーションを実施します。

見積もり・契約
見積もりを作成して契約締結に向けて交渉し、契約条件や価格交渉など、顧客との合意形成を図ります。顧客の懸念点や疑問点に丁寧に回答し、信頼関係を維持することが重要です。
顧客と契約内容を確認して締結した後は、今後のサポート体制について説明することで安心感を与えます。

顧客フォロー
契約が成立した後も、フィールドセールスの仕事は終わりません。SaaSビジネスでは、顧客が実際にサービスを活用し、継続的に価値を感じてもらうことが重要です。そのため、スムーズな導入をサポートし、顧客の成功を支援することもフィールドセールスの役割の一部です。

情報収集・分析
顧客情報や市場動向を収集して分析し、営業戦略の改善に役立てます。競合情報や市場トレンドを把握し、自社の競争優位性を高めます。

フィールドセールスに向いている人ってどんな人?

フィールドセールスはただ製品を売るだけではなく、顧客の課題を深く理解し、解決策を提案するコンサルティング型の営業です。そのため、顧客のビジネスを理解し、適切なアプローチをする能力が求められています。では、フィールドセールスに向いている人の特徴とはどのようなものでしょうか?

顧客と話すことが好きな人
フィールドセールスは顧客と直接対話をする機会が多く、ヒアリングや商談を通じて関係を築いていくことが重要です。そのため、人と話すことが好きで、相手の話をじっくり聞くことが得意な人は向いているといえます。単なる雑談ではなく、顧客の課題やニーズを深掘りし、それに対する適切な解決策を見つけることが求められるため、コミュニケーション能力は欠かせません。

論理的思考力がある人
SaaSの営業では、顧客の課題を整理し、解決策を論理的に説明することが求められます。そのため、物事を筋道立てて考え、相手に分かりやすく伝えるスキルが重要になります。顧客はSaaSに対して『本当に業務効率が上がるのか?』『コストに見合うメリットがあるのか?』といった疑問を持つことが多いため、データや事例を基に説得力のある説明ができる人が活躍しやすいでしょう。

プレゼンテーションが得意な人
フィールドセールスは製品のデモンストレーションをしたり、導入メリットを説明したりする機会が多くあります。そのため、自社のサービスや導入事例を魅力的に伝えられるプレゼンテーション能力が求められます。顧客の業務を変えるような提案をすることもあるため、専門的な内容を噛み砕いて説明できる力が必要です。

交渉力がある人
SaaSの営業では、価格や契約条件の交渉をすることが多く、顧客との折衝が必要になります。そのため、相手の立場を理解しつつ自社にとって最適な条件で契約をまとめる交渉力が求められます。特に、導入決定までに時間がかかる傾向があるBtoB営業では、顧客の意思決定プロセスを把握し、適切なタイミングでアプローチするスキルが重要です。

数字に強い人
営業職である以上、売上目標(Quota)の達成が求められます。そのため、データ分析を基に営業活動の成果を把握できる人は成功しやすい傾向にあります。また、SaaS営業では『解約率(チャーンレート)』や『顧客獲得単価(CAC)』といった数値も重要になるため、数字を意識しながら戦略的に営業活動をできる人が向いています。

自己管理能力が高い人
フィールドセールスは、自分のスケジュールを管理し、効率よく商談を進める必要があります。特にSaaS業界では、1人の営業担当が複数の案件を同時に進めることが一般的なため、優先順位をつけて業務を進める能力が求められます。タスク管理が得意で、計画的に動ける人はフィールドセールスに向いているといえるでしょう。

フィールドセールスがきついと言われるのはどうして?

フィールドセールスは、顧客と直接対面し、自社の製品やサービスを提案・販売する営業手法です。顧客の課題やニーズを深く理解し、最適なソリューションを提供することで、信頼関係を築き、成約を目指します。しかし、フィールドセールスは決して楽な仕事ではありません。多くの人が『きつい』と感じる要因は、いくつかの要素が複雑に絡み合っています。

目標達成のプレッシャー
フィールドセールスは、売上目標達成のために常にプレッシャーを感じながら働くことになります。特に高額な製品やサービスを扱う場合、目標達成の難易度は高くなります。また、四半期、年間ごとの目標達成が求められることが多く、常に数字に追われる日々を送ることになります。

移動の多さ
フィールドセールスは、顧客訪問をすることで移動時間が多くなり、体力的な負担が大きくなりがちです。広範囲のエリアを担当する場合や、交通の便が悪い地域を担当する場合は移動時間がさらに長くなります。移動中の時間を有効活用する必要があり、常に時間に追われる感覚を持つこともあります。

顧客対応の難しさ
フィールドセールスは、さまざまなタイプの顧客に対応する必要があり、精神的な負担が大きい場合があります。厳しい意見や要望を持つ人もいますし、交渉が難航する場合やクレーム対応が必要になる場合もあります。これらの状況に冷静に対応し、顧客満足度を高める必要があります。

高度な知識・スキルが必要
フィールドセールスは、製品やサービスに関する専門知識や、高度な営業スキルを常にアップデートする必要があります。顧客の課題やニーズを的確に把握し、最適な提案をすることも求められます。

成果がすぐに現れない場合がある
契約締結までに時間がかかる場合があります。特に、高額な製品やサービスを扱う場合や、顧客の意思決定に時間がかかる場合は、成果がすぐに現れないことがあります。長期的な視点を持ち、粘り強く顧客との関係を構築する必要があります。

これらの理由により、フィールドセールスを『きつい』と感じる人は多いでしょう。しかし、困難を乗り越え、目標を達成した時の達成感は非常に大きく、やりがいのある仕事でもあります。

今と昔のフィールドセールスの在り方の違い
フィールドセールスの役割や働き方は、テクノロジーの進化や顧客ニーズの多様化に伴って大きく変わりました。従来のフィールドセールスは訪問営業が中心でしたが、現在はオンライン営業の比率が増加しています。また、データを活用した営業手法(データドリブンセールス)が主流となり、感覚ではなく数値を基にした戦略的な営業が求められています。

フィールドセールスとインサイドセールスの違い、連携

フィールドセールスとインサイドセールスは現代の営業活動においてそれぞれ重要な役割を担っています。両者は顧客との接し方や営業手法において明確な違いがあり、効果的な連携によって高い成果を生み出すことができます。

フィールドセールスとインサイドセールスの違い
インサイドセールスは、主に電話やメール、Web会議を活用して見込み顧客との関係を構築し、商談機会を創出する役割を担います。リードの獲得や育成、商談のセッティングをすることで顧客の興味度合いや導入の可能性を判断した上で、フィールドセールスへ案件を引き継ぎます。

フィールドセールスは、インサイドセールスから引き継いだ案件の商談を実施し、成約につなげる役割を果たします。対面、またはオンラインで商談し、顧客の課題を深く理解して最適なソリューションを提案し、契約締結に向けた交渉を進めます。

フィールドセールスとインサイドセールスの連携方法
フィールドセールスとインサイドセールスが効果的に連携するためには、情報の正確な共有が不可欠です。インサイドセールスは、顧客の興味度や抱えている課題、導入の可能性などの情報を詳細に記録し、フィールドセールスへ引き継ぎます。これにより、フィールドセールスは顧客のニーズを的確に把握した上で商談を進めることができ、よりスムーズな提案が可能になります。

また、フィールドセールスは商談の結果をインサイドセールスにフィードバックすることで、リードの質を高めたり営業活動の精度を向上させたりすることができます。例えば、『この業界の顧客はこのポイントに関心を持つ』『このような課題を持つ企業は受注率が高い』といった情報を共有することで、インサイドセールスがより適切なリードを育成できるようになります。

フィールドセールスとインサイドセールスの関係を強化するポイント
フィールドセールスとインサイドセールスの連携を成功させるためには、幾つかのポイントがあります。

情報共有を徹底する:インサイドセールスが収集した顧客情報(課題や予算感、導入検討の背景など)をCRM(顧客管理システム)に記録し、フィールドセールスと共有することで、商談の精度を高めます。
役割分担を明確にする:インサイドセールスはリードの育成と商談機会の創出に専念し、フィールドセールスはクロージングに集中することでそれぞれの強みを生かします。
定期的なミーティングを実施する:営業部門内でインサイドセールスとフィールドセールスが定期的に情報交換を実施し、成功事例や改善点を共有することで、営業プロセスを最適化します。

このように、フィールドセールスとインサイドセールスが連携して営業活動を進めることで、より多くの顧客に適切なタイミングでアプローチし、契約の確度を高められます。

フィールドセールスを成功させるのに必要なスキル、素質

フィールドセールスを成功させるためには、単に製品知識や営業スキルだけでなく、顧客との信頼関係を築き、長期的なパートナーシップを構築する能力が求められます。以下に、フィールドセールスを成功させるために必要なスキルと素質を詳しく解説します。

顧客との信頼関係を築くためのスキル
フィールドセールスにおいて、顧客との信頼関係は成功の基盤となります。顧客の課題やニーズを深く理解し、誠実な対応を心がけることで、長期的なパートナーシップを築くことができます。

ヒアリング力(課題発見力):SaaSのフィールドセールスでは、顧客の課題を的確に把握し、それに対する最適なソリューションを提案することが求められます。そのためには、単に製品の説明をするのではなく、顧客が抱えている課題や悩みを引き出す『ヒアリング力』が重要になります。
また、顧客が課題を正確に認識していないこともあります。そのため、適切な質問を通じて、顧客の潜在的なニーズを引き出すスキルも求められます。
コミュニケーション能力:顧客との信頼関係を築くための的確な説明をする能力、互いの合意点を見出す交渉力が重要です。顧客の立場に立って考え、誠実な対応を心がけることで、信頼を高めることができます。
プレゼンテーション力:自社の製品・サービスの魅力を効果的に伝えるためには構成力や表現力、熱意が必要です。顧客の課題やニーズに合わせて最適な提案をし、顧客の購買意欲を高める必要があります。SaaSは機能が多岐にわたり専門用語も多いため、顧客にとって分かりやすい説明が求められます。

課題解決能力と提案力
フィールドセールスは顧客の課題を解決し、ビジネスの成長を支援する仕事です。そのため顧客の課題を的確に把握し、最適な解決策を提案する能力が求められます。

課題発見力:顧客の潜在的なニーズや課題を的確に把握するために、顧客のビジネス環境や業界動向を把握する分析力、表面的な情報から本質を見抜く洞察力、情報収集力が重要です。顧客が気づいていない課題を掘り起こし、解決策を提案することで信頼を得ることができます。
提案力:顧客の課題に対して最適な解決策を提案するため、顧客の課題と自社サービスを組み合わせる企画力、顧客の想像を超えるような解決策を提案する想像力、提案の根拠を明確にする論理的思考力が重要です。顧客の課題解決に貢献できる提案をすることで、顧客満足度を高めることができます。

行動力と粘り強さ
フィールドセールスには、目標達成のために積極的に行動し、困難な状況でも諦めずに取り組む粘り強さが求められます。

行動力:計画的に行動する実行力、目標達成までの計画を立てる計画性、自身のタスクを管理する自己管理能力が重要です。自ら考え、計画を立て、実行に移すことで、目標達成に近づくことができます。
粘り強さ:困難な状況でも諦めずに、目標達成に向けて努力する忍耐力、精神力、状況に応じた対応力が重要です。顧客からの厳しい意見や要望にも、冷静に対応し、解決策を見出す必要があります。

交渉力(クロージングスキル)
商談の最終段階では、価格交渉や契約条件の調整が必要になることが多く『交渉力』が求められます。SaaSはサブスクリプション型の契約であるため、長期的な契約となるケースが多く、顧客も慎重に意思決定をします。そのため、単に『この価格で契約してください』と押し付けるのではなく、顧客の立場に立って柔軟な交渉を進めることが大切です。

データ分析力(KPI管理スキル)
SaaS企業では、営業活動の成果を数値で可視化し、改善につなげることが重要視されます。そのため、フィールドセールスも『データ分析力』を身につけ、営業戦略の最適化を図る必要があります。

具体的には、以下のようなデータを定期的に分析することが求められます。
・商談数や成約率の推移(どの業界や企業規模の顧客が成約しやすいか)
・解約率(チャーンレート)(契約後に解約される要因を分析し、対策を立てる)
・営業プロセスのボトルネック(どの段階で顧客が離脱しやすいのか)

データに基づいて営業の課題を特定し、改善策を講じることで、より効率的に成果を上げることができます。

変化への対応力と学習意欲
市場や顧客のニーズは常に変化するため、フィールドセールスは常に新しい知識やスキルを習得し、変化に対応する必要があります。

学習意欲:常に新しい知識やスキルを習得し、自己成長を続ける向上心、探究心、柔軟性が重要です。業界の最新情報や技術動向に関心を持ち、積極的に学ぶことで、市場の変化に対応できます。
柔軟性:変化する状況に合わせて、柔軟に対応できる適応力、受容性が重要です。新しい情報やツールを積極的に取り入れて業務を改善することで、効率的な営業活動ができます。

これらのスキルを身につけることで、フィールドセールスとして顧客との長期的な信頼関係を築き、企業の成長に貢献できます。

まとめ

SaaS企業におけるフィールドセールスは単なる『営業職』ではなく、顧客の課題を解決するコンサルタントのような役割を担います。インサイドセールスと連携して商談を進め、適切な提案をし、契約へと導くことが求められます。

提案を成功させるためにはヒアリング力や提案力、交渉力といった営業スキルに加え、データ分析力や顧客との関係構築力も重要になります。特にSaaSビジネスでは、契約後の継続利用が成功の鍵となるため、導入後のフォローや顧客の成長支援も営業の重要な役割です。

また、フィールドセールスとインサイドセールスの連携を強化することで、商談の質を高め、成約率を向上させられます。適切な情報共有や定期的なコミュニケーションを通じて、営業プロセスを最適化することが重要です。