カスタマーサクセスのキャリアパスとは!どういうキャリアが描ける?

近年耳にする機会が増え、徐々に使われてきている『カスタマーサクセス』というキーワード。『聞いたことはあるけど具体的にどのようなものか分からない!』という方も多いのではないでしょうか。本記事では、カスタマーサクセスとは『具体的にどのような役割業務なのか』『どのようなスキルが必要なのか』、そして『キャリアパスやキャリアチェンジ』について、解説します。また、気になる平均年収などについても触れているため、ぜひ最後まで読んでください。

カスタマーサクセスとはなにか?

カスタマーサクセスとは、自社製品やサービスを通して顧客のビジネス上の目的の達成をサポートすることで、自社の収益を上げていく役割や職種、活動です。結果的に解約防止や上位サービスの提案、口コミでの販路拡大など自社利益の最大化につなげます。主にBtoBのSaaS(※)企業で設けられることが多く、サブスクリプション(定期課金型)サービスなどでも散見します。SaaSはビジネスの仕組み上契約が継続されない限り売り上げが伸びないので、いかに顧客をファンにして留めるかが重要になります。

(※SaaSとはSoftware as a Serviceの略であり、クラウドサービスとして提供されるソフトウェアのことを指します)

ZoomやSlack、Netflixなどのサブスクリプション型サービスにおいて、顧客は自分にとってサービスが必要でなくなれば気軽に解約をできます。そのため企業側は競合他社との差別化をする必要が生まれ、その役割を担うのがカスタマーサクセスになります。

顧客に対するカスタマーサクセスの流れは以下の通りです。

1. 自社の製品の活用方法をアドバイス、提案といったサポートをする
2. 顧客が自社の製品を用いてビジネス上の目的を達成した際、継続した目標達成のため、さらに大きな目標や別の目標を達成するためのサポートをする
3. 製品を利用し続けてもらうことで利益を維持し、さらに新たな製品を提案することで利益を向上する

カスタマーサクセスの本質は、顧客の成功を通じて、自社サービスの継続利用を促すことにあります。顧客にサービスを継続して利用してもらえないと、安定した利益を生むことが難しくなるからです。このようなサブスクリプション型のサービスは売り切り型のサービスに比べ、より顧客との関係性が重要になってきます。

営業からカスタマーサクセスにキャリアチェンジする人が増加傾向

ここまでで、カスタマーサクセスの概念について説明してきましたが、ここからはカスタマーサクセスは具体的にどのような職種なのかについて説明していきます。

 近年、テクノロジーの発達に伴いSaaS市場が成長していることによって、カスタマーサクセスの人材の需要も急速に高まっています。下記の図では、カスタマーサクセスの求人数が約2年の間に7.4倍にも増加していることが分かります(注1)。

カスタマーサクセスの求人数の増加状況

注1:2021年08月にパーソルキャリアが実施した「”新しい時代に求められる営業職”に関する調査」より引用

企業はカスタマーサクセスに取り組むべき明確な理由があるため、需要が急激に高まっています。その理由として、従来に比べてビジネスモデルと営業スタイルが大きく変化していることが挙げられます。

ビジネスモデルの変化の要因として、サブスクリプション型サービスのニーズの高まりがあります。近年、ITサービスは買い切り型ではなくサブスクリプション型がトレンドになっています。サブスクリプション型サービスは、『安く手軽に始められること』『体験に価値を置いていること』『すぐに解約できること』などが、顧客にとっての大きなメリットになります。また、ITが発展した今の世の中では、便利なサービスが溢れており、差別化が難しくなりました。そのため、企業は顧客一人一人に対して適切な製品やサービスを提供することが求められます。

続いて、営業スタイルの変化に関しては、新しいスタイル『The Model』型が効率的だとされ、変化をしています。The Model型とは、広告で消費者に訴えかけるのではなく、消費者自ら購買に向けて行動してもらうインバウンドマーケティングを主体とする営業体制を指します。The Modelでは営業プロセスをマーケティング、インサイドセールス、外勤営業、カスタマーサクセスの4つのフェーズに分けています。4つのフェーズに分類することで、それぞれのフェーズで確実に目標を達成し、次のプロセスに繋げ、売り上げを伸ばせる仕組みとなっています。営業の種類を分類することで、『どの営業プロセスで躓いているのか弱点が可視化される』『失った顧客を取り戻すための戦略が打てる』『分業することによって専門性が高まる』などのメリットがあります。

このように、SaaSが主流となりつつある世の中では、ビジネスモデルと営業スタイルが共に変化しており、営業のスタイルも変化を強いられています。そのため、カスタマーサクセスの必要性の理解に遅れると、ビジネスにおいて大きな痛手を負ってしまう可能性があります。また、カスタマーサクセスを活用することで自社の売り上げを伸ばすだけでなく、顧客とWin-Winの関係を築くこともできるでしょう。

関連記事:カスタマーサクセスへ転職するには?転職時に知っておきたい業界動向、仕事内容について徹底解説!

カスタマーサクセスの仕事内容とは

次に、具体的にカスタマーサクセスの仕事内容はどのようなものなのかについて4つのフェーズごとに見ていきます。

導入/オンボーディングサポート

まず、カスタマーサクセスがやるべきこととして、導入支援(オンボーディングサポート)が挙げられます。顧客が製品について深く理解していないまま使ったり、製品の便利な機能に気づかずに使ったりしていては、価値ある製品だとしても解約されてしまいます。そのため、使い方の説明会や活用方法の勉強会などを催すなどして、適切な導入支援をすることが継続したサービス利用の鍵となります。導入段階で転んでしまうと、カスタマーサクセスは成り立ちません。どの状態になったら導入支援完了となるかは、サービスによって大きく異なってくるので、顧客に対して明確にどこまでサービスを理解してもらうのかを決めておく必要があります。

・利用促進/アクティブ化

導入支援を終えて、サービスを実装する段階で重要なことは、『サービスに対する顧客の反応を分析すること』です。その反応が顧客満足度を表し、高い満足度を得ることで顧客の維持に繋げることができます。カスタマーサービスを導入して顧客満足度を高めることで、顧客を分析し、よりよいサービスを展開してサービス利用を促す策を講じられます。 カスタマーサクセスにおけるサービス利用の促進とは、継続利用を促し顧客一人当たりの売り上げ拡大を狙うことです。常に顧客の興味や関心を把握し、トレンドを押さえ適切な情報提供をすることや、お問い合わせフォームを充実させて必要なフォローなどして、顧客を”ファン化”することが重要です。Cookieなどの情報の取得は、サービスの利用率を上げるアクティブ化の代表例として挙げられます。Cookieを用いることによって、顧客のWeb上での行動を分析でき、行動に応じたマーケティングアプローチができます。カスタマーサクセスは、サービスに顧客がどう反応しているかを分析することが非常に重要です。

・解約率(チャーンレート)の低下

解約率とは、顧客の中で解約した人の割合を指します。サブスクリプション型サービスでは、顧客が契約を継続しない限り売り上げは減少するので、解約率は非常に重要な意味を持ちます。サービスを展開していく中で、新規顧客を獲得することは重要ですが、既存顧客を離さないことが、継続的な利益に直結します。裏を返すと、サブスクリプション型サービスには、顧客側にはいつでもサービスを辞められるといったメリットがあるのです。解約率を下げるには、顧客満足度を高めることが非常に重要です。常にクチコミやアンケートなどを参考にしつつ、顧客がよく使う機能や使わない機能を押さえるなど反応をデータ化し、分析する必要があります。

・オプションや他製品提案による『アップセル』

アップセルとは、企業を成長させるマーケティング戦略の一つで、既存顧客や購入のポテンシャルがある顧客に対して、より良いサービスや製品を提案することです。例えば、SlackやZoomの有料プランが挙げられます。近年、SaaS市場には便利な製品やサービスが溢れ返っている状態なため、新規顧客を獲得するコストは既存顧客の5倍もかかると言われています。アップセルを上手く実践することで顧客一人当たりの売り上げが増加するので、新規顧客を獲得するコストに比べて、低コストで売り上げを伸ばす手法としてとても重要視されています。また、営業効率や顧客満足度が高くなるなどのメリットも存在します。しかし、製品やサービスの選択肢が多すぎても、顧客は選択が難しくなるため、顧客ごとに合った適切なアップセルが必要です。

・顧客の声をプロダクトに反映

良いクチコミが広がると、新規顧客の獲得数の増加にも繋がります。良いクチコミの発生を促すためには、顧客満足度を上げることが必要になります。そのためには顧客の声に耳を傾け、現状のサービスからサービスをより良いものに成長させていくことが求められています。常にPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回し続け、適宜プロダクトを改善していくことが継続的な利益を生むためには重要です。

カスタマーサクセスになるのはどんな人?

・営業やカスタマーサポートからキャリアチェンジする人が多い

実際に、カスタマーサクセスになる人はどんな職種に就いていた人が多いかというと、営業やカスタマーサポートなど、顧客と接する職種に就いていた人が多いです。『自社の売り上げを伸ばすこと』に着目するのではなく、『顧客の満足度を上げて自社の利益を生むこと』に着目するため、『他者視点に立てる人』『適切なコミュニケーションを取れる人』がカスタマーサクセスには向いていると言えます。今後は、より営業職からカスタマーサクセスにキャリアチェンジをする人が増加すると考えられます。また、カスタマーサポートのような受動的な顧客との接し方とは異なり、『能動的』に顧客に対して関わり、問題の解決だけでなく『顧客の成功』を促す必要がありますが、カスタマーサポートのキャリアパスとしてカスタマーサクセスを選択する方は多いでしょう。カスタマーサポートのキャリアプランを描く際に、カスタマーサクセスとして活躍していくことを想定する場合、既存顧客を持っているだけでなく、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回すことができ、自社のサービスの効果的な活用方法を提案するスキルを習得しておくと良いでしょう。つまり、コミュニケーション能力だけでなく分析力・行動力も必要になります。

・経験者は市場に少なく未経験募集が多数

カスタマーサクセスの経験者はまだ市場に少なく、未経験で募集している企業も多いです。近年のテクノロジーの発達により、サブスクリプション型サービスを展開している企業も急激に増加しているため、今後カスタマーサクセスの需要はより高まると考えられます。そのため、未経験でも採用している企業に就業しカスタマーサクセスの経験を積むことは、市場価値を上げることにつながるでしょう。新型コロナウィルスの蔓延をきっかけにリモートワークが増えたなど、社会の変化が激しくなってきている現在において、世の中の変化に対応していくことは非常に重要だと考えられます。

カスタマーサクセスのキャリアパス、将来性

今後、カスタマーサクセスとしてのキャリアパスを考えている方は、カスタマーサクセスの将来性について不安を持つ方も多いと思います。理由としては、新しい職種なので今後のキャリアが不明瞭なことなどが挙げられます。そこで、SaaS企業の増加やサブスクリプションモデルの台頭などの世の中の変化に遅れず、どのように充実したキャリアを歩めるかについて説明します。SaaSのキャリアパスを計画している方は是非参考にしてください。

・プロフェッショナルになる

まず、その道のプロになることで市場価値を高める方法があります。日本ではカスタマーサクセスという概念が広く普及していないので、競争相手が少ないことに加え、企業側にも重宝されやすい状況にあります。そのため、プロフェッショナルを目指せるチャンスは広がっているでしょう。つまり、カスタマーサクセスとして成長する機会が豊富にあります。前述した通り、営業職やカスタマーサポートをしていた人の次のキャリアステップになることが多いですが、コミュニケーション力や分析力に自信がある方は、是非チャレンジしてみることをオススメします。

・チームをまとめるマネージャーになる

自らカスタマーサクセスを経験し、そのノウハウをチームメンバーに伝えていくマネージャーというポジションに就く道もあります。マネージャーはメンバーの状況なども管理しなければなりませんが、その際に必要になるのはマネジメント力です。ここでも、『コミュニケーション能力』『相手の気持ちになって考える力』が必要になります。

・マーケ職や企画職にジョブチェンジ

カスタマーサクセスで培える、分析力や仕組みづくりの能力を活かして、別の職種にキャリアチェンジすることもできます。分析力が求められる主な仕事は、マーケティング職などが挙げられます。また、コミュニケーション能力が磨かれていれば、コンサルタントや企画職など多種多様な分野にも挑戦できます。カスタマーサクセスの経験を活かして、ジョブチェンジしていくのも一つの手です。

カスタマーサクセスの平均年収

続いては、カスタマーサクセスの平均年収を見ていきます。ここまでご覧になって、カスタマーサクセスという職種に興味を持って、平均年収を気にされている方も多いでしょう。

indeedによると、2022年3月13日時点で日本のカスタマーサクセスの平均年収は535万円となっております(注2)。地域によって年収帯は大きく異なり、東京に次いで福岡や大阪の年収が高い傾向にあります。国税庁によると2020年の日本の平均年収は433万円となっており、日本全体の平均年収を大きく上回る結果となっています(注3)。IT産業が伸び続けていることが、その一因だと考えられています。

同じく2022年3月13日時点のアメリカのカスタマーサクセスの平均年収は70,500ドルであり、日本の平均年収を大幅に超えています。カスタマーサクセスが日本と比べて広く普及しており、SaaS企業やサブスクリプション型サービスを展開している企業の成長に伴い、市場規模が大きくなっていることも関係すると考えられます。

注2:indeedの求人サイト「キャリアエクスプローラー」より算出

注3:令和2年に国税庁が実施した「民間給与実態統計調査」より引用

カスタマーサクセスを募集している有名SaaS企業

・HiCustomer株式会社

SaaS企業に対して、カスタマーサクセス管理ツールを提供する日本初のスタートアップ企業です。

https://hicustomer.jp/

・サイボウズ株式会社

主に中小企業向けのグループウェア『サイボウズOffice』や業務アプリプラットフォーム『Kintone』(キントーン)を提供しているSaaS企業です。導入実績は約69,000社にもなります。

https://hicustomer.jp/

・カラクリ株式会社

同社が提供するカスタマーサポート特化型AIチャットボットは満足度No.1を誇ります。企業に対して、顧客満足度のさらなる向上やサポート対応コストの削減をし、離脱するカスタマーを可視化するなどして、売上UPなどを支援しています。

https://about.karakuri.ai/

・株式会社プレイド

同社が提供するKARTEは、あらゆるWebサイトをリアルタイムで可視化し顧客体験をアップデートし、サイトにどのような人が来て何をしているかを明らかにします。CX(顧客体験)にフォーカスを当てたビジネスメディアや、最先端のCXを学び、体験できるきっかけを創出しています。

https://plaid.co.jp/

・株式会社フリップデスク

立ち上げ2年でWeb接客ツールを約800社に提供し、マーケティング支援をしています。

https://flipdesk.jp/

まとめ

ここまで、カスタマーサクセスの職種やキャリアについて説明しました。前述した通り、IT産業の成長に伴い、ありとあらゆる便利なサービスが市場に溢れています。カスタマーサクセスは、サービスを必要な顧客に対して適切に届ける際の差別化を図るために必要な営業プロセスです。カスタマーサクセスに必要な能力は、『コミュニケーション能力』『分析力』が大きな割合を占めています。『顧客の成功』を第一に考え、共に併走することがカスタマーサクセスにおいて重要なことです。

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