カスタマーサクセスに向いている人の特徴とは?向いていない人はどういう人?
『カスタマーサクセス』という言葉を聞き慣れない人は多いのではないでしょうか。カスタマーサクセスとは、顧客のビジネスを成功に導くため、自社の製品やサービスの価値を最大限に引き出すプロセスや職種を指します。似たような言葉で『カスタマーサポート』があります。カスタマーサポートは、顧客が課題やトラブルに直面した際、迅速に解決することで顧客満足度を上げる役割を指します。本稿では、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いや、カスタマーサクセスに向いている人や向いていない人の特徴を紹介しますので、カスタマーサクセス、カスタマーサポートへの転職を検討されている方はぜひ参考にしてください。
最近になって注目されている理由
近年のサブスクリプションサービスの増加がカスタマーサクセスが求められるようになった大きな要因と言われています。サブスクリプションサービスとは、従来の売り切りサービスではなく、定額の料金を継続して払うことで利用できるサービスのことを指します。
サブスクリプションサービスでは、既存顧客の満足度を上げることで収益を伸ばすスタイルが確立されています。そのため、顧客がサービスから離れないよう問題を解決する役割を担う『カスタマーサクセス』の需要が高まりました。カスタマーサクセスはSaaS(Software as a Service)との関係が深く、SaaSの普及と共に誕生したとも言われています。
SaaS(サース)とは
SaaSとはSoftware as a Serviceの略で、直訳すると『サービスとしてのソフトウェア』を表し、オンラインで使用できるソフトウェアサービスになります。従来のサービスでは、パッケージを購入してプログラムをデバイスにインストールしなければいけませんでした。しかしSaaSでは、ユーザーがソフトウェアを一括で購入する必要もインストールする必要もなく利用できます。
SaaSを利用するには
SaaSを利用する契約をしてサービスにログインすることで利用開始できます。月額・年間の定額契約を交わすことで一定のサービスを利用でき、中にはオプション機能を追加するため、別でコース金額を設定するものも存在します。例えば、Office365やChatwork、Slackが挙げられます。
SaaSはあらゆる業界で今後も普及するとされています。最新技術を取り入れたSaaSの登場で業界全体の変化が起こると同時に、セキュリティ面での課題も解決しなければならないといった課題もあります。
カスタマーサクセスの仕事内容
ここからは、カスタマーサクセスの仕事を、構成する要素ごとに解説をしていきます。
オンボーディング
新規顧客を開拓するためには営業活動が重要になります。仮にサービスの需要が拡大中だとしても、ユーザーはサービスを使用するイメージが湧きません。そこで、サービスの機能や実績、効果を正しく伝え、潜在顧客に興味を持ってもらう必要があります。具体的には、分かりやすい資料やデータの用意、説明会の開催、利用者の声を届けることなどが挙げられます。
アダプション
顧客のサービス契約後は活用に向けた支援をします。継続利用してもらうために、導入後のサポートを徹底して顧客満足度を維持することが求められます。他社の成功例や失敗例を引き合いに出し、情報を定期的に届けることで、顧客が不明な点を抱かないようにすることがサービス利用の促進に繋がります。
サービスが顧客のビジネスの成功に繋がり、価値を生み出すことがカスタマーサクセスの役割です。顧客と意見がズレた際は真っ向から反対するのではなく、訂正する案を出さなければなりません。顧客と本質的に食い違った考えがあった場合はしっかりとヒアリングし、顧客が成長して価値を生み出すことにフォーカスした提案をする必要があります。
エクスパンション
既にサービスを利用している顧客に対して利用拡大を図ることも、カスタマーサクセスの役割の一つです。
(アップセル)
既に利用しているサービスに、より付加価値のある商品を勧めたり、購入を検討中の顧客に通常よりも高価格帯のサービスを勧めたりします。付加オプションでユーザーのストレスを軽減し、より豊富なサービスを受けられるようにする目的もあります。サービスによって費用の上げ幅は変わりますが、ユーザーによっては上位商品の契約が“お得”に感じることもあります。
(クロスセル)
ある商品を購入するか悩んでいる顧客に、関連する商品やオプションを勧めます。例えば、オンラインショップでユーザーが見ているカテゴリに応じて、オススメ商品が表示されることが挙げられます。
(ダウンセル)
購入意欲が弱く豊富な機能を求めない顧客に対し、グレードを下げた安価な商品を勧めます。既にサービスを受けている顧客の活用状況が変わり、高い性能や高価なグレードの製品を求めなくなる場合は、ユーザーに合ったサービスを提案をします。価格と利用価値とのギャップが生まれないようにして、ユーザーが長期的かつ継続的に利用するようにします。収益をゼロにしないことを目的にした臨機応変なセールスが求められます。
アップセルやクロスセルは顧客単価を上げ、新規開拓にかけるコストを削減します。そのためには、既存の顧客の満足度を上げ、顧客数を把握する必要があります。しつこいサービスの推奨をしたり、サービスに価値を見出されなかったりする場合は、ダウンセルへと繋がる要因になります。それは顧客単価の低下を意味し、最悪の場合は解約されることも念頭に入れなければなりません。これらを上手に活用してエクスパンションするには、顧客の分析が重要になります。
カスタマーサポートとの違い
カスタマーサクセスと近しい職種として『カスタマーサポート』が挙げられます。顧客のサービスを利用する際の課題を解決するのはカスタマーサクセスと同じですが、解決方法や顧客との向き合い方は違います。ここからは、カスタマーサポートの具体的な仕事内容やカスタマーサクセスとの違いを紹介していきます。
カスタマーサポートの仕事内容
カスタマーサポートの目的は、顧客から寄せられた問い合わせを解決して顧客満足度の向上や自社の信頼獲得をすることです。顧客と接点を持つ際は顧客の要望を正しく理解し、適切な提案が求められるため、自社の製品やサービスへの深い理解やコミュニケーション能力が必要です。
カスタマーサポートの仕事内容は、サポートセンターや問い合わせ窓口などを通して寄せられる、顧客の疑問や不満を解決することです。問い合わせはメールや電話、チャットなど多岐にわたる方法で受け付けます。カスタマーサポートの対応が企業イメージに影響するため、真摯な対応が求められます。
また、カスタマーサポートの品質を向上するため、日々の問い合わせをFAQとしてまとめることも業務の一つです。FAQの作成にはカスタマーサポートの知見を一元管理できるといったメリットもあります。他にも、満足度の高いサポートを提供してより高単価なサービスの契約や他製品の購入をうながしたり、カスタマーサポートに届いた顧客のクレームや意見を社内に共有して、より良いサービスの開発に繋げたりもします。
カスタマーサポートのKGIやKPI
カスタマーサポートのKGI(重要目標達成指標)は『顧客の疑問・不満解消』になります。顧客がサービス使用中に発生した疑問やクレームに、迅速かつ的確に回答します。KPIとしては課題解決時間や課題解決率、課題解決率、一次応答時間、応答率、処理時間などが挙げられます。評価が難しいカスタマーサポートの業務がKPIで見える化され、理想とする状態にどれほど近づけているのかを判断できます。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、顧客の課題を解決するという目的は同じですが、顧客にアプローチする際のスタンスが違います。上述したように、カスタマーサポートは顧客からの問い合わせを起点にして課題を解決する受動的な姿勢で、顧客との関係は単発的です。対してカスタマーサクセスは、顧客へ自らアプローチしてビジネスを成功に導くという能動的な姿勢が求められます。顧客がサービスを使ってビジネス上の成功を得るまで継続的に支援するため、顧客とは長期的な関係を築く必要があり、その点もカスタマーサポートとは大きく異なります。
カスタマーサクセスのKGIは、顧客との契約の開始から終了までの間に、どの程度の利益をもたらしたかを示す『LTV』(ライフタイムバリュー)になります。新規顧客を獲得することを目標とするのではなく、既存顧客を維持することで収益を上げることを目指します。カスタマーサポートが短期的な顧客の課題解決をKGIとしているのに対し、カスタマーサクセスは継続した顧客への対応をKGIとしている点からも、両職種の目的が根本的に異なることが分かるでしょう。
ただ、どちらの職種も、今後の転職市場で需要が高まると予想されている点は同じです。SaaS業界を中心にサブスクリプション型のサービスが増えているため、顧客の長期的なサービス利用に直結するカスタマーサクセスやカスタマーサポートは、より一層求められることになるでしょう。
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カスタマーサクセスに向いている人
ここからは、本記事の本題であるカスタマーサクセスに向いている人、向いていない人の特徴についてを紹介します。
ホスピタリティがある人
当然自分よがりな仕事をしていては顧客に満足してもらえません。顧客の悩みや問題に寄り添い、解決することが大切です。カスタマーサクセスは顧客の声を第一にしなければ務まらない仕事とも言えます。
分析をするのが好きな人
商談や支援の段階でデータを示しながら顧客と会話するカスタマーサクセスには、データ分析能力が不可欠です。顧客は提案や説明を受ける際、抽象的な言葉の説明よりも具体的な数字を示した方が、根拠が理解でき納得できるものです。また、あらゆる数字を把握しておくことで課題を読み解くことも可能となります。課題解決のための指標やサービスの成果、最終的な事業成果などは数字で判断されるため、数字を良い状況へ変えるための分析が求められます。
エクスパンションでは顧客情報の整理や分析を行います。顧客が何を悩み、何を目的に行動するのかを把握する必要があります。何かを分析するのが好きだという方には合う一方、見切り発車しがちな人には不得意な仕事かもしれません。
仮説を立てることが得意な人
分析をすることで新たな問題に直面することがあり、その際は解決策を提案しなければなりません。そこで、どうしたらどうなるのかという仮説を立てることが重要になってきます。仮説を立てた先に問題があるのかないのか、問題の解決はできるのか。これらを可能な限りクリアにすることが解決に繋がります。
仕組みやフローを整えるのが好きな人
顧客にサービスを提供する仕組みやフロー(作業工程)が整っていなければ、企業としての信頼を失い、仕事の効率も低下します。逆に、円滑で流動的に顧客をフォローできる仕組みを作れたら、情報の共有やすれ違い防止、効率アップなどを実現できます。
仕組みやフローを組織に定着させるために、各部署と連携を取りながら改善点や不備がないかを気に留めることも大切になります。仕組みやフローが整えば、ミスを最小限に抑えられ無駄なトラブルを引き起こさなくなり、顧客や同僚、自身の負担を軽減できます。
ストレス耐性が高い人
カスタマーサクセスは常に顧客とコミュニケーションし続ける職種です。相手が人であると、自信を持って提案しても簡単に首を縦に振ってくれないことが多々あります。そして、その度に問題に対する解決方法を提示しなければなりません。忍耐が必要になる場面が多く、ストレスが溜まることも多いです。また、成果が数字として如実に示されることからプレッシャーが強く、サービスが顧客の成功に結びつかない場合に過度なストレスを受けることもあります。ストレス耐性が高く、顧客に対して丁寧な対応ができる人に向いているでしょう。
チームワークを重要視する人
インサイドセールスやフィールドセールスと連携して営業活動するため、カスタマーサクセスだけでは業務は回りません。企画や開発、リサーチなど各々が結託することによって顧客満足や企業成果へと繋げられます。また、顧客の成長が伸び悩んだり、顧客とのズレが生じたりしないようにするため、顧客への定期的なフォローが必要です。顧客と共に協力することはチームワークの一つとも言えるでしょう。
営業経験がある人
多くの企業は、営業の能力が業績の伸びに大きな影響を与えます。新規顧客を増やし見込み顧客を取り入れることが重要なため、営業スキルを培った人はどの企業でももとめられています。営業にはコミュニケーション能力が必要であり、顧客だけではなく社内とも連携を取れることが大切です。カスタマーサクセスは営業経験者のジョブチェンジ先となるパターンが近年増えています。
カスタマーサクセスに向いていない人
ここからはカスタマーサクセスに向いていない人の特徴を3つ紹介します。
チームより1人で行動することが好きな人
カスタマーサクセスは様々な部署と関わる必要があります。顧客管理や数字管理、サービス起案、分析などの情報共有ができなければ、業務はうまく回りません。自分の力だけで目的を達成したい人には不向きな職種で、チームにおける協調性や報連相を意識できる人に適しています。
人との対話が好きではない人
顧客や社内におけるコミュニケーションは必須で、対話が不可欠です。相手の意思を汲み取った上で意見を言わなければ、顧客の問題の根本的解決には至らないことも。対話をすることで相互の認識違いを防ぎ、信頼を築き上げることが求められます。信頼を築くと業務も円滑になり、顧客へのアップセルをしやすくなります。
1つの専門性に特化したい人
カスタマーサクセスは様々なことに目を配る必要があり、上述のようにコミュニケーション能力や分析能力、管理能力、解決能力が求められます。専門特化で顧客の成功体験を実現できるものではないため、1つのことを極めたいという方には向かない職種です。
まとめ
カスタマーサクセスは、サブスクリプションサービスの普及に伴い、近年注目されている職種です。顧客のビジネスを成功に導くため、顧客と長期的な関係を結んでビジネスに関わる根本的な支援をします。また、顧客への新規開拓やエクスパンションのセールスなどを行うため、顧客の情報整理や分析、問題解決に取り組む必要があります。
コミュニケーション及びチームワークに抵抗がなく、分析力や計画性があり、忍耐力のある人に向いている職種です。自分の力のみで成果を上げたい人や1つの専門性を特化させたい人、コミュニケーション能力に欠ける方には不向きな可能性があります。
カスタマーサクセスは、多くの企業で導入が増える傾向にあります。インターネット上でのビジネスが盛んになった現代、顧客第一主義を実現するため、よりカスタマーサクセスが求められるでしょう。
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