必読!カスタマーサクセスについて学べる書籍8選をご紹介
今回は、カスタマーサクセスに関する書籍8冊を紹介します。日本では、カスタマーサクセスという概念がアメリカなど海外に比べて普及していないので、カスタマーサクセスに関する書籍は少ないのです。近年SaaS(※)業界を中心にカスタマーサクセスへの関心が高まっているため、『どの本を読むべきなのか』という疑問を解決できるよう解説します。初心者向きの『絶対に読んでおくべき本』と、さらに知識をつけたい人向けの『できれば読んでおきたい本』の2種類に分けて紹介していきます。 この記事が、カスタマーサクセスへの理解を深めるきっかけになればと思います。(※SaaSとはSoftware as a Serviceの略であり、クラウドサービスとして提供されるソフトウェアのことを指します)
そもそもカスタマーサクセスとはなにか
まず、『カスタマーサクセスって何?』と考える人も多いと思います。カスタマーサクセスとは、『顧客が自社の製品やサービスを使うことで収益を上げることに貢献し、より大きな目標の達成を支援する』プロセスや職種を指します。主にBtoBの SaaS企業で設けられ、サブスクリプション型サービスを提供する企業などでも見られます。SaaSビジネスでは、顧客に契約が継続されない限り売り上げが発生しないため、いかに顧客にサービスを長期間利用してもらえるかがポイントとなります。そのため、解約防止や新サービスの導入などをすることで、顧客をサービスに留めておく必要があります。
カスタマーサクセスが注目を浴びている背景
近年、カスタマーサクセスが注目を集めるのにはいくつか理由があります。特に、テクノロジーの発達によるSaaS市場の発展が大きな要因として挙げられます。テクノロジーが発達した結果、新しい技術で最新の体験を提供するサブスクリプション型サービスのニーズが高まりました。現在は便利なサービスが市場に溢れており、競合他社との差別化が難しいです。そのため、顧客に寄り添い、顧客のビジネスを成功に導くカスタマーサクセスが注目を集めているのです。
絶対に読むべき!青本と赤本の二冊
まずは、カスタマーサクセスの基本となる知識を知るためのおすすめの本を紹介します。大学受験と同様、カスタマーサクセスについての理解を進める上で避けては通れない『青本』『赤本』が存在します。受験の青本と赤本は出版社などの違いが見られますが、カスタマーサクセスに関する青本・赤本は出版社も同じで、どちらも基礎的な知識が得られます。
青本が、『カスタマーサクセス-サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則-』で、赤本が『カスタマーサクセスとは何か-日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」』です。どちらの本にどういった特徴があるのかについて、詳しく説明していきます。
【青本】カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則
カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則(出典:英治出版の公式HP)
青本である、サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則では、カスタマーサクセスの歴史や組織、必要性について書かれており、題名の通りカスタマーサクセスの10個の原則について言及しています。中でも、『心理ロイヤルティ』と『行動ロイヤルティ』の項目では、購買時の無意識の行動について言及しており、興味深い内容になっております。本書で『カスタマーサクセスとは、つまるところロイヤルティだ』と記載されていいますが、カスタマーサクセスは顧客をいかに自社サービスのファンにするかが重要です。
ファン作りに成功している例としては、AppleやStarbucksが挙げられます。より安くて性能の良いスマートフォンや、より安くて美味しいコーヒーショップが市場に存在するにも関わらず、AppleやStarbucksのパッケージや広告などが消費者の心の琴線に触れ、心理ロイヤルティを生み出しているのです。ファンを惹きつけるブランディングが、より高額な商品を購入させるための施策であり、カスタマーサクセスの本質です。つまり、消費者たちは製品に固執しているのではなく、AppleやStarbucksの消費を通した『体験』に価値を置いているといえます。この本を通して、カスタマーサクセスによるファン作りが、企業活動においてどれほど重要かを理解できるでしょう。
海外の本を日本語訳した本なため、少し表現が独特な箇所もありますが、カスタマーサクセスの基礎を学ぶ上で欠かせない1冊です。
【赤本】カスタマーサクセスとは何か 日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」
カスタマーサクセスとは何か 日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」(出典:英治出版の公式HP)
赤本である、日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方」では、『顧客を成功させ続ける』という点の重要性について詳しく言及しています。顧客に『商品を購入してもらって成功』という考え方ではなく、『顧客を成功させ続ける』ことに着目し、それが結果として自社の成功にも繋がるということを説いています。商品を『購入=成功』と捉えるのではなく、『購入=始まり』と考えます。顧客にとっての価値が『購入』から『体験』にシフトチェンジしているのでしょう。
また、カスタマーサクセスはAI(人工知能)に職を奪われず、今後日本で注目を浴びる仕事だと書かれています。新型コロナウィルスの蔓延や最新技術の登場など変化の激しい現代社会において、ロボットに職を奪われない人間の価値を考えさせる本です。カスタマーサクセスとして実務を積むことは、人本来の価値に対する評価が高まってきている現在において、有効だと言えるでしょう。
こちらも勉強になるおすすめ書籍6選
青本と赤本を読んだ上で更なる知見を深めたい人向けの書籍の紹介になります。プロフェッショナルなカスタマーサクセスのイメージや新しい営業モデルなどを解説する書籍6冊を紹介します。基礎的な知識を持った上で自身がどの方向に進みたいかを考え、本を選択する際の参考にしてください。
カスタマーサクセス・プロフェッショナル
カスタマーサクセス・プロフェッショナル(出典:英治出版の公式HP)
この本では、カスタマーサクセスとして働きたい人がそのキャリアを実現するためには、どのように行動すればいいのかを解説しています。カスタマーサクセスに興味があり、実際にカスタマーサクセスとして働いてみたいと考えている人は是非読んでみてください。また、カスタマーサクセスやそのマネージャーに必要なスキルや、優秀なマネージャーを育てる方法などにも触れています。そのため、カスタマーサクセスに向いているかどうかの判断方法や、カスタマーサクセスに関連する人事や教育担当者にも役立つ情報が得られます。カスタマーサクセスの需要が高まってきている現在、カスタマーサクセスのプロフェッショナルのなり方やその育成方法を知り、市場価値の高い存在になる手助けをしてくれる1冊です。
増補改訂版 カスタマーサクセス実行戦略
増補改訂版 カスタマーサクセス実行戦略(出典:翔泳社の公式HP)
この本は日本のSaaS市場の発展に伴い、カスタマーサクセスについて知るべき項目が増えたことで、増補改訂版として大幅にページ増をしています。こちらの本も表紙が青色なので、先に説明した青本と間違えないよう注意が必要です。本では少し難しい言葉が散見され、カスタマーサクセスの初心者が読むには難易度が高いかもしれません。ただ、カスタマーサクセスの概念から企業における実行戦略までを1冊にまとめた本で網羅性が高い内容となってます。創業当初からカスタマーサクセスの育成に取り組んだSanSanの成果や知見が凝縮された教科書のような本で、これからカスタマーサクセス組織を立ち上げる方にとって、『組織の作り方』『人材育成』という点の知見を得られます。また、カスタマーサクセスの評価軸や組織の拡張についても詳しく紹介されており、概念や役割を体系的に学べます。
THE MODEL
THE MODEL(出典:翔泳社の公式HP)
カスタマーサクセスが注目される背景には、サブスクリプションサービスの浸透などビジネスの変化に伴う営業プロセスの細分化があります。この本ではそのような営業プロセスを型化した『THE MODEL』について詳しく書かれています。THE MODELは、営業活動を『マーケティング』『インサイドセールス』『外勤営業』『カスタマーサクセス(定着化支援)』の4つに分けて考えます。
この本では、サブスプリクションビジネスに適した営業体系を構築したセールスフォース・ドットコムの事例を挙げながら、THE MODELの優れた点を解説しています。SaaS時代における成長戦略や、オペレーションの全体像を理解するのに役立つ1冊となっております。
本書には、『今後はこれまでの営業スタイルは通用しない』と書かれており、新しい営業プロセスで顧客の心理状態を読み解く手法や、組織の力を引き出すマネジメントや経営を解説しています。また、インサイドセールスやカスタマーサクセスを本質的に理解せず組織に導入することは危険であると書かれており、カスタマーサクセスを導入した上で、顧客との関係を深めて互いに成長する重要性についても言及しています。
プロダクト・レッド・オーガニゼーション 顧客と組織と成長をつなぐプロダクト主導型の構築
プロダクト・レッド・オーガニゼーション(出典:日本能率協会マネジメントセンターの公式HP)
この本は、プロダクト開発を実践するにあたって有益な1冊となっております。そもそもカスタマーサクセスの導入以前にプロダクトに価値あるものでないと、消費者は購入に至りません。本ではプロダクトの開発を進めていく中で直面する課題に対する、適切な対応やアプローチの方法を示しています。真の顧客主義をプロダクトデータから導き、プロダクト主導型組織の構築を目指す参考書です。
プロダクトが企業の成長を導き、顧客の獲得と維持、成長の促進、組織課題の優先順位づけの手段となることが、デジタルファースト時代のビジネスの姿だとしています。プロダクトは単なる商品から、ユーザーが自ら価値を見出す『モーメント・オブ・トゥルース(真実の瞬間)』として顧客体験そのものになりました。売り切り型ビジネスでなく、体験に価値を置くビジネスが成功していく現在において、いかにプロダクトから得られるデータを組織で活用し、組織全体を改革していく必要性があるかについて解説しています。
サブスクリプション実践ガイド――安定収益を生み出すビジネスモデルのつくり方
サブスクリプション実践ガイド(出典:英治出版の公式HP)
この本では、サブスクリプションというビジネスモデルの解説から、サービスの継続利用を促す実践的な事例までを紹介しています。カスタマーサクセスを導入する上で、特にサブスクリプション型ビジネスモデルはいかに顧客をサービスに留めておくかがカギとなります。具体的には、サービスの企画立案を意味するプランニングや、どのようにサービスを運用するかの基本設計などの事例を紹介し、KPI(重要業績評価指標)の見方から企業の成功の原因を明らかにするところまでを解決します。また、業種別に具体的な事例が紹介されており、理解しやすい構造となっています。
サブスクリプションモデルは顧客との関わり方が全てだと書かれており、労力や投資を惜しまないことの重要性について言及しています。その中で、サブスクリプションモデルをストック型収益と考える安易さが、最大の敗因となるとも書かれています。消費者が支払う値段以上の価値を、当たり前に提供できなければサービスとしての価値を失うということです。それができて初めて、安定した収益を生み出すことが可能になるわけです。是非この本を読んで、安定収益を生み出すビジネスモデルの作り方を学んでみてください。
CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略―顧客の心とつながる経験価値経営
CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略(出典:東洋経済新報社の公式HP)
この本では、CX(消費者の経験)を通して、人々の心理や感情を科学的に解き明かし、マネジメントすることに関して書かれています。ITの発展により、技術は指数関数的に進化しており、それに伴い、同じ値段の中でより良いサービスを購入する顧客のスマート化も顕著です。人々の生き物としての心理や感情は普遍的なものなので、そういった顧客の心とつながる経験価値経営のノウハウについて書かれている本です。顧客ファーストな経営を行う上で、『選ばれる会社』『神対応』は仕組み化できると書かれています。
『なぜ今、カスタマー・エクスペリエンスなのか?』から考え、『カスタマーエクスペリエンスは企業収益に貢献するのか』『カスタマーエクスペリエンス戦略のマネジメント、テクノロジーとはなにか』についてまで詳しく紹介されています。少し難しい言葉も散見されますが、カスタマーサクセスとの差異についても詳しく解説されているので、是非新たな知見を深めたい人にオススメです。
以上が、『できれば読んでおきたい本6選』でした。かなり専門性の高いものもありましたが、青本と赤本だけでは物足りない人にとっては、とても参考になる本ばかりですので、よりカスタマーサクセスについての知識をつけたい人は、是非読んでみてください。
まとめ
ここまで、『カスタマーサクセスとは何か』『カスタマーサクセスが注目されている背景』『カスタマーサクセスに関する書籍』について紹介してきました。まずは、青本や赤本を読んでカスタマーサクセスに関する基礎的な知識をつけ、『できれば読んで欲しい書籍6選』の中から、自身にとって必要な知識が得られる本を取捨選択することをオススメします。本によっては内容が被る部分もあると思われますが、どの本にも共通して書かれていることが、カスタマーサクセスの本質でもあるので、幅広い知識をつける為にも是非読んでみてください。
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