SaaS企業のフィールドセールスは何が違う?!成功するためのポイントや注意点を解説します

現在、多くの個人や企業がSaaS(Software as a Service)を利用しており、その選択肢は増加しています。そのため、SaaSビジネスは急速に成長している分野の一つです。SaaSは、個人や企業における新たなビジネスモデルの構築や、既存ビジネスの効率化につながります。一方で、SaaS業界の競争は激しくなっているため自社に合った綿密な営業戦略が求められています。この記事ではSaaS企業のフィールドセールスに求められる営業戦略を解説します。

SaaSとは

SaaSとは、インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービスのことです。従来のようにソフトウェアを購入してインストールするのではありません。SaaSは、企業の業務効率化やコスト削減に貢献するため、多くのビジネスで採用されています。

SaaSの特徴
①クラウド経由で提供
ソフトウェアをインターネット経由で利用でき、ユーザーはブラウザやアプリケーションを通じてアクセスするだけでよい。

②初期費用が少ない
一般的にサブスクリプション(月額・年額)で利用でき、導入コストが抑えられる。

③メンテナンス不要
ソフトウェアのアップデートや保守は提供者側が実施するため、利用者は手間をかけずに最新の状態を維持できる

④マルチデバイス対応
PC、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなデバイスからアクセス可能。

フィールドセールスとは

フィールドセールスとは、営業担当者が直接顧客を訪問し、対面で商談や販売活動を行う営業手法のことです。特にBtoB(法人向け)や高単価、複雑な商材の販売に適しており、顧客との信頼関係を築いて課題解決型の提案営業をします。

フィールドセールスの特徴
①顧客との対面による深い関係構築
フィールドセールスでは、直接顧客と対話して課題を深くヒアリングできるため、カスタマイズした提案が可能です。特にITシステムやコンサルティングなど、導入に慎重な意思決定が必要な商材では、顧客の信頼を得ることが成約の鍵となります。

②データ活用とハイブリッド営業
CRM(顧客管理ツール)やSFA(営業支援システム)を活用し、データに基づく戦略的な営業が求められます。また、オンライン商談を併用した『ハイブリッド型営業』が主流になりつつあります。訪問とオンラインの使い分けが重要です。

フィールドセールスは、高度な課題解決型営業が求められる分野で活躍し、顧客との長期的な関係構築を強みとする営業スタイルです。

フィールドセールスの流れ
①アポイント取得
フィールドセールスは効率的な訪問が重要なため、多くの場合、インサイドセールスがリード(見込み顧客)にアプローチし、商談のアポイントを設定します。自らテレアポを実施するケースもありますが、マーケティング部門と連携してウェビナー参加者や問い合わせ対応などから商談機会を得るのが一般的です。

②顧客訪問・ヒアリング
訪問時は顧客の課題を深くヒアリングし、ニーズを正確に把握します。単に製品やサービスを売り込むのではなく、顧客の業務フローや事業課題を明確化し、解決策を共に考えるコンサルティング型営業が求められます。

③提案・デモンストレーション
ヒアリングした内容を基に顧客に最適なソリューションを提案します。SaaSやITシステムの営業では、デモンストレーションやトライアル提供を実施し、実際の使用感を体験してもらうことが成約率の向上につながります。

④クロージング(契約交渉・受注)
提案後、顧客の要望や懸念点を解消し、契約に向けて交渉します。価格や導入スケジュールを調整し、最終的な合意を得ることが目標です。

⑤フォローアップ・アフターサポート
契約後は、スムーズな導入や継続利用を支援するため、カスタマーサクセスチームと連携してフォローアップします。特にSaaSは、長期的な顧客関係の構築がLTV(顧客障害価値)向上につながるため、定期的なサポートが重要です。

SaaS企業の営業の在り方

SaaS企業の営業は、従来の『売り切り型』の営業とは異なり、顧客と長期的な関係を築き、継続的に価値を提供することが求められます。サブスクリプション型のビジネスモデルを採用しているため、新規契約の獲得だけでなく、継続利用の促進(リテンション)やアップセル・クロスセルが重要な役割を担います。ここでは、SaaS営業の特徴や具体的なプロセス、重要指標について詳しく解説します。

SaaS営業の特徴
①サブスクリプション型のビジネスモデルに最適化された営業
SaaSは『一度売って終わり』ではなく、継続利用してもらうことで収益を積み上げるビジネスモデルです。そのため、営業活動は単なる契約獲得ではなく、顧客が実際にサービスを活用し、成果を出せるよう支援することが重要です。
特に解約率(チャーンレート)が高いと、新規顧客をどれだけ獲得しても収益が安定しないため、契約後のフォローアップが不可欠です。営業活動のKPIも『売上』だけでなく、『解約率』『LTV(顧客生涯価値)』『アップセル率』などが重要視されます。

②インサイドセールスとフィールドセールスの分業
SaaS営業では、リード(見込み顧客)獲得からクロージングまでを効率化するために、インサイドセールスとフィールドセールスを分業するケースが多い傾向があります。
インサイドセールス:オンライン商談や電話、メールを活用し、リードを育成(ナーチャリング)し、商談の機会を創出する。
フィールドセールス:インサイドセールスが獲得した商談に対し、対面またはオンラインで提案。クロージングをする。
カスタマーサクセス:契約後のオンボーディング(導入支援)や活用支援を実施し、継続利用やアップセルを促す

この分業体制によって営業の生産性が上がり、より効率的に新規獲得と既存顧客の満足度の向上を両立できます。

③SaaS営業の年収
SaaS営業の年収は500〜900万円が一般的で、経験や実績次第では1000万円以上も可能です。インセンティブ制度を導入する企業が多く、高い成果を出せば報酬も大幅に増加します。

SaaS営業のプロセス
①マーケティングによるリード獲得
SaaS営業の起点となるのは、Webマーケティングによるリード獲得です。以下の手法を活用して、興味を持つ潜在顧客を集めます。
・コンテンツマーケティング(ブログ、ホワイトペーパー)
・ウェビナー(オンラインセミナー)
・Web広告(Google広告、SNS広告)
・SEO対策による検索流入
獲得したリードは、CRM(Salesforceなど)やMAツール(HubSpotなど)を活用して管理し、見込み度に応じたアプローチを実施するのが一般的です。

②インサイドセールスによる商談設定
インサイドセールスがリードに対し、電話やメール、オンライン商談でアプローチし、商談の機会を作ります。この際、リードスコアリング(興味関心の高さに応じて優先順位をつける手法)を活用し、効果的な営業活動をします

③フィールドセールスによる商談・提案
フィールドセールスは、インサイドセールスが獲得した商談で顧客の課題をヒアリングし、最適なソリューションを提案します。特にSaaSの場合、デモンストレーションやトライアル提供を通じて、実際の活用イメージを持ってもらうことが成約率向上につながります。

④クロージング(契約交渉)
提案後、価格や導入スケジュールを調整し、契約へと進みます。SaaSの料金体系は月額課金、年額課金、従量課金などさまざまなため、顧客の利用状況に合わせた最適なプランを提案することが重要です。

⑤カスタマーサクセスによる導入・活用支援
契約後は、カスタマーサクセスチームが導入支援し、顧客がスムーズに活用できるようサポートします。特に初期段階(オンボーディング)が成功すると、解約率を低下させられます。
・導入時のトレーニング、サポート
・定期的なフォローアップ、Q&A対応
・データ分析による利用促進策の提案

また、顧客の利用状況をモニタリングし、アップセル(上位プランへの移行)やクロスセル(追加サービスの提案)を促すことも重要な役割となります。

SaaS営業の重要指標(KPI)
SaaS営業では、以下の指標を重視し、継続的に改善します。
・MRR(Monthly Recurring Revenue):月間の継続収益
・ARR(Annual Recurring Revenue):年間の継続収益
・CAC(Customer Acquisition Cost):顧客獲得単価
・LTV(Lifetime Value):顧客生涯価値
・Churn Rate(解約率):解約した顧客の割合
・Upsell & Cross-sell Rate:追加契約・拡張契約の割合

これらの指標を最適化することで、持続的な成長を実現し、SaaSビジネスの成功へとつなげることができます。

SaaS企業の営業は単なる契約獲得ではありません。顧客の成功を支援し、長期的な関係を築くことが重要です。そのために、インサイドセールスやフィールドセールス、カスタマーサクセスとの連携や、データドリブンな営業戦略が欠かせません。LTVの最大化を目指し、新規獲得や解約防止、アップセルの施策をバランスよく推進する営業モデルが求められます。

SaaS企業のフィールドセールスとは

SaaS企業におけるフィールドセールスの役割は、主に以下の4つに分けられます。
①商談・提案活動
フィールドセールスは、顧客の課題を深くヒアリングして適切なソリューションを提案することが求められます。特に、SaaSの導入は業務フローや社内体制にも影響を与えるため、単なる機能説明ではなく、『なぜこのサービスが必要なのか』を明確に伝えることが重要です。多くのSaaS企業がデモンストレーションやトライアルを活用し、実際の使用感を体験してもらうことで、顧客の導入意欲を高める手法を取っています。

②クロージング(契約交渉)
顧客が導入を決断できるよう、価格交渉や契約条件を調整します。SaaSの料金体系は、月額課金、年額課金、従量課金など多様なプランがあるため、顧客の利用形態に合わせた柔軟な提案が求められます。

また、SaaSはサブスクリプション型のビジネスモデルであるため長期的に利用してもらうことが重要です。そのため、無理な割引や短期契約を提案するのではなく、顧客にとって最適な契約形態を提案し、LTVの最大化を意識することが求められます。

③競合との比較や差別化の提示
SaaS市場は競争が激しく、多くの企業が類似したサービスを提供しているため、競合との差別化が重要です。フィールドセールスは、顧客の業界やビジネスモデルに合わせて、競合製品との違いを明確に伝えることが求められます。

特に、以下のポイントで競合と差別化を図ることが有効です。
・機能面:自社SaaSの強みや独自機能を強調
・コストパフォーマンス:トータルコストとROI(投資対効果)を説明
・導入、運用のしやすさ:サポート体制やトレーニングの充実度

④顧客との長期的な関係構築
SaaSはサブスクリプション型のため、契約後のフォローアップも重要な営業活動です。契約を獲得した後も、カスタマーサクセスと連携しながら、定期的に顧客とコミュニケーションを取り、利用状況や満足度を確認することが求められます。また、顧客の利用状況を分析し、アップセル(上位プランへの移行)やクロスセル(関連サービスの提案)をすることもフィールドセールスの役割の一つです。

SaaS企業のフィールドセールスを成功させるためのポイント

前述の通りSaaSビジネスはサブスクリプション型であるため、単なる新規契約の獲得だけでなく、継続的な利用を促進し、LTVを最大化することが求められます。そのため、フィールドセールスには、『売る営業』だけでなく、コンサルティングの視点やカスタマーサクセスとの連携が重要となります。

顧客理解を深めるヒアリング力の強化
SaaSの導入は、企業の業務フローやシステムに大きな影響を与えます。そのため、顧客が抱える課題を深く理解し、最適な解決策を提案することが成功の鍵となります。顧客を理解するためのヒアリングのポイントは下記になります。
・業務フローの現状と課題
・既存システムの利用状況
・導入の目的、期待する成果
・意思決定プロセス

ヒアリングを通じて、顧客の状況やニーズを深く理解し、単なる機能説明ではなく、課題解決型の提案をすることが重要です。

デモンストレーションの活用
顧客に利用イメージを持ってもらうことが、SaaSの成約率を高めるポイントです。デモンストレーションを効果的に活用しましょう。デモンストレーションのポイントは次になります。
・顧客の業務に即したシナリオで実施する(汎用的な説明ではなく、顧客の業務フローに沿ったデモンストレーションをする)
・顧客に実際に操作してもらう。『見る』だけでなく、実際に使ってもらうことで導入のハードルを下げる
・導入後のメリットを明確に伝える。時間短縮やコスト削減、売上向上などの具体的なメリットを提示する

トライアル期間を設けて実際に使ってもらうことで、導入の意思決定を後押しするのが効果的です。

競合との差別化ポイントを明確にする
SaaS市場は競争が激しく、顧客は複数のツールを比較検討するのが一般的です。そのため、競合との差別化ポイントを明確にし、顧客に自社の優位性を伝えることが重要です。
以下が差別化ポイントになります。
・機能面での優位性
・価格、コストパフォーマンス
・サポート体制

競合比較表を作成し、顧客が一目で違いを理解できるようにするのも効果的です。

インサイドセールスやカスタマーサクセスとの連携
SaaS営業では、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの連携が不可欠です。

フィールドセールスは、インサイドセールスが獲得した商談を引き継ぎ、スムーズに契約につなげることが重要です。また、契約後もカスタマーサクセスと連携し、顧客がSaaSを継続利用できるようサポートすることで、解約率の低下やアップセルにつなげることができます。

KPIを設定し、データドリブンな営業を行う
SaaS企業のフィールドセールスでは、データを活用して営業戦略を立てることが成功の鍵となります。データを活用するためのKPIの例をいくつか挙げます。
・商談成約率(商談から契約に至る割合)
・平均契約単価(ACV)(契約ごとの平均売上)
・解約率(Churn Rate)(一定期間内に解約した顧客の割合)
・LTV(1人の顧客が生涯にわたってもたらす利益)

解約率を低下させ、LTVを最大化することがSaaSビジネスの実績につながります。

長期的な顧客関係を築く
SaaS営業は『売って終わり』ではなく、顧客と長期的な関係を築いて継続利用を促すことが重要です。
・定期的なフォローアップ
・活用支援コンテンツの提供(FAQ、ウェビナー、ユーザーコミュニティなど)
・アップセル、クロスセルの提案(利用状況を分析し、適切なタイミングで追加提案)

顧客の成功を支援する姿勢を持つことで、顧客満足度を向上させ、解約率の低下や紹介による新規獲得につなげられます。

SaaS企業のフィールドセールスに転職する際に求められるスキル

SaaS企業のフィールドセールスは、顧客と直接対話し、課題を解決するコンサルティング営業の要素が強い職種です。製品を売るだけでなく、顧客の業務改善や成功に貢献し、長期的な関係を築くことが求められます。そのため、日頃から以下のようなスキルを意識しておくと転職に成功しやすくなります。

顧客の課題を深掘りする『ヒアリング力』
SaaS営業では顧客が抱える課題を的確に把握し、それに合った解決策を提示することが重要です。そのためには、顧客の現状や業務フローを深掘りするヒアリング力が不可欠です。以下がそのスキルになります。
・オープンクエスチョンを使い、顧客の本質的な課題を引き出す力
・顧客の発言の裏にある『本音』や『隠れたニーズ』を見抜く力
・業界やビジネスモデルを理解し、適切な質問ができる知識

ヒアリング力が高いと顧客の課題を的確に捉えた提案ができ、成約率の向上につながります。

SaaSのビジネスモデルやITリテラシーの理解
SaaSの提供はサブスクリプション型のビジネスであり、従来の『一度売って終わり』の営業とは異なります。契約後も継続して利用してもらうことが重要なため、SaaS特有の営業スタイルやKPIを理解していることが求められます。
・SaaSの基本概念(サブスクリプション、LTV、解約率など)の理解
・クラウドサービスやAPI連携など、ITの基礎知識
・自社サービスの特徴や競合との違いを説明できる知識

SaaS未経験でも、基本的なITリテラシーを持っていると、転職時に評価されやすくなります。

提案力とプレゼンテーションスキル
SaaSの導入は企業にとって大きな決断になるため、顧客の意思決定を後押しできる提案力が重要です。デモンストレーションを活用し、『このSaaSを導入すると、業務がどう改善されるのか』を具体的に伝える力が求められます。以下がデモンストレーションを成功させるために必要なスキルです。
・シンプルでわかりやすいプレゼン資料の作成スキル
・デモンストレーションを通じて、顧客に利用イメージを持たせるスキル
・顧客の業務フローを踏まえたカスタマイズ提案力

特に、顧客の業界や業務に応じた提案ができると、信頼を得やすくなります。

交渉力とクロージングスキル
SaaSの導入を決断してもらうためには、価格や契約条件を交渉するための能力が必要です。顧客が抱える不安を解消し、最適な契約形態を提案することで、スムーズに契約を締結できます。
・顧客の意思決定プロセスを理解し、適切なタイミングでクロージングする力
・価格交渉時に、単なる値引きではなく、価値を伝えて納得してもらう力
・契約後のフォローアップを見据えた、長期的な関係構築スキル

『売る』ことだけに注力せず、顧客にとって最適な選択肢を提示する姿勢が評価されます。

インサイドセールスやカスタマーサクセスとの連携力
SaaS企業の営業は、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスで分業するのが一般的です。フィールドセールスは、商談の機会を創出するインサイドセールスや、契約後のフォローを担当するカスタマーサクセスと連携するスキルが求められます。
・チーム内での円滑なコミュニケーション能力
・CRMツール(Salesforceなど)を活用した情報共有スキル
・カスタマーサクセスと連携し、解約率を低減するスキル

特に、CRMツールを活用して顧客情報を適切に管理できると、スムーズな連携が可能になります。

データを活用した営業力(データドリブンセールス)
SaaS営業では、感覚的な営業ではなくデータを基にした戦略的なアプローチが求められます。顧客の行動データや営業KPIを分析し、効果的な営業手法を構築するスキルがあると、成果につながりやすくなります。
・CRMやBIツールを活用し、データ分析をするスキル
・成約率や解約率などの営業指標を理解し、改善策を考えられる力
・数値を基に仮説検証し、営業活動を最適化するスキル

データを活用できると、効率的に成果を出せる営業として高く評価されます。

上記のようなスキルを磨くことでSaaS業界でのキャリアアップに成功できます。未経験でもIT知識の習得や営業のデータ分析に慣れることで、転職求人市場での競争力を高めることが可能です。

まとめ

SaaS企業のフィールドセールスは、単なる『売る営業』ではなく、顧客の課題解決を支援するコンサルティング型の営業が求められます。成功するためには、課題を深掘りするヒアリング力、デモを活用した提案力、データを基にした戦略的な営業が重要です。特に、インサイドセールスやカスタマーサクセスとの連携が不可欠で、契約後の継続利用を促進することが成果につながります。売るだけでなく、顧客の成功を支援する視点を持つことが成功の鍵です。